災害を「正しく」恐れるために知ってほしいこと。
こんにちは。きぜつです。
台風が日本列島に長くとどまりそうな予報で、心配な今日この頃です。
私は地図や災害に関する情報を整備する業務に携わっていますが、
先週、自分の仕事のことについて記事にしてみました。
台風の動きも気になるなか、明日9月1日は「防災の日」ですね。こんな状況だからこそ、先週の記事の中で触れた「地図をとおして、災害時に自分や大切な人の命を守るための情報を皆さんにも知っておいてほしい」ことを綴ってみます。
まずはハザードマップを確認してほしい
今、住んでいる地域にはどのような災害リスクがあるか確認するために、とにかく最初に、自治体のハザードマップを確認してほしいです。
ハザードマップは、過去の災害や地形のデータなどをもとに、どんな場所でどんな災害の被害が想定されるか、範囲を示した地図です。
上の記事にもありますが、実際の被害とほとんど一致した実績もあります。
皆さんが住んでいる自治体から紙の地図で配られていたり、ホームページでも確認できます。
ハザードマップに情報を重ね合わせてほしい
ここからは、地域の災害リスクをより深く知ることができる、ハザードマップに重ね合わせてほしい情報をいくつかお伝えします。
こちらは、「ハザードマップポータルサイト」という国土交通省によって運営されているサイトで、
・身のまわりの災害リスクを調べられる「重ねるハザードマップ」
・地域のハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」
の2機能があります。
特に「重ねるハザードマップ」では、ハザードマップの上に、土地の特徴や災害などに関する情報を重ねられることが特長です。
1.地形分類 ~近所にはどんな災害リスクがあるの?~
「昔、このあたりは池だったみたいだよ」
「ここは、山を削って平地にした場所らしい」
このように、今、実際の場所にいると一見わからない、土地の成り立ちについての情報が、地図から確認できる場合があります。いくら改変しても、もとの地形の性質はそうそう変わりませんし、起こりやすい災害も同様です。
「重ねるハザードマップ」では、地形分類が色分けされた地図が重ねられるだけでなく、場所をクリックすると、土地の成り立ち、その地形に特徴的な自然災害リスクの内容について、一般的な情報を知ることができます。
2.自然災害伝承碑 ~過去にどこでどんな災害が起こったの?~
皆さんは、小学校で「地図記号」を習ったこと、覚えていますか?
田んぼや市役所、工場、そして三角点など…。
国土地理院が定め、現在134種類あるそうです。
そのなかで、2019年に誕生したいちばん新しい地図記号をご存じですか?
今、そしてこれからの未来、この地域に暮らす人への「先人からのメッセージ」ですね。
国土地理院や自治体のホームページに情報が載っているので、近くにあるか探し、どんな教訓が刻まれているのかを紐解いてみるのもいいですね。
また、国土地理院のホームページには、地域の災害リスクを考えるうえで自然災害伝承碑の情報の優れている点と注意点についてまとめられています。
ハザードマップに重ね合わせたうえでの読み解き方も載っていました。
3.指定緊急避難場所・指定避難所 ~どこに逃げればいいの?~
命を守るためにまず避難する「指定緊急避難場所」も押さえてほしいです。
自治体によって、災害種別ごとに指定されているので、
・洪水の時はここに避難!
・地震の時はここに逃げよう!
というように考えておくことが重要です。
これと似たような言葉の「指定避難所」は、災害発生後に一定期間の生活を営む施設のことで、基本的には災害種別に限らず指定が行われるものです。学校の体育館や公民館などが多いです。
ですが、両者の違いを知っている人ってほとんどいないかもしれません。
自分もこの関係の仕事をするまで定義の違いをわかっていませんでした。
両者の場所とあわせて、定義の違いについても知っておきましょう。
皆さんの最寄りの指定緊急避難場所/指定避難所はどこかご存じですか?
そして、地図でそこまでの避難経路も押さえ、平時のうちに、できれば1回はその経路を実際に歩いてみてほしいです。
結局、自分の身は自分で守ってほしい
1.日頃から備えておく
これまで地図を確認してほしいと散々言ってきましたが、同時に伝えたいことがあります。それは「地図を盲信することは危険」ということです。
地図上では災害のリスクが少ないから安心、というわけではありません。
むしろ、そのような地域に住む人こそ、
・防災グッズを準備しておく
・家の中の安全対策をしておく
・政府が発する緊急情報の意味/それを受けての行動を理解しておく
・家族がいる場合は、災害時の行動や連絡手段を話しておく
など、日ごろの備えをしてほしいです。
下記の「政府広報オンライン」に情報がまとめられています。
ちなみに、私は友人からいただいたカタログギフトで防災グッズを購入しました(そんなものがギフトの選択肢にあることにびっくり)。
2.定期的に思い出す
小学校の頃「避難訓練って意味ないよね。いつ地震が来るか最初から教えてくれるもん。しかも毎年同じことをするし」と思っていました。
ですが、いざというときに行動できるためには、繰り返しの訓練が必要ですし、何より避難訓練はリマインダーの役割もあるんだなと今なら思います。
また、上記の自然災害伝承碑を調べる中で、石碑でも過去の災害を伝えてくれるものですが、「あえて、風化する木造の碑を建てている。地域の皆で定期的に建て替えの行事をしないといけなくなるが、その度に災害を思い出せるから。」という取組をしている地域があることも知りました。
物理学者・防災学者の寺田寅彦さんの言葉「天災は忘れた頃にやってくる」は聞いたことがあるかもしれませんが、定期的に思い出すことの重要性は心に留めておきたいです。
3.信頼性の高い情報を出す媒体を見極める
災害が起こったときには、真偽がわからない情報があふれます。
不安な時ほど、そのような情報に惑わされたり、過剰に反応してしまったりする場合がありますよね。そうすると適切な判断や行動ができず、さらなる被害を生んでしまうかもしれません。
そして、緊急時には信頼できる情報かどうかを判断する時間はありません。
普段から、信頼性の高い情報を出す媒体を見極めておくことが大事だと思っています。
さいごに
災害を正しく恐れることは本当に難しいです。
もし災害が起こってしまったとき、自分や大切な人の命を守るための適切な行動がとれるため、まずは知識を持っておくことが第一歩だと思います。
そのときに、地図の情報が少しでもお役に立てれば幸いです。
ですが、1つの情報だけを鵜呑みし、信じすぎることも危ないです。地図にも様々な情報を重ねたり、地図以外からも色んな方面から信頼できる情報を収集したりして、総合的に判断できるようになりたいものですね。