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インド旅: 不思議な町ヴリンダーバン

インド旅行9回目。メジャーな町はそこそこ行っているので、クリシュナ系の聖地と勧められて初めてマトゥーラーに行ってみることにした。タージマハルのあるアーグラーから電車で1時間の距離。さくっと軽ーく往復するつもりだったのだが……やはりインドは強烈だった。

まずアーグラーの駅で電車が1時間遅れ(これは通常運転)。メジャーな幹線上にあるので南からデリーに向かう電車はたくさん通るはずが、全然来ない。プラットフォームで辛すぎて食べられないカレーを買ってついてきたチャパティだけを食べつつ電車を待っていると、謎鳥に脳天に糞を落とされるアクシデント発生。病気とか怖え…と思いつつも、全てが衛生的にどうかと思われる世界なので、もはや適当に紙で拭いてごまかす。

1時間待って、ついに南インドから長距離を走ってきた列車が到着したので乗り込む。近郊で座席指定がないので、ドアが開きっぱなしの乗車口とトイレの付近にいたけど、吸殻とゴミだらけ。電車はノンスモーキングのはずでは?

しかしここまではまあ普通だった。

マトゥーラーについてから謎が始まる。マトゥーラーでは特に見たい寺院があったわけではなく、Googleマップの評価でいくつか寺院をピックアップしていた。が、駅に降りるとリキシャの呼び込みや降りた客がみんな口々に「ぶんだばー」と叫んでいる。「ぶんだばー(Wunderbar)」はドイツ語でWonderfulの意味だけど、どうにもそう聞こえる。

なんだろう?と思いつつもオートリキシャ(トゥクトゥク)の客引き運転手と交渉し、マトゥーラーの寺院のひとつに行ってもらうことにした。

しかし駐車場の出口で、駐車場の管理人と乗ったリキシャ運転手が激しい口論になって駅から出してもらえない。どうやら駐車料金か何かで揉めているようだ。管理人が少し距離を取って話は終わったように思われた。時間ないから早く行こうぜ。

ところが、駐車場の管理人が戻ってくるや否や、いきなりリキシャ運転手の首を腕で締め、リキシャから力づくで引き摺り下ろすバイオレントな事態発生。ああっ、これはあかんやつや…と思って私も車両から飛び降りた。

すると、ちょうど降りたところに後部座席に6人位乗れる乗り合いリキシャが現れて止まった(普通のリキシャは後部座席3人分くらい。インドなので何人まで乗るかはケースバイケースであるが)。
そして、例の「ぶんだばー?」と聞いてきた。ぶんだばーが何か分からないので目指していた寺に行きたいと言うと、そこを通りがかるから乗っていけと言うので、運転手のおっさんの横の前部座席に乗りこんだ。

後部座席にはインド人の若いお嬢さんが4人ほど乗っており、みんな興味津々に「ぶんだばー?」と聞いてくる。「ぶんだばーって何?」と聞くと、画像を調べて見せてくれた。それは写真では何か壮麗な古い遺跡のように見えて、しかもGoogleレビューの数と星の数が尋常じゃなく凄い。

え、なにそれ!

面白そうなので、私も便乗して完全にノリだけで急遽ぶんだばーに行ってみることにした。運転手にはぶんだばーは150ルピーと言われた。お嬢さんに「ねえ、ぶんだばーまでいくらなの?」と尋ねると、1人50ルピーらしい。おい高いじゃねぇか!と抗議し、お嬢さんたちも一緒に抗議してくれたがダメで、そもそもどこにあるのかも分からないしすでに乗り込んで爆走しているので、しゃーなしでぼったくられることにした。

ぶんだばーは、てっきりマトゥーラー内の観光地と思っていたのだが、随分遠いなぁ?と途中の標識を見ると10kmとか書いてあるのが見えた。は?そんな遠いの??別の町やん!思ってたのと違う!

リキシャは道なき土埃の道を行き(帰りルートは普通の舗装道路だったのでなぜそこを通ったのかは謎)、畦道がボコボコすぎてモーターでは進めず、途中で全員降ろされて歩かされる始末。

そして謎に田舎のスラムエリアを走っていく。久々に牛糞を丸めて乾かした燃料を壁に貼り付けた貧家を見たり、竹のようなものをアーチ状にしたところに薄布をかけただけの、家でもテントですらもない住居がゴミの中に立ち並ぶガチスラム。見ていてとても複雑な気分になる。

そこを抜けて町に入ると、宗教施設や大きそうなアーシュラムがたくさんあるが、町中にも同様の簡易テントやゴミ貯めが結構あって、貧富の差が激しいようだ。

同乗のお嬢さんたちはぶんだばー詣にいく最中なのかと勝手に思っていたのだが、どうやら違うらしくリキシャを止めるとホテル探しを始めた。数回リキシャを降りてはホテルをチェックすると、そのうち決めた宿でお嬢さんたちは降りていき、私とリキシャのおっさんが残された。

途中で気付いたのだが、ぶんだばー(実際には「ヴリンダーバン」だった)は観光名所の名前ではなく、エリア名であった。

おっさんはぼったくりを正当化するかのように、いくつか宗教施設の前をさも観光させてる風に見せて通り抜けると、白い大理石の豪華な寺院の前で停車して私を下ろした。どうやらここが終点らしい。おっさんは3倍ぼったくった上にさらに観光したし200ルピーをよこせとか言ってくるので、ふざけんなと最初に合意させられた150ルピーを渡してさっさと降りた。

寺院に近づくとなるほど、この大理石の寺院は小さいけれども非常に凝っていて素敵である。だがなんと着いた時間にちょうど門が閉まったところで、中に入れない!
残念極まるけれど、門の隙間からピカピカ寺院の中をじろじろと覗いておいた。

さて、これは行きから心配していたけれど、問題はマトゥーラー駅までの帰り道である。行きは良い良い帰りは怖い(駅からは人が多いから高くないけど、帰りは超ぼったくられる)になるのは想定内。寺前でチャイを一杯飲んでから、さあどうしようかな?とリキシャと交渉すると、案の定ありえない額をふっかけてくるので乗り合いを探すことにした。

サイクル人力車の方が自動三輪より安いので、マトゥーラー行きのバス停がどこかにきっとあるに違いない、そこに連れて行ってもらった方が良さそうだ、と思った。バスないの?と聞き込みをしまくったところ、複数の人力車が「あるある、乗れよ!」という。だが場所が完全に不明なので、距離が分からず言い値を払って連れて行ってもらうしかない。何人にもいくらだ?と尋ねると1番安い人力車が20ルピーと言ったので、OK乗った!と乗りこんでみた。

だが、おっさんが漕ぎ出して着いたのはほんの5分もないくらいの近場で、20ルピー(40円だが)でもぼったくられている。その上もっとよこせと言うので、また「ふざけるな2分の距離だぞ20ルピーでも多いわ!」と約束の20ルピーを渡して降りた。(※首都デリーでも、人力車は交渉したら1kmくらい10ルピーで乗れたりする)

そこは確かに乗り合いオートリキシャ乗り場で、100ルピーでマトゥーラー駅まで行くらしく、英語が堪能なエリート巡礼客夫婦と乗り合わせて事なきを得た。

ちなみに行く方がいるかもなので、マトゥーラー行きの乗り合いリキシャ乗り場を書くと、ヴリンダーバンの白い大理石の寺を背にして、右にしばらく行って、左に曲がったところである。寺院から徒歩5分-10分のはず。

この後も色々あったけど割愛し、マトゥーラーの駅まで戻ってきた。そしてまた電車1時間待ち…。

そしてようやく来た電車に乗ると、電車がホームを出発して走り出すなり電車の開いてるドアから誰か落ちたと思われで、女性のすごい悲鳴が響いた。光の速さで集まってきた野次馬の数が凄すぎて何が起きてるのか見えなかったけど。電車は悲鳴が上がっても緊急停止するどころか平然と加速していく。

盛りだくさんすぎたけど、これが全てわずか4時間の間に起きたことである。インドの時間の流れはやはりおかしいし、密度が異常だ。

この話にはオチがあり、実は連れて行かれた白い大理石の建物はクリシュナ系新コウ宗キョウの寺院だった。豪奢な寺院とスラムの同居する町。不思議な場所である。今度は寺院が開いてる時にまた再チャレンジしたいと思っている。

しかしオンラインのレビューの意味について考えさせた回だった。熱心な人たちがいる業界では、レビューの評価は高くつきがちなものなのだ。

なおクリシュナ系のうち、ハレクリシュナはヨーロッパでも大変人気で、町中でハレハレ〜♪と歌いながら練り歩いている西洋人の集団がいたりカレー屋を経営していたりするのだが、ニューデリー駅らへんでもクリシュナ系の勧誘活動を複数見かけたので、インド国内でも人気のようだった。






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