未来2024年11月号詠草 『消えたい想いを鱗粉に』
未来2024年11月号詠草 『消えたい想いを鱗粉に』 風野瑞人
いくつもの青いリンゴを食べたのに今日もまだ居るどこまでも居る
愛情も声も留めたままでいてずっと孤独とわらう不織布
生きづらさの脳のルフラン 水を遣りすぎてしまった多肉植物
らしさなど何の役に立つ それよりも少し濃いめのエスプレッソを
もう肌に触れた記憶もおぼろげで吐息も匂いもどこに失くした
反物質といっそいっしょに消滅を コールドムーンの皆既月食
かたちさえ持てない粉を振り撒いて蝶は明日も飛ぶのだろうか
野良はみなそっと亡くなる わたしにも監視カメラの死角をください