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「ハームリダクションとは何か」薬物問題に対する一つの社会的選択。

薬物依存に対しては、「処罰より支援を」。
この考え方自体は目新しくは感じないが、ハームリダクションは、断薬を目指さない。清潔な注射器等の器具を提供し、安全に薬物使用できる施設を用意し、健康的な窃取方法に関する情報を提供する。「ドラッグの使用自体は止まってもいいし止まらなくてもよい」と捉え、使用による被害(健康被害、感染症、失職・孤立・差別等)を減らすことを目的とする。
この考え方が衝撃的でした。例にもれず私も「そんなことしたら余計に薬物使用が増えてしまうのでは?」と考えてしまいました。しかし、カナダでの検証によれば、薬物再使用や新たな使用の顕著な増加はみられず、逮捕率や犯罪率の増加もなかったということです。他方、HIV感染やオーバードーズによる健康被害は顕著な減少があったそうです。
実際にカナダやオーストラリアでは、ハームリダクションに基づいた施設を設置して実践を行っているとのこと。
健康被害の防止・減少もさることながら、薬物を使用してしまった人に対し、「自分は薬物を使ってしまっただめな人間」と思わせない、孤立させないというケアが重要なのだと感じました。もちろん「一回手を出したら終わり、だから絶対手を出すな」という強いメッセージで薬物を使用させないことも大事ですが、薬物使用者を陰に追いやるのみではなく、居場所を提供して「誰も」が暮らしやすい社会を目指す、という社会の在り方もあるのですね。

現状の日本の司法制度の中でどこまで何が出来るのかは未知数ですが、
「薬物依存症の支援とは、決して薬物という”モノ”を規制し、排除することではなく、痛みを抱える”ヒト”の支援である。」
という言葉を頭の隅に置いておきたいと思います。


なお、「厳罰主義をやめると薬物使用が増えるのでは?」という疑問に対しては、「日本では8割以上の人が、法律で禁止する以前に大麻や覚せい剤を使うべきでないと捉えているから大きな問題にはならないだろう。」(15p)という考え方が示されていますが、これは議論の余地がありそうです。
とはいえ、Global Commission on Drug Policyという国際的NGOが作成した図によれば、厳罰ではドラッグ使用はアンダーグラウンドに潜り込み、無規制でも同様に被害が大きくなるが、「規制はしつつ非処罰(+ハームリダクション)」という状態だと社会的・健康的被害が最も少なくなるとのこと。図の根拠はよくわからなかったけど、「禁止しつつ非処罰」という可能性も含め多様なアプローチを考えてもいい、考えるべきではないかという気づきになりました。

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