百恵は自分で宇崎竜童に依頼した
「二、三日履いて明日の朝持ってきたら交換してくれますか」
「いえ、それは交換できかねます」
「ホテルの部屋以外では履かないですが明日は交換してくれますか」
「いえ、免税手続きなど済ませてますし、交換できかねます」
「これ(商品を差し出し)だとだいじゅぶですか」
「いえ、どれもだめです」
某百貨店のOn店舗。
サクッと行って、サクッと買おうと思ってきたのだが、これは手強い。
中国人観光客が六、七人まとまっていて、日本語の怪しいツアーガイドが店員さんにあれこれわからんことを訊いてる。
試着で座る用の長椅子
おじい・おばあ
息子夫婦
孫一匹
が座って占領。
この店員さん、日本人に対応するのと同じ言葉遣いで応対している。
おそらくツアーガイドの日本語力では「できかねます」が理解されてない。
・・・気づいた。
ここでは接客してもらうのに番号札もらわないとあかんのだ。
休憩から戻ったらしき別の店員さんに話すと、くれた。きったない紙、「8番」。
待ってたら、別の中国人観光客接客していた中年おっさん店員が
「はちばんのおきゃくさまーーー」
手を挙げて、
「8番です」札渡した。
ぼくに向き直り
「Sorry, may I help you?」
言うから
「日本人やで」
「これは失礼いたしました!」
「いや、よう間違われるねん」
ぼくが持ってるサンプルを見て
「それは大きなサイズしか残ってないんですよー」
じゃ、これは?
これも27以上しか
わかりました。では26で残ってるものを見せていただけますか
しばらくして、持ってきた。
思いっきりダサいデザイン
履くまでもない
今日はOnとはご縁のない日だったとあきらめた。
それにしても、あの店で働く彼らスタッフたち
「一生Onでがんばります」
とはツユほども思ってないだろう。
「Onで稼いで、子ども学校行かせ、親の面倒見よう」
なんてのは、たぶん、ない。
放っておいても売れるのだから、販売技術、接客技術いらない。
来店客のファッションを全体的に見て、適格なデザインのものを提案する
なんてものもやろうと思ったことがない(あるなら、ぼくにあんなダサいデザイン持ってこない)。
ここから昨日話した「好きなことで食ってく方法」
STEP1;ビジネスモデルを構築する
に話は戻るんだけど
独立自営にせよ
会社勤めにせよ
自分の仕事に喜びと楽しさがなければ人生のムダ遣いだ。
山口百恵は本当によく勉強していたそうだ。
ありとあらゆる音楽を聴いてた。
いまみたいに、配信で簡単に手に入る時代じゃない。
レコードを選び、買うところから。
しかも超絶多忙の合間を縫って。
『涙のシークレット・ラブ』を聴き、宇崎竜童に楽曲提供を依頼することを決めた。
当時のアイドルは、事務所から「これを歌って」と提供受けるままだったのが、自分で動いた。
百恵17歳。
これが『横須賀ストーリー』を生み出した。
『プレイバックPart2』はいまも輝いてる。
ちゃんみなプロデュース『No No Girls』課題曲になって、若い子たちが歌い踊ってる。
百恵は貧しく寂しい家庭環境で育った。
だからこそ、「上」を目指した。
温かい家庭をつくる
そのため、きっぱりと芸能界を引退、その後二度とオモテには出てこない。
現役時代の猛烈な働きぶり、勉強ぶり
これこそ、仕事に喜びと楽しさを感じていた証拠だ。
「ねばならない」
からやってるわけじゃない。
ビジネスモデルの構築で一番根っこに置きたいのが「喜びと楽しさ」。
今朝も購読しているメルマガが立て続けに届いたのだが、要するに
買ってくれ!
今日の23:59まではこの価格だけど、明日になったら高くなる
だからいまのうちに買ったらあなた、お得ですよ
こういうのを目にすると
朝からHビデオを見せつけられたようで胸がむせる。
買ってくれ
買ってくれ
買ってくれ
で
溢れかえるSNSから距離を置いて
今日は一日、昔の日本映画を楽しむことにします。
『砂の器』
50年前の作品だが、惹き込まれる。
ここには
買ってくれ
は
ない。
安心だ。
いやはや、なんとも貧しい国になっちまったなあ。