展覧会 #02 池大雅 -陽光の山水@出光美術館
3月中旬、出光美術館を訪れた。
池大雅(1723年~1776年)の東京では13年ぶりとなる回顧展。
可愛い人物
描かれた人物がとても可愛い。「葛の葉図」(江戸時代 18世紀)は女性に化けたの動物の姿が描かれている。着物の裾からしっぽが覗いていて、ちょっとユーモラスな顔立ち。美人じゃないところがなんとも愛嬌があって可愛い。
「瓢鯰図」(江戸時代 18世紀)は大きな瓢箪で鯰を押さえつけている人物が描かれている。瓢箪を抱える剃髪の男性は力ずくで押さえる感じではなく、優しい表情をしている。鯰のつるりとした様子が墨のにじみで表現されているのも面白い。
草木の表現
繊細で柔らかな曲線で描かれた水辺の葦、細やかな筆致で描かれた竹や松の描画に目を引かれた。墨の中間色の濃淡を基調に、濃い墨でアクセントをつけて奥行きのある木々の茂り具合を表現している。
風にそよぐ葦の様子が爽やかで、心地よい風が吹いていることを想像した。
山水の世界観
嵐峡泛渣図屏風(らんきょうはんさずびょうぶ)
川が緩やかに流れている。柔らかなグラデーション、伸びやかな筆致で描かれた川岸の木々は枝の先がほんのりとピンク色に染まっている。墨の濃淡の中でふわりと優しい色味を添えていい感じだな、と見とれていると、舟を漕ぐ人物が描かれていることに気づいた。
そのほかの絵にも共通していることだが、全景に展開する自然の描写に目を惹きつけられて、風景の雰囲気に気持ちが馴染んできたところで、徐々に人間の姿が目に入るようになる。
それはとても不思議な感覚で、西洋絵画ばかり見ている目には新鮮な体験だった。
人間の営みは自然の大きな営みのなかに内包されているということ、人間は自然の一部で自然によって生かされている。現代に生きていると自然とのつながりを感じることが極端に少なくなっていることに気づかされた。
展覧会について
「山水画」「人文画」と聞くとちょっと堅苦しいイメージだが、池大雅の画風はおおらかで、自然や人間に対する深い愛情、温かい眼差しを感じた。
美術館について
JR有楽町駅の国際フォーラム口から徒歩3分ほどの場所にある帝劇ビルの9F。自分が訪れたのは休日だったが、外の喧騒とは打って変わって館内はとても落ち着いた雰囲気。
展示室を出たところにあるロビーには、無料で利用できる緑茶・ほうじ茶・ウーロン茶の給茶器がある。
窓に面したソファーに腰を下ろすと、目の前に皇居の森と霞が関のビル群が見渡せる。
都心のビルの低層階でありながらこの見晴らしの良さはこの美術館の特徴だと思う。
展覧会Data
「生誕300年記念 池大雅 ― 陽光の山水」
2024年2月10日(土)~3月24日(日)
出光美術館
東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
https://idemitsu-museum.or.jp/
[2024-002]
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