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Vol.28 「当たり前に流れていく“常識”をみんなの“脳”で止めて考えてみよう」明和電機・土佐信道さんとのワークショップレポート
よく晴れた節分の日に開催されたキヅキランドワークショップは、スタジオから配信されました。水色の作業着に身を包んで登場したのは、今回のキヅキセンパイの明和電機・土佐信道さんです。キヅキランドワークショップでおなじみ、科学コミュニケーターの本田隆行さんもあわせて自前の作業着姿で司会進行いただきました。
明和電機の代名詞的存在の電子楽器、オタマトーンを手に演奏しながら登場した土佐さんは、「明和電機という会社は、ひたすらナンセンスマシーン、つまり役に立たない機械を作っている会社です!」と自己紹介。役に立たない機械をつくるということについては、最後にお答えいただいておりますので、その前に、ワークショップの様子についてお伝えします!
知ってることは当たり前に受け止めてしまうけれど
まずはウォーミングアップの1本目に土佐さんが「40年前くらいは割と得意だった」という「さかあがり成功と失敗」をチョイス。本田さんが遊び方を説明している間に、土佐さんもこどもたちも早くもキヅキを書き込んでいます。この動画は左右で、上手く回れたものと回れなかったものを比べているのですが、「みんな、失敗の原因を分析してくれてますねえ」と、本田さん。
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その一方で、土佐さんが「まずこれが気になった」というキヅキがこちら。
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見ている場所が違う! 「手前のテープがなんなのかも気になります」と指摘する土佐さんに刺激を受けて、こどもたちも視点が変わったようです。
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続いて、土佐さんも演奏するというドラムのムービーを見てみることに。さまざまなアングルから演奏する様子を観察するこのムービー。「僕はやっていたので実は結構詳しいんですけど、みんなはきっとまた違うことに気づいてくれるんじゃないかな!?」(土佐さん)
こどもたちがまず気になるのは、やはり演奏している人。
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すると土佐さんの妄想力、もとい想像力がふくらみます。「あれ、いや、これは……」
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すかさず本田さんが「こんなふうにみんなが“仮説”することもキヅキです。誰かの仮説キヅキに対して『いや、私はこう思う』と自分の仮説を足したり重ねたりしてみてくださいね」とみんなを誘うと、こんなキヅキも出ました!
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「ああああ、ほんとだ!」(本田さん)「でしょ、これは書き足すとこんなふうに……なるわけです!」と、さっそく土佐さんが重ねます。
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土佐さん:ドラムを叩いていた人として回答すると、これは髪の毛ではなくて……味付け海苔ですよ! うそです。真面目に回答しますと、これはミュートと言って、余計な振動を抑えていい音にするためのものなんです。僕はそれを知っていたから『これはミュートだな』と思っていて、まさか髪の毛には見えなかった。
本田さん:知っている人からすると当たり前で見逃してしまった、というわけですね。
土佐さん:そうなんです。これからはミュートのことを髪の毛と呼ばせていただきます!
ナンセンスを知るにはセンス=常識がわかってないといけない
こんなふうにこどもたちを刺激する土佐さんに、本田さんが尋ねたのが明和電機の発想法。「正当な方法とそうじゃない方法があるんですが」と土佐さんが教えてくれました。
土佐さん:正当なやり方は、“仕組み”です。世の中には色々な仕組みがあります。それを学んで知っておくと、違う仕組みが見えてくるんです。明和電機のものづくりはナンセンスがキーワードですが、ナンセンスとは『常識じゃない』ということです。ナンセンスを知るにはセンス=常識が分かってないといけないんです。常識を知らないでナンセンスをやっている人はただのおかしな人になってしまいますから。
本田さん:仕組みがわかるからこそ、それからずれていると『いつもとちょっと違う』ということに気がつけるわけですね。それでは、正当じゃない方法とは……?
土佐さん:それは、インスピレーションです!(笑)。ポーンッと思い浮かぶわけです。なにこれー!と。
本田さん:なるほど、ひらめくわけですね! ……それにも、やっぱり普段からものの見方を変えるっていうのもありますよね? 人が見ていないところを見てみる、というような。
土佐さん:あります。それが結構重要だったりするんですよね……あのですね、いつも思うんですが、常識って強烈なんです。当たり前すぎて、何もしなくても目の前にあることが流れていく。ナンセンスを見つけるには、そこでピッと足を止めなくてはならないのですが、キヅキランドはみんなで止めるのがいいですね。同じ“常識”をみんなで見て、みんなのそれぞれの脳でおかしさを発見して足を止める。しかもそれがバトルできるのがいいですね。俺の方が気づいているぞ! 私の方が変なものを見つけたぞ!ってね。
本田さん:さっきの土佐さんの『さかあがりの動画なのに壁の割れ目に気がついてしまった!』みたいな感じですね。
土佐さん:そうそう。あれはもう絶対誰よりも先に書こうと思ってました! あとですね、そういう変なことに気づいて言うと、一般的には『ダメ』だって怒られると思うんです。さかあがりを見なきゃいけないんじゃないかって思うでしょ。ちがうんです……あそこには別の宇宙があるんです。
本田さん:なるほど、自分なりの宇宙を探す、というわけですね。
……というお二人のお話を聞いていて、土佐さんのキヅキの目の付け所の秘密がちょっとわかったような気がしました。
さて、ワークショップでは「はぜるポップポコーン」や「とある花壇」と、ムービーの中にキヅキを探すクエストが続きます。みんな土佐さんに負けまいと(!?)自由な視点でムービーを観察し、キヅキを膨らませていきました。
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最後にみんなで見た「バスケのシュート」では、自由な発想のキヅキだけでなく、観察してわかったことや当たり前だと思っていたけど指摘されると確かに不思議なことなどのキヅキが書き込まれました。
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「シュートするときはジャンプするのかな、と思っていましたが、そうではなかったようですね、ちょっと動画をみんなで見てみましょう」(本田さん)と、このキヅキ部分のムービーを見てみると、さらにみんながいろんなことに気がつきました。
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そして、このキヅキ。確かにバスケットゴールのリングの色はたいていこのオレンジ色のような気がします。
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他にも「自分なら紫がいい」という意見も出たゴールリングの色問題、スタッフが調べてみると、日本バスケットボール協会のルールで色が定められていることがわかりました。
土佐さん:やっぱり同じルールでみんな戦わなきゃならないからですねえ。いつも練習しているゴールと違う色が本戦のゴールだったら動揺してしまう!
本田さん:ですね! でも他の色だとなぜだめなんでしょう? 暖色と寒色で距離感が変わるとかもあるんでしょうか?
土佐さん:もしかして……違う色だと途端にシュートが決まらなくなるとか?
本田さん:かもしれないですよねえ。気になります!
土佐さん:おもしろい!
役に立つものは他の人が作ってくれるから
全部で5本のムービーを見ながらみんなでキヅキをみつけたワークショップ。あっという間に終了の時間になりました。最後、土佐さんに、みなさんからの質問にもお答えいただきました。
Q:なんで役に立たないものを作ろうと思ったんですか?
A:役に立つものは、他の人が作ってくれるからです。世の中は役に立つものを作ろうとしてますから、自分は他のことをしようと考えました。でも、他の人の役には立たないけれど、自分にとっては役に立つものを作っています。
Q:役に立たないものは売れますか?
A:それがですね、昔は売れなかったんです。でも今は、このオタマトーンとか、売れるんです。役に立たないものを欲しい人が増えたのかもしれません。役に立つものは100円ショップに行けばいっぱいあります。いろんなものが便利に簡単に手に入る時代になったので、そうじゃないものを求める人が増えたというわけですね。
Q:お父さんからの質問で「好きな音楽は何ですか?」
A:あんまり音楽聴かないんですが、最近いい音だなと思っているのは、泳いでいる時のジョボジョボという水音。MP3とかじゃない、圧縮のかかってないナチュラルな音がいいですね。
今回も参加してくれた人それぞれの見方や発想でたくさんのキヅキが膨らみました。特に、「他の人が見ないだろう部分を見る」「常識を流さずにピッと足を止めてみる」という土佐さんのキヅキのヒントが頭のどこかに残ったこどもたちが、日常の中でもいろいろな!や?を見つけてもらえたらうれしいです。
土佐さん、本田さん、ありがとうございました! 参加してくれたみなさんも、どうもありがとうございました! 今後も引き続きワークショップを開催する予定です。詳細が決まり次第お知らせしますので、ぜひ、キヅキランド公式XかPeatixをフォローしてください!
なお、当日のワークショップの様子はこちらでご覧いただけます!