「明日のナージャ」を観た話

アニメ「明日のナージャ」をご存知だろうか。

2003年からおよそ1年間、テレビ朝日系列で毎週日曜朝8:30~から放送されていたアニメ。(おジャ魔女どれみが終了した後、同じ時間枠で放送された。)因みに、この「明日のナージャ」が終了した後、プリキュアシリーズが放送開始した。

それでは、「明日のナージャ」が本当に好き。という話をする。

幼い頃に観た覚えはあったものの、内容の記憶はほとんど曖昧だったため、大学生になってから興味本位でもう一度見返したら衝撃を受けた。

以下、あらすじ。

20世紀初頭ヨーロッパ。孤児院で育ち、みなしごだと信じていた主人公ナージャであったが、ある日「お母さんは生きているかも知れない」と告げられる。手がかりは形見のブローチと日記帳、そして母親が舞踏会で初めて着たというドレス・・・
旅芸人一座「ダンデライオン」の一員として世界各国を巡りながら、日記帳に記された母を知る人々を訪ねてゆく「明日=未来」を見つめる少女ナージャの恋と冒険・笑いと涙の物語  (東映アニメーションホームページ、東堂いづみ http://www.toei-anim.co.jp/tv/nadja/frame_story.html)

上記あらすじの通り、お母さんのドレスが一つの手がかりとなっている。つまりナージャのお母さんはある程度高貴な身分の出自だった。そしてナージャは、生まれの家の後継者問題に段々と巻き込まれていく。

一言で要約すれば、

「孤児院で生まれ育った少女が、実は名門貴族のお嬢様だった。」

そして自分が貴族のプリンセスだったと判明しお母さんと感動の対面を果たした後、彼女は自分の歩む道を自分で決める。貴族の暮らしはせず、今までの踊り子の生活に戻る選択をした。

「今は滅茶苦茶だって思われても、そう、100年くらい先になったらきっと来る。みんなが、もっと自由に、自分の生き方を選べる時代が。そう、信じてる。」(エピソード50、ナージャ)

当主である夫の言うことに逆らえない妻、

自分のことを好きになった男性ではなく、自分が好きになった男性を選びたい、という女性、

政略結婚をすることが当たり前の中育った少女。

多くの女性の例の中でちらほら見えるのが「自分の人生は自分で決める」というキーワード。

そして一番最後に一番衝撃的なセリフを残して去っていった、悪役のセリフ。

「ナージャ、私たちは新しい時代に、20世紀に生きているのよ。私、これからのプリンセスは貴族のお姫様じゃないってわかったの。」(エピソード49、ローズマリー)
「そして私は、私のお城を探す。自分の力で、見つけてみせる。」

悪役の彼女がナージャに何をしたのかここでは割愛。けれど、一番最後に彼女もキーワード的なセリフを残して去っていく。

そしてもう一点印象に残っているのが、「悪と正義」のような分かりやすい二項対立で書かれたシーンがほとんどない、という点。

確かに最後の激烈な後継者問題あたりでは、上記に書いた酷な悪役が登場していたけれど、その悪役のバックグラウンドは詳細に描かれており、どちらかというとその悪役が登場するに至った階級社会のシステムに目が行った。

「明日のナージャ」終了後に始まったプリキュアでは、「正義VS悪」という分かりやすい対立構造でヒーローが描かれている。

しかし、「正義VS悪」より、現実に起こりうる問題は「正義VS正義」だ。この物語では「正義VS正義」が、当時ヨーロッパの身分格差への関り方を通して分かりやすく小さなスケールで描かれており、観ていて非常に面白かった。


さて、ここに書いたことプラス、恋愛要素も割ときっちり入っているため、大変豊かなコンテンツのアニメであることは間違いない。そして内容もさることながら、ヨーロッパ風景の描写の緻密さ、映像の美しさ等も素晴らしい。

ごりごりの少女アニメだが、是非多くの人に観てほしい。

これほど素晴らしい作品が世の中でまだあまり知られていないことが少し悲しい。

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