未来2024年6月号詠草 『雨夜の先で』
未来2024年6月号詠草 『雨夜の先で』 風野瑞人
感情があふれていても降りだした雨の力にあらがえなくて
列をなすテールランプが滲むたび一瞬たじろぐフロントガラス
心臓の整わないまま息をする 錆びた匂いを運ぶエアコン
沈黙を埋めようとするドライバー よく降りますね まだ降りますね
しっとりとしたまなざしのメンタルの壊れかかったひとの隣で
できることできないことのあわいにはどんな時間が溜まっているの
かつて見た側溝を行く笹船でいい ゆくえなど知りたくもない
日めくりを一枚やぶく 湿る音 とっくに答えが出されているのに
ほおずきの赤く染まった実を潰す残った昨夜のしずくとともに
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