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空豆と音の“揺るがない恋心”は令和ラブストーリーのはじまり【夕暮れに、手をつなぐ感想】

「夕暮れに、手をつなぐ」が終わった。
北川悦吏子という大御所のラブストーリー作家なので期待はしていたが、ストーリーよりも、浅葱空豆役の広瀬すずちゃんの瞬発力のある安定の演技力と、その相手である海野音役、永瀬廉くんの繊細なのに揺るがない演技力という、二つの才能とそのビジュアルの相性の良さに圧倒されて終わったドラマだった。

このドラマは、LINEでの送信取り消しすれ違いを使ったことでメディアやSNSで「令和のラブストーリー」と賞賛されていたが、そんな小道具のすれ違いは普通に思いつくし、特に新しいとも思わなかった。最終回のスマホ充電が切れるとか、その手法もどちらかというとベタで古い。

そんなことよりも、私が衝撃を受けたのはヒロインである空豆も、相手役である音もどちらも「絶対他の人になびかない」という軸がはっきりしている「揺るがない役」だったというところだ。


「互いへの恋心が絶対に揺るがない」の新しさ

私の知っている限り、ラブストーリーは男女が揺れる。大好きな人と結ばれないことでそばにいる自分を好きだと言ってくれる他の異性に揺れ動いてしまうものだ。

ところがどうだろう。

空豆も音もまったく揺れない。「相手が他の人を好き」という勘違いだけがおきているだけで「じゃあ諦めて私も他の人と…」とか「この恋を忘れるために他の人と」といういわゆる“魔が差す”ことが一度もない。

それでも、ヒロインの空豆は一度音を完全にあきらめたはずだ。
3年後、セイラに「空豆が他の人と付き合い始めたと嘘ついたの。私も音とはつきあってないの」と告白されても「昔のこと」といい、音からチケットが届いても「場違い」とLINEで返した。

フランスで成功したけれど、メンタル的に大きな挫折をしてしまった空豆にとって、自分の夢を叶え輝いている音はもう手の届かない人になってしまったと感じていたのだろう。

あの第9話で「手をのばしたら届くと?」「届くんじゃない?わりと簡単に」と抱きしめ合った音が、完全に「手の届かない人」になってしまったと、空豆は感じていたに違いない。

そもそも、空豆が音をあきらめかけたキッカケは、空港でもらったあの手紙がはじまりではないだろうか。

第9話で「忘れられっかよ」と抱きしめられ少しは期待していたものの、結局最後に他人から渡された手紙には「俺たちは同志、夢を叶えよう」という内容がかかれており、それは同時に「俺たちはいつまでも友達だよ」という予防線を張られたと、普通の女性なら思う。

ぶっとんでいるようで、非常に繊細な心を持っている空豆もきっとそう思ったのに違いなく、彼女は空港のロビーでその封を閉じるとともに音への恋心を一旦封印したのだ。


一方、音はその手紙を「互いに夢を叶えて再会し、その時好きだと言おう」という決心で書いている(笑)。だからこそ、出会いのキーアイテムである片方のワイヤレスイヤホンを入れたのだ。「お前は俺の運命の相手だ」という意味を込めて。

同じ手紙で男は「夢を叶えて迎えに行く」と誓い、女は「この恋はもう進展がない」と悟ってしまった。下手したら、フランスで新しい男に出会って電撃婚でもしかねない状態だったのに、それでも音を忘れることができなかった空豆の一途さ。

そして、空豆に再会し好きだというために、紅白出場をその恋のゴールに設定しガムシャラにアーティストとして突っ走った音の一途さ。

まるでジブリのような一途さで彼ら二人は3年後、無事に再会を果たした。

ジブリ設定といえば昭和かもしれない。
しかし「ほしいものがはっきりしていて、その一つにまっすぐに向かっている」という視点で見ると、まさに「令和」なのだ。
物があふれてあちらこちらに目が行き迷う昭和や平成ではない

私たちは『本当に欲しいものだけ手に入ればそれでいい』時代に突入した、そう思わせてくれる物語を、大御所の北川悦吏子が書いたことに敬意を表したい。


この物語に「セイラ」は不可欠だった

そして、その運命の再会を果たし結ばれる結末も何もかもを握っている人物がいた。それは「セイラ」だ。

浅葱空豆=青い空

海野音=海と音楽

セイラ=夕暮れ(イタリア語でSera)

海と空。この二つは寄り添っているようで、実は永遠に結ばれない二つだ。海と空は交わることはない。しかし、夕暮れになり太陽が沈もうとする時、海に太陽が反射し、まるで空と海は一つのように結ばれていく。

セイラは音の曲を体現する歌姫であり、夕暮れなので空であり「空に属する」存在でもある。

セイラが現れることにより、音は夢を叶え、セイラが空豆に恋をすることによって二人はすれ違い互いへの恋心が「本物である」ことに確信をする。

要するに「夕暮れに、手をつなぐ」は

運命の出会いをした二人が
その運命が本物かどうか夕暮れに試され、
そして夕暮れによって結ばれる

そんな物語だったのだ。


最後に…ここからはティアラとして。

さんざん「廉ピにラブストーリーを」と夢を掲げてきた私。

このような素晴らしい格上女優と…
さらに大御所脚本家の作品で…
そして火10という素晴らしい枠で…

こんなこんな大きな形で夢を叶えてくれる永瀬廉くんとスタッフさん並びに各処方面に心より感謝申し上げます。

欲を言えば、三度のキスはもっとブチュブチュやってくれてかまわなかったです。ええ、もうかれこれ5年待ってたので(笑)

とはいえ、美しく幸せに満ちた時間を堪能させていただきました。
ありがとうございました。

永瀬廉くん体に気をつけて。そして海ピをよろしくね。




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