未来2024年5月号詠草『季節よりも奇妙な』
未来2024年5月号詠草『季節よりも奇妙な』 風野瑞人
異邦人 いや秒速で流れ去る周回遅れのおぼろな星くず
ピアノの音聴こえる家に祝福を たとえばそこに梅雨が来ずとも
雨ばかり降るようになった理由から平熱を超える気温までの差
先取りの夏の壁の一筋の枯れ果てた蔦 明日はわたし
弱い声ばかりで宵が満ちる日のひとっこひとりいない影を踏む
真夜中の半そでを抜け寄ってくるゴーストたちのうすい肌色
忘れずに日記を燃やす 移り気な暦の跡をどこまでも追い
季節より奇妙な空気ゆっくりと吸いこみながらまぶたを閉じる