美味しくする
お金は地元商店街に落とす
某そば屋。出てきた品を見て
「これは・・・」
いやいや人は見た目で判断してはいけない。
食べてみた。
やはり人は見た目が100%だとわかった。
調べてみると、ここの創業は41年前。
食べログ、「老舗」の文字があちこちに。
評価も高い。
でもね。
美味しくないんですよ。
「美味しい」水面よりかなーーーーり下。
インスタもXもやってる。
とても残念な思いで、目的地へ向かった。
池田、五月山丘陵を歩く。
このエリアは大阪教育大学附属高校池田時代、毎日通った。
阪急電鉄、東急電鉄、阪急百貨店、東急東横店、東京會舘、パレスホテル、後楽園球場、都市としての「園田」「武庫之荘」「日比谷」「有楽町」「神戸」「箕面」・・・を創造した人、小林一三さん。
池田文庫、逸翁美術館、小林一三記念館、邸宅レストラン「雅俗山荘」・・・すべて同じエリアにある。
「雅俗山荘」と称した邸宅が記念館になってる。
昭和12年に建造されたとは思えない。美しい。
展示物があるが、展示を見るより、空間に身体を浸し、遠く小林さんが活躍された時の「想い」に自分を飛ばす。
あれやった、これもやった・・・・というより、大事なのは美学、美意識だった。
いま、日本に一番消えてしまったのが、商人の美学。
クズみたいなものを「見せ方」「売り方」で売る。
小林さんが、海外の百貨店視察への苦言を呈しておられる。
内容は;
海外視察、やれ床面積がどーの、一日の来客数がどーの、と、海外のケタの大きさに驚け、といった記録ばかりだ。
そんなことが大事なのではない。
日本の百貨店はアメリカの百貨店を範としている。ヨーロッパの百貨店もアメリカを範としている。その点、日本もヨーロッパもアメリカも同じといえばそうなんだが、商いへの姿勢が全く違う。
アメリカ流は、仕入れに大きく利益を乗せて原価の倍くらいの売値にする。
シーズンの始まりが100とすれば、その後、だんだん値引いて、80、70、最終的には50になる。半額。
富裕層は100で買う。
大衆は50になるまで待って買う。
アメリカの百貨店は富裕層しか見てないから、100で売れればそれで良し。
景気が良いことを前提としたビジネスモデルに設計している。
不景気になった途端、これは効果を失う。
それでいいのか。
大事なことは、お客様への姿勢であり、お客様と一緒に育っていきたい。お客様との関係性を重視する。だからアメリカ流のようなやり方では信用を失ってしまう。
小林一三さん、商いに対する美学が一本、通ってる。
アパホテルはどんなにがんばってもパレスホテルにはなれない(もちろん、なりたいとも思ってないだろうけれど)。
違いは、「美への意識」。
でも、いまの日本にあるホテルの大半はアパホテルと同じものさしで動いてる。
コストを下げるために
・部屋を狭くする
・風呂は館内の温泉へ行け
・だから部屋の風呂はシャワーがある程度でいいだろう
・チェックイン・チェックアウトはデジタル化し、客に自分でやらせる
・サービスはしない
・シーツの替えはできるだけしない(地球環境を守るため、というお題目にして)
・冷蔵庫は空っぽ、自分で入れろ
・タオル、アメリティは自分で選んで、自分で部屋へ持っていけ
ホテルに限らず。世の中安くなってる。
ぼくがマーケティングやってるとインスタAIが見たか聞いたかしたんだろう。こんな広告が流れてくる。
「巧みな手法」とは何かというと
小林一三さんの業績を見回したとき
こんな安い経営、やってない。
電車を通す。
人があまり住んでないエリアだ。
誰が乗るの?
乗客は電車が創造する(小林一三)
線路の一方に百貨店を、もう一方に少女歌劇団や温泉などのエンタメ施設を、沿線を住宅地として開発した。
エリアを「園田」「武庫之荘」といった夢あるカッコいいネーミング、駅名にした。
これにより
百貨店の顧客
歌劇団のファン
温泉の顧客
沿線の住民
を創造した。
観光地に成り下がった日本に求められているのは「売り方(見せ方)で差別化」とかいう安い話ではない。
価値創造だ。そのためには美学が必要。
冒頭の残念なそば屋がいま力注ぐべきはインスタやX発信ではない。
美味しくする
それだけなんだけど、
いまの日本では通じないのかもしれない。
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