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インスパイアする

ポール・ホーケンは、言う。

ぼくの辞書では、「情報を与える」は「ある特定の品質と価値を強い思いを持って伝え、インスパイアする」という意味だ。

つまり「情報」とは、単なるデータでも、テレコミュニケーションでも、コンピュータ・ネットワークでもない。

たしかにある意味ではそうかもしれないが、同時に情報を価値あるものにしているのはそこへ加えられた知識なのである。具体的には、デザイン、職人芸やアートな技、実用性、耐久性・・・そう、製品がより役に立ち、長持ちし、修理しやすく、より軽量で、より丈夫に、より省エネにつながること。だからこそ情報が何より重要になったのである。

『ビジネスを育てる』新版、ディスカヴァー刊、p.73-74、阪本訳

ここ、原文にもう一度あたってみたら、ポールは「imbue or inspire」と言っていて、両方「インスパイア」という意味だが、似た単語を重ねて強調しているんだよね。

「北欧、暮らしの道具店」が売っているのは、まさに「インスパイア」だと思う。佐藤店長はじめ、商品プランナーたちからの。

ただ「物体」と「お金」を交換しているわけじゃない。機能を届けているのではない。

今日午後、「北欧、暮らしの道具店」を経営されている青木耕平さんとトークライブやる。キィワードを「インスパイア」として、お話しようと思ってる。楽しみ!


さて、ここでクイズです。

どっちが新品でしょう。
あるいは、
どっちが5年間愛用している方でしょう。

5年間、ずっと手入れしてきた。革なので、磨いて、磨いて。

だから新品と変わらない、いや、履き込むことで革がいい感じに足にフィットし、履き心地は最高。

なんだけど・・・

ひもが汚れてきた。こればかりはどうしようもない。経験から、スニーカーのひもは洗ってもきれいにならない。

馴染の百貨店靴売り場担当者に相談した。

「スニーカーのひもは、うちではこれくらいしかないんですよ。変な話ですが、ハンズさんのほうが種類たくさん扱っておられますから、そっちがおすすめです」

そうか、ハンズのほうが多いのか。

ハンズに行かず、かねてから気になっていたシューケアの店へ行った。早い話、「靴のお手入れ店」だ。

なんとなく敷居が高く、ウロウロしているうち、スタッフの男性と目が合った。

これこれこういう、と説明すると

「わかりました。見せていただけますか」

案内された場所で椅子に座り、履いてるスニーカー脱いだ。

すかさず、ひもを三種類持ってきてくれた。
相談し、これでお願いします。

当たり前のように、彼は新しいひもをスニーカーへ。するするするする・・・見事な指さばき。やはりプロが入れると、ひももぴったりくる。フィット感すごい。

ものの数分で、完成。

「一度履いてみてください」

履いた。

彼は、見る。その見る視線が、美術品を見るようなんだ。

美しいか?

自分の仕事が美しいかどうか、見てる。

お会計。

「770円です」
「えっ!? 入れてくれたことへは?」

彼は笑って、要らない、と。

こっちの気がすまない。でも仮に千円札渡して、「釣りは要らねえ」言ってみたところで、ちゃんとした店だ、会計システムがっちり出来上がっている、むしろめんどくさいだけだろう。

最初の百貨店の担当さんは「ひも」という物体について話してくれた。

シューケアの彼は「愛用しているスニーカーの美」についてケアしてくれた。とてもインスパイアされた。

丁寧にお礼言って、店を後にした。

靴は大好きだから、また、彼に相談しに行こう。新しく何かインスパイアもらえるに決まってるから。今度はちゃんとした売上になる何か、買いましょう。

今朝、6時半。
会社へ向かって歩いてた。
信号待ちしてたら、話しかけてくる。外国人観光客、高校生くらいの女の子三人グループ。
スマホ画面を見せる。

ああ、京阪で京都へ行きたい、北浜駅がどこか、聞いてるんだな

北浜駅はすぐそこ。かねてから下調べは完璧である。

「This way, follow me」

直通のエレベーター教えてあげた。これなら後、間違わない。知らん外人のおっさんと狭いエレベーター同乗は抵抗あるだろうから、下ボタン押して、そこで別れた。インド系の彼女たち、「アリガトゴザイマス」口々に。

彼らの日本観光が、この道案内によって何かインスパイアされたらいいな。

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