私は、稲垣武之さん(現在、東電柏崎刈羽原発所長兼常務執行役)の博士論文(東大、論文博士、2012.2)「原子力発電プラント重要機器・構造物の体系的かつ効率的な経年劣化管理に関する研究」の内容分析を行い、原子力発電所の構造物の経年劣化の評価にかかわる全体的な枠組み(組織論、人材論、評価技術基準の国際比較論、構造物の評価部位に対する具体的な着目点と手順)の研究で、工学哲学=技術論であり、博士論文としては、非常に広範囲の問題を深く探究した例がないくらいスケールの大きな研究内容

私は、2024.12.20、見学・調査のため、柏崎刈羽原発を訪問し、稲垣武之所長(現在、東電柏崎刈羽原発所長兼常務執行役)にお目にかかり、博士学位論文のコピー承認をえました。
私は、稲垣武之さんの博士論文(東大、論文博士、2012.2)「原子力発電プラント重要機器・構造物の体系的かつ効率的な経年劣化管理に関する研究」の内容分析を行いましたが、一般論として、論文博士審査申請するには、条件(①学部卒後10年か大学院修士課程修了後8年、②大学や研究機関などで研究履歴あり、③学会論文誌に共通する研究テーマで数編の筆頭原著論文が掲載されていること、④審査専門分野の専門家がいて審査受理が可能)が整っていなければ審査受理されず、国立情報学研究所(CiNii)に拠れば、稲垣 武之さんの原著論文は、稲垣武之・小林照明・島田森 「福島第一原子力発電所6号機における液滴衝撃エロージョンによるタービン抽気配管損傷とその対応について」、保全学 = Maintenology 9 (4)、pp. 63-67、2011-01のみであり、単独の原著論文がなく、時系列からすれば、審査申請時には、原著論文が一編もなく、特例になりますが、博士論文に、数編の原著論文並みの研究成果が織り込まれていると解釈しましたが、形式分析と内容分析から、
・1ページあたり、ゴシック体で、35文字×23行=805文字で、370ページ、wordの標準書式ならば、1ページあたり、明朝体で、42文字×36行=1512文字であるため、約半分になり、370/2=180ページに、ですから、特に、ページが多いわけではない、
・一般論として、理工系の原著論文や学位論文は、特定の現象の解明や新現象の発見と理論的証明であり、審査する場合、判断しやすいのですか、稲垣さんの博士論文の内容は、原子力発電所の構造物の経年劣化の評価にかかわる全体的な枠組み(組織論、人材論、評価技術基準の国際比較論、構造物の評価部位に対する具体的な着目点と手順)の研究で、工学哲学=技術論であり、博士論文としては、非常に広範囲の問題を深く探究した例がないくらいスケールの大きな研究内容、
・今後、国内の軽水炉で、寿命延長が本格的に進められますが、稲垣さんの研究は、そのための指針的役割を担うものと思う、
・私は、原発の事故・故障分析を技術論レベルで行っており(拙著『原発事故の科学』、日本評論社(1992))、その関係で、稲垣さんの博士論文を熟読し、内容分析しましたが、米国の経年変化評価の中で、米国の全商業用軽水炉の原子炉圧力容器ベルトライン領域の脆性遷移温度(大きな圧力下で、この温度以下に冷却すると、脆性破壊の発生確率が高くなる)の調査と考察、約100基の商業用軽水炉の大部分が20年間寿命延長(設計寿命40年暦年+最初の寿命延長20年暦年=60年暦年)どころか、調査時点で、さらに、20年間の延長が可能になっている軽水炉が出始めていたため(設計寿命40年暦年+最初の寿命延長20年暦年+再寿命延長20年暦年=80年暦年)、米原子力規制委員会の判断根拠と日本が参考にすべき事項の調査と考察があればより良かったように思えた、
ことが分かりました。
稲垣さんの博士論文の内容は、今後の私の原発の事故・故障分析と安全論の研究のために、貴重な文献に、おそらく、教科書的役割を担うものと思います。
ありがとう、稲垣さん !

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