梨がなる頃、西瓜を食べていた君の話
夕日が沈むまでに帰らなければならなかった。
今日の日の入りは18時52分。
ということは、あと21分。
シャワーを浴びてきたのに、身体中から水という水が吹き出していて、シャワーを浴びた時間の存在意義が消滅したところだ。
ただ、そんなことも気にならないくらい、風が心地良かった。自転車を漕ぐスピードを速めれば速めるほど、身体に空気が取り込まれる感じがする。
(「感じがする」と言いがちだが、しょうがないのだ。感覚によって情報を得ている僕なんだから。)
今日は日曜日なので、遅く起きて、ひたすら全力でだらだらして、昼ごはんのカップラーメンをつまみにレモンサワー飲んで、映画観て、
夕方から湖に繰り出してサイクリングして、
その帰りにファミレスで、夜ごはんにパンケーキとサラダとオニオングラタンスープのセットを食べた。
この最高!の休日は、紛れもなく僕の休日。
僕のもの。
(オニオングラタンスープで欠かせないのは、チーズだ。口に入れた時に、いかにチーズがくちゃくちゃするか。)
明日は仕事だけれど、シャワーに入り直さなくてもいいやと思った。
湖で受けた風をそのまま洗い流しちゃうなんて、もったいない気がしたからだ。
結局、日の入りまでには帰れなかった。
カラスたちが寝床についた頃、帰路についた。
梨が売り出される、あの季節の話だ。
(fiction)