瞬間に生きる
恋に落ちた。
駅に着き、シートベルト外し、支払って、レシートもらい、さあ降りよう。体が動かない。ドアから出たいのに動かない。
瞬間考えたことは、
「あ。オレ、死んだのかも」
乗ってるタクシーが事故に遭い、死んでしまったのだが本人は気づいてない、というやつ。
「どうしました?」運転手さんが声かけてくれた。
死んでない。
見ると、革ジャンのジッパーがシートベルトに噛み合ってしまってる。
こいつら、恋に落ちたんだ。
うんともすんとも動かん。
運転手さんがあわてて回ってきて、懸命に外すのを手伝ってくれた。
外れた。ジッパーもシートベルトも無事だ。
お礼を言い、駅へ駆けつけた。
結果、一本乗り遅れ、宴会に遅刻してしまった。
美学として、「宴会には絶対遅刻しない」と決めてる。残念である。
地下鉄車内でくだんのジッパー撮影し、関係者に送った。
遅刻は確実だが、先に起きることでいまを塗らない主義だ。
『The Economist』誌記事によると、Z世代(1996年以降生まれ)は先輩世代(ミレニアム、X世代、ベビーブーマー、さらに上)と比較して、資産に占めるキャッシュ比率が大きいらしい。
これというのも、投資効率、要するにリターン率がずっと良かったのに、ここにきて悪くなったからなのだが、キャッシュなんてものは株式(Equity)、や債券(Bonds)に比べ、アテにならない(Cash is trash)。
たとえば年率7.4%のリターンがあると仮定し、「引退後の生活に必要な資金を現時点の先輩たちの持っている資産並にするには」で計算すると、毎年11,300ドル(1,695,000円)貯金する必要がある。169万5千円。
年率5%とすると20,700ドル(3,105,000円)になる。310万5千円。
以上、すべて記事の数字だけど、310万とか、年収やん。
ぼくは、ジッパーがシートベルトと恋に落ちようと、ビズリーチがティファールと不倫関係になろうと、たとえ何があろうと瞬間に生きるようにしてる。
先のために、いまを犠牲にしない。
貯金はまさにこれ。先のために、いまを犠牲にしてる。
ぼくたちは毎秒毎瞬間、死に近づいている。
瞬間を大事にしましょう。
知人が、某コンテストを途中リタイアすることにしたらしい。賛成だ。
コンテストは結果だけど、大事なのはいまここの瞬間であり、それが楽しめないのであれば、とっととやめればいい。
結果より過程。
ところが、世の中、結果ばかりを気にするようになってる。
たとえばホテルのバージョンダウン。
「環境に優しくするために、アメニティグッズを刷新しました」
というが、歯ブラシにせよ、コットンにせよ、貧乏くさいったらない。
それらを使っている時間の楽しさ
を犠牲にして、何が地球に優しくか。人に優しくしてくれ。
ジッパーはシートベルトと別れてくれたが、でも、あの「噛み合った時間」、その恋に対してぼくと運転手さんが向き合った時間。
あれはとてもプレシャスで、良い時間でした。
瞬間に、生きてました。