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メヒコ暮らしの話をします

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エネルギーに溢れていて、どこか危ういけれど、惹きつけられてしまう。メキシコはそんな国です。
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#建築

溶岩の上に立つ家

溶岩の上に立つ家

泣きたくなるほど素敵な家に出会ったことがあるだろうか。部屋の片隅に差すわずかな光までが美しく、思わず胸がつまってしまうような。

かつての溶岩地帯に立つその家は、わたしにとってまさにそんな場所だった。



メキシコシティの中心部からおよそ15km南へ下り、静かな住宅街に立つ一軒の邸宅前で車を降りる。待ち合わせたガイドとともに、荒々しい表情の石塀をたどり木製の門をくぐった。

カサ・ペドレガル。

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ジャカランダの木を守る家

ジャカランダの木を守る家

メキシコに来て好きになったものの一つに、ルイス・バラガンがある。
すらりと背が高く、生涯独身を貫いたメキシコの天才建築家、ルイス・バラガン。
彼の残した作品のなかに足を踏み入れるたび、日常から離れ、心の波が穏やかになっていく。

今回はそんなルイス・バラガン最後の傑作と言われる作品、ヒラルディ邸を写真と共に紹介したい。



首都メキシコシティで暮らす人々の憩いの場、「チャプルテペックの森」のす

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「世界一荘厳なピンク」に恋をして

「世界一荘厳なピンク」に恋をして

「メキシカンピンク」と呼ばれる色がある。スペイン語で、Rosa mexicano(ロサ・メヒカノ)。

当たる光の加減によって、時に可憐な少女のように、また時に妖艶な女性のように見えるこのピンクに、わたしは少しばかり思い入れがある。



夫に転勤辞令が出たのは、2019年の春だった。

臨月だったわたしは日本に残り、娘を生んだ。乳児が打つ予防接種は、約5ヶ月で一区切りを迎える。そのタイミングで

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