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いい話し合いをしたいならまず呼吸しろ/ティク・ナット・ハンの教え

自らの内側に平和や落ち着きを保つこと。それは私のような仕事をする人にとっては致命的に大切なスキルだ。

それなしには、むずかしい話し合いは乗り切れない。たとえば、ついおどおどしたり、ヘラヘラしてしまう。気に入らないことに反応してカチンときたり、心にもないことを口にしてしまったりする。不都合なことに気づかなかったふりをして、結論をいそいでしまう。自分がいいと思う方向にコントロールしてしまう。人とぶつかるのを恐れたり、人からの承認をもとめたりして、かんたんな方向に流れてしまう。

こういうのは、すべて「余裕がないひと」がする失敗だ。自分はそういう恥ずかしい失敗を数えきれないくらいしてきた。

それでも、みんなが自由でいられる平和な空間をつくり、そこから既存の枠組みを超えて新しい価値を生み出すような粘り強い話し合いを支えるためには、まずは自分の内側に「スペース/器」をととのえなくてはならない。

自分は基本的には世俗的でだらしなく、落ち着きのないADHDだけれど、この仕事をするなら、「自分をホストするスキル」を鍛える必要がある。

もちろん、そういう「内なる獣」的な自分を否定することなく、その「彼」を自分の中にあるより大きな器の中に招き入れ、慈しみ、思いやりをかけて、力を発揮できるように整えなくてなくてはならない。

こうした実践について大きな影響を受けたのが、禅僧・詩人であり平和活動家のティク・ナット・ハンだ。彼は今年2022.1に亡くなった。その遺灰を大地に還すセレモニーが美しい映像になっている。 

彼が伝える、「自分の内側にスペースを保つための呼吸や歩行」など、身体のうごきの中にあるマインドフルネスのやりかたや、複雑なシステム思考を散文のかたちで伝え、人の気づきをうみだすティーチングのやりかたは、多くのインスピレーションを与えてくれた。

いま、「ふつうに生活」してると、マインドレスになりやすい社会環境にいるとおもう。こころの余裕がなくなると、人も組織も国もどんどんモテなくなる(愛情や参加、創造性がなくなるということ)。

なんだか、もうちょっと「余裕のある社会」になったらいいなと思っている。そのための知恵を彼はたくさん残してくれている。ぜひ今こそ著作や映像を見てみてほしい。

そう思って自分が気にいって見ている映像や本を少しまとめてみた。たぶんのあたりから。よかったらご覧ください。

■子どもたちとの問答
https://youtu.be/XkFyEjeXFjA

■自分を愛するにはどうしたらいいか

■愛する人をなくした喪失感をどう扱うか

■呼吸法

彼は著作も多いが、口承の教えも多くある。自分がそらで唱えているもの(つまり不確かな)お気に入りをここにに覚え書きしておきます。

Breathing in, I know I am breathing in.
Breathing out, I know I am breathing out.
Breathing in, I notice my in- breath has become deeper.
Breathing out, I notice that my out-breath has become slower
Breathing in, I calm myself.
Breathing out, I feel at ease.
Breathing in, I smile.
Breathing out, I release.
Breathing in, I dwell in the present moment. Breathing out, I feel it is a wonderful moment.
息をすう 息を吸っているとわかる
息をはく 息を吐いているとわかる
息をすう 息が深くなることに気づく
息をはく 息がゆっくりになることに気づく
息をすう 穏やかになっていく
息をはく やすらぎを感じる
息をすう ほほえむ
息をはく 手放す
息をすう 今このとき
息をはく すばらしいとき
この一枚の紙のなかに雲が浮かんでいる。」この一枚の紙の存在は、雲の存在に依存している。なぜなら、雲なしには水がなく、水なしには樹木は育たず、樹木なしには紙はできないからだ。さらに紙を作るには木を伐る人が必要であり、森や人間が育つには太陽の光が必要だ。このように、その他いっさいのものがこの一枚の紙のなかにある。そして、この紙を見ているわたしたち自身もこの紙の中にあり、このわたしと関係のないものは何一つない。

一度直接お目にかかって「ありがとう」を言いたかった。あらためてご冥福をお祈りします。






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