【あまり知られていない書籍を紹介する企画】ミステリーを書くときに役立ちそうな『毒殺の化学 世界を震撼させた11の毒』
さすがにこれを読んだことある人はいないでしょう。
今回紹介するのは、ニール・ブラッドベリー著、五十嵐加奈子訳の『毒殺の化学 世界を震撼させた11の毒』です。
著者はロザリンド・フランクリン医学科学大学(アメリカ・イリノイ州)の教授、生化学と医療生物学の専門家です。
これは長野県の善光寺の近くの本屋でたまたま見かけて買いました。
「知られていないけど面白い」……という書籍紹介コーナーがあって何となくです。
本書は毒の原料、製造過程、接種したときの症状、致死量などの解説とともに、実際に利用された事件を紹介しています。
紹介されている毒は、インスリン、アトロピン、ストリキニーネ、トリカブト、リシン、ジゴキシン、シアン化合物、カリウム、ポロニウム、ヒ素、塩素の11種類です。
毒の種類が特定できるようになったのはつい最近のことで、毒殺はかなり最近まで原因不明の死として処理されていたようです。
なので、毒殺魔は大量殺人をしています。
毒を殺人の道具に使う人には幾つかの特徴があるように思います。
・かなりの自信家
・どうせバレないから……と、都合が悪い人物を全員毒殺していく
本書において毒殺したことを積極的に隠したのは、ポロニウムを利用してエドウィン・カーターを殺害したウラジミール・プーチン(当時はFSB長官)くらいです。
ポロニウム(本書ではポロニウム210として紹介)は放射性物質であり、唯一の供給源が原子炉です。どこの核施設で製造されたものかが分かるため、一般人がこの毒を入手することはできません。
エドウィン・カーターの殺害に利用されたポロニウムはロシアのマヤーク核施設で製造され、モスクワからロンドンに持ち込まれたものであることが分かっています。そして、誰が実行犯かも分かっています。
それにも関わらず……おそロシアですね。
それは置いておいて、本書は毒物の生成過程について詳しく解説されているとともに、接種したときの症状や死ぬまでの過程が詳しく書かれています。
例えば、毒物カレー事件は日本だけでなく、イギリスでインド人が起こしています。参考までに、トリカブト入りのカレーを食べてから死亡するまでの経緯を要約して書いてみます。
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被害者はトリカブト入りのカレーを食べてから、気分が悪くなり、激しい胃痙攣を訴える。身体が半ば麻痺し目が見えない状態で病院に搬送される。
医師の記録によれば、口のまわりをピンや針で刺したような感覚、視力低下、筋力低下、発汗、腹部通、大量の嘔吐が報告されている。
医師から制吐剤を与えられても、被害者を吐き続けた。
病院に到着して1時間後、被害者は激しい興奮状態に陥り、心臓が早鐘を打ち始める。心臓モニターは大きな変化を示し、心臓の収縮は不規則で非効率的だった。
その後、血圧が急激に低下し、被害者は激しく震えだした。被害者は病院に到着して2時間後に死亡した。
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物語には事実に基づいた違和感のない描写(リアリティ)が必要、と個人的に思っています。
そういう意味で、ミステリーを書くときに使えそうです。
毒殺のミステリーを書くかどうかはともかく、ご興味ある人は読んでみてください。
以上、あまり知られていない書籍の紹介でした。