2024年未来9月号詠草 『宙に、想う』
2024年未来9月号詠草 『宙に、想う』 風野瑞人
通りからはみ出したままたむろする鴉のように宙を見ている
プリズムで分けて受け取る太陽の恵みを忘れない日は来るのか
黒点に乱される波 ただ少し陽のうつろいが揺らぐだけでも
複葉機の頃からはるか僕たちは見下ろしてばかりいないだろうか
夕暮れのパントマイムの影を描くひかりのどこかあたたかいこと
すっきりと月光写真が撮れるまで 留まる勇気が降りてくるまで
公転の暗黒面を書き留めて探査機よ飛べ ひとの代わりに
天鵞絨の静寂のつつむ星空にしばらく嘆くことを忘れる
透明なグランドピアノの浮かぶ日のやさしい宙を願ってみたい