不動産ファンドとは何者なのか?(その2)
規模の大きい不動産売買には買手又は売手に不動産ファンドが登場することがあります。
不動産ファンドは不動産投資のプレーヤーです。ただし、「不動産ファンド」には明確な定義はありません。そもそもファンドという用語自体が曖昧な表現です。
なので、マーケットの関係者が何となく「不動産ファンド」と呼んでいます。
今回は不動産ファンドとは何者なのか?について解説しようと思います。
ただ、不動産ファンドの定義が曖昧なまま説明するのもどうかと思いますから、本稿では不動産ファンドの投資家を「投資家」、投資家の資金を「ファンド」、不動産ファンドの運用会社を「運用会社」、これらを合わせて「不動産ファンド」と定義します。
2. 不動産ファンドのメリットとデメリット
前回は「不動産ファンドとは何者なのか?」を中心に説明しました。今回は不動産ファンドのメリットとデメリットについて解説します。
不動産ファンドは多数の投資家から資金を集めて運用します。つまり、1人の投資家が購入できる不動産よりも多額の不動産を購入できます。
また、投資利回りを上げるためにレバレッジ(銀行からのノンリコースローン)を利用するため、投資金額は投資家の出資額よりも当然大きくなります。
例えば、投資家10人から一人1億円ずつ資金を集めてファンドを組成します。
LTV=70%(70%を銀行借入)で不動産に投資した場合、不動産投資額=1億円×10人÷30%(出資比率)=33.3億円です。
この点から、投資家単独で不動産を購入するよりも、不動産ファンドの方が大規模な不動産に投資することが可能です。これがメリットです。
一方で、運用会社(AM)の収入は不動産の投資額に連動します。
不動産が購入できないと運用会社に収入が入ってこないため、無理しても不動産を購入しようとするインセンティブが働きます。
不動産市況は、時期によって高かったり安かったりします。急に不動産相場が上がって不動産が割高になった時、投資家は不動産を買いたくありません。
でも、運用会社は時価が適正であれば不動産を購入するでしょう。
また、運用会社がファンド調達額の全額を投資できない場合(フルインベストメントではない場合)、「ファンド組成金額が適正であったのか?」と投資家から非難される可能性があります。つまり、運用会社は投資家から調達した資金を使い切らないといけないのです。
本来、運用会社(AM)は投資家の利益のために行動します。
しかし、運用会社(AM)の利益は投資家の利益とは必ずしも一致しません。
不動産が割高(投資家に損失が発生する可能性がある時期)であっても、運用会社は不動産に投資しないといけません。
これが不動産ファンドのデメリットと言えるでしょう。
不動産ファンドと一般投資家を比較したのが以下です。
【不動産ファンドと一般投資家の比較】
もし、「不動産ファンドは良いか? 悪いか?」と聞かれたら、私は「どちらもある」としか言えません。
ただし、不動産ファンドの性質は理解しておいた方が良いと思います。
<おわり>
【前回はこちら】
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なお、不動産ファイナンスについて詳しく知りたい人は、下記を参考にして下さい。
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