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世界の栄養課題と国際社会による栄養改善に向けた動き

 今回の記事では、世界の栄養課題と国際社会による栄養改善に向けた動きについてご紹介します。
 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」では、2030年までにあらゆる形態の栄養不良に対し終止符を打ち、子どもや社会的弱者を含むすべての人が、1年を通じて安全かつ栄養のある食料を十分に得られるようにする、ということをターゲットにしています。また、直接的な栄養改善だけでなく、これを支えるための食料生産や資源管理、気候変動対応、貿易や市場の適正化のように、広範な食料システムへのアクションも求めています。

(出所:我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030アジェンダ|外務省より作成。)

 それでは、あらゆる形態の栄養不良とは、具体的にはどのような状態でしょうか。

 栄養不良は大きく、
①低栄養(栄養素の摂取や身体への吸収、活用が不適切・不十分な状態)と、
②過栄養(主にエネルギーの過剰摂取による、過体重や肥満の状態)
の2つに分けられます。
  もう少し詳しく指標を用いて見ると、下図のようになります。

(出所:WHO. 2024, Malnutrition. より作成。)

 低栄養(undernutrition)は、消耗症(身長相当の体重基準に満たない状態)、発育阻害(年齢相応の身長基準に満たない状態)、低体重(年齢相当の体重基準値に満たない状態)および微量栄養素欠乏症(ビタミンやミネラルの不足)に分けられます。低栄養(undernutrition)と似た言葉に、FAOが用いる食料不足(undernourishment)がありますが、これは国内の飢餓(食料供給不足)を示すもので、個人の栄養状態を示すものではありません。
 また、過栄養(overnutrition)は過体重・肥満(健康を損なう可能性のある異常な、または過剰な脂肪の蓄積)と微量栄養素(例えば、塩分)の過剰摂取に分けられます。

 現在、5歳未満児の死因の約半数が低栄養にあります(WHO, 2024)。一方で、多くの高所得国、また一部の低中所得国では、過体重・肥満の増加に加え、食事関連の非感染性疾患(Diet-related Noncommunicable Diseases: DR-NCDs)の増加が問題となっています。

 さらに、個人内・世帯内・集団内や、一生涯の中で低栄養と過栄養が併存する状態を指す「栄養不良の二重負荷(Double burden of malnutrition)」についても世界的な課題となっています。

(出所:WHO/NMH/NHD/17.2. 2017, Double-duty actions for nutrition: policy brief より作成。)

 このような栄養課題の解決に向けた気運を高めるために、「成長のための栄養(Nutrition for Growth:N4G)」イニシアチブが発足しました 。このイニシアチブは、世界のグローバル・リーダー達が栄養課題について地球規模で考え、取り組むことを目的とした栄養改善の国際的なムーブメントです。

 次回は、このN4Gイニシアチブ発足の背景について詳しくご説明します。 

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