未来2023年10月号詠草 『不幸福論』
未来2023年10月号詠草 『不幸福論』 風野瑞人
流血を受け継いでいく営みの記録をめくる音が聞こえる
不条理はどこまで木霊するのだろう 消えない過去のひとつひとつの
一日にひとつ諦めまたひとつ諦め暗くなってゆく窓
底知れない辛さを食んだその刹那差し出されていたまっ赤なワイン
ほんとうは星などないと手を合わせ現実的な祈りをささげ
かなしみが足を投げだし幾つもの理不尽たちに辺りを囲まれ
トラウマを指折り数えるそのたびに剥がされてゆくこころのピース
華氏451度 それぞれの不幸を書いてきた幸福論
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