私のリアルな底の時の記録

また始まった…

ドキドキドキドキ…

特に緊張もしていないし、横になって静かにしているのに、動悸が止まらない。

ドクッ!

急にすっごく大きな脈が身体の中で響いた。
こいつが出てくると気持ち悪くて、
いつまた次のが来るかと思うと怖い。

深呼吸をする。
落ち着け、大丈夫、自分。言い聞かせる。

だけども止まらない。
次のドクッも来た。
息を吸っても吸っても酸素が足りない。
息苦しい。
鉛のように重い身体を動かして、
何とか寝返りを打ち、少しマシになった。

もういつから外に出れていないんだろう、
いつからまともな生活できていないんだろう、
親に大学行ってると嘘つきながら、本当は何ヶ月行けていないんだろう、
お金も次の奨学金振込日まで、あと10日もあるけど、
リアルに全残高数千円しかない。
夕方になってやっと活動開始ができた時は、夜中に現実逃避と耐えきれぬ寂しさから仲間と酒を飲む。それでまた翌日さらにしんどくなる。
最近はこれすら出来てないが、負のループを自ら創り上げている。
このままだといけないのは分かってるけど、
頭がボーッとして、でも焦りも駆け巡って、
だけどやっぱり身体は鉛のように重くて、
起き上がれない。

トイレも行けない。
ご飯も要らない。
ベッドの周りに水の入った2lのペットボトルを何とか持ってきて、時々起き上がれたらそれをちびちび飲んでいる。
でも喉の渇きよりも起き上がることのほうがしんどいから減らない。段々水もなんか変な味がしてきた。
歯も磨けない。
風呂も入れない。



……私、人間じゃない?
怠けと言われても仕方ないくらい情けないけど、本当に、動けない。

ネットで、
「身体 動かない」で調べたら、
もしかして鬱、と出てくるけど、そんなの恥ずかしくて周りに言えない。
心弱めの奴、ってただでさえ思われているから、鬱なんて言ったら本当にメンヘラ扱いされて馬鹿にされるのは目に見えている。考えるだけでしんどい。
授業もバイトもサークルも、色んな理由をつけて休んでいるけど、
もはや休む連絡の電話すら怖くて最近は逃げてしまう。屑だ。


心臓がドキドキするのをまず治そう、病院に行かなきゃ、
そう思ってもまたその電話が出来ない。
何でウェブ予約が出来ない病院が多いのか。
私みたいなやつがドタキャンするからか…
そう思いながら絶望して目を閉じると、眠りに落ちそうになった。
昼間の方が寝付きが良い。
このタイミングで寝たりするから余計に夜寝にくくて朝起き辛いのだろうが、もう無茶苦茶だった。


目を閉じかけたその時、
このままで良い訳ない、そんな心の声が聞こえて、目を開けることができた。
そしてその勢いのままに、病院に電話をかけ、予約した。

何だ、私、出来るじゃん!

でもここからが大変だ。
外に出るには身なりを清潔にして、人間にならないといけない。
いつもならここを想像して初めから諦めているところだが、
今やっと身体を動かせたので、このエンジンがかかった状況を活かすしかない。
立ち上がってシャワーを浴びに行った。

久々に身体を洗う作業が大変だったが、いざ洗い終わると、本当に気持ちがいい!頭の中のモヤのようなものもスッキリした気がする。
とても爽快な気分になったので、そのまま外に出られて、病院へ向かった。

受付の事務員との会話をしながら、生身の人間と直接話すのいつぶりだろう?と考えるけど全然思い出せない。少なくとも一週間以上は経っている。

程なくして診察の順番が来て、心臓のドキッの説明をすると、
医者は私の心音を聴いてから、
念の為一日ホルター心電図をつけましょう、と言ってきた。
心電図を24時間記録する、ということのようだ。

心音を聴くと、たしかに不整脈はあるようだが、特に心臓自体には大きな問題はないと思われる、念の為に装置をつけて測定する。
そして、それよりストレスなどで自律神経が乱れがちと考えられるので、心配なら心療内科を受診し、そこの判断次第だが軽めの精神安定剤を飲んで見るのも手ですよ、とのことだった。
まずはゆっくり休みながら、生活習慣を整えて、しっかりと食事も摂って!と。

大丈夫か?私。

既にゆっくり休んでいるのに、
ただただ横になることで精いっぱい、
何かを食べたりトイレに立ったりお風呂入ったりもしんどい日が殆ど、
今日だって決死の思いでやっと病院に来れた私には、普通に生活習慣整えるだけでも難しい。

医者の白衣が眩しかった。
普通に朝起きて仕事をし、社会生活をしている、ましてや医師として社会貢献性の高い仕事も日々こなしている。 
私はどこで間違えてこうなったんだ…
まず朝起きるというファーストステップすら躓いている。

でもせっかく来たんだ、
ホルター心電図とやらはつけよう!
そう決心して、処置してもらい、お金を支払ってその日は帰宅した。

帰ると、一気に疲れが押し寄せて動けなくなった。全停止だ。
病院に行って医者や看護師、受付の事務員と話して帰ってきただけなのに。
社会生活を普通に送れる人はこの何十倍もストレスを受けているはずなのに、こんなことで疲れ切っている私に大学を卒業して正社員として働くとなどできるんだろうか?
一丁前にプライドだけは高いから、希望の職種とかだけはつらつらと述べそうな自分の理想と現実の埋めようがないほど開いたギャップに絶望感が押し寄せてきた。

そんなネガティブな思考だけがぐるぐる脳裏を駆け巡りながらも、
何とか余り物の食料を口にし、夜にはきちんと祈る思いで眠りにつくため目を閉じた。眠れはしないけど。
でも、明日こそ、ちゃんと学校に行こう。

そして、翌朝。

昨日あれだけ行こうとしたのに、やはり今日も行けない。行くことに絶望感しかない。
年齢だけを重ねていく自分の肉体だけが愚かに横たわっているのを感じて、再び目を閉じた。やはり眠れやしないけど。

死にたい。

このままいっそのこと命を吸い取られて、
生きたくても生きられない誰かの為に身体を分解するなり使って貰っていい。

そう思う自分もまた馬鹿馬鹿しくなった。













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