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週末に見た映画

#映画感想文

週末に鑑賞した映画が、2本とも秀逸だったのでご紹介。


フェアウェル

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NYに暮らすビリーと家族は〈嘘〉の結婚式を口実に、余命わずかな祖母に会うために中国へ帰郷する。本人への告知を巡り対立するビリーと家族。帰国の朝、彼女たちが選んだ答えとは?
(Amazon Prime Video 紹介文より)

幼い頃からニューヨークで育ち、アメリカ的な思考をもつビリーには、本人に真実を告げないということが理解できない。

「癌で死ぬ人は、癌ではなく、恐怖で死ぬのだ」
「西洋では個人の生命は個人のものだが、東洋では個人は社会の一部なのだ」

両親や親戚は、このようにビリーを諭す。
ただ、ビリーの両親もアメリカで長く生活していて西洋風の価値観を持っているため、告知するかどうかで葛藤している様子が伺える。

この映画では、食事風景が頻繁に登場する。
親戚一同が中国らしい円卓を囲んで、時には笑い合い、時には口論をし、時には宴会ゲームで盛り上がる。
小刻みに切り替わるカメラが、些細な日常の中にある個々人の微妙な表情の変化を切り取る。

主演はアジア系アメリカ人のオークワフィナ。
現在頭角を現している彼女は、『オーシャンズ8』や『クレイジーリッチ』など、ぼくの好きな映画にドンピシャで出演していて、勝手に注目している。


ロープ

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1995年、停戦直後のバルカン半島。ある村で井戸に死体が投げ込まれ生活用水が汚染されてしまう。国籍も年齢もバラバラの5人で構成される国際援助活動家「国境なき水と衛生管理団」は、死体の引き上げを試みるが、運悪くロープが切れてしまう。やむなく、武装集団が徘徊し、あちこちに地雷が埋まる危険地帯を、1本のロープを求めてさまようが、村の売店でも、国境警備の兵士にもことごとく断られ、なかなかロープを手に入れることができない。
(Amazon Prime Video 紹介文より一部抜粋)

ただ、ロープを探し回るだけというシュールな映画。

停戦直後のバルカン半島を舞台としていて、銃撃戦などの派手な演出はないものの、爆撃された村やライフルを担いだ兵士など、緊迫感の漂うシーンがひたすら続く。でも、何も起きない。
戦時中の混乱や理不尽さが凝縮されていて、フィクションの体をしたドキュメンタリーのようにも感じる。

この映画の原題は「A perfect day」
死体が投げ込まれた井戸から、次の現場へと移動する車中のラストシーンで、新米の女性職員が自虐的に「a perfect day」と呟くのだ。

映画の最後の一コマも皮肉がきいていて、人間の無力さが強調される。
どんなに立派な理念を掲げて一生懸命頑張ったところで、物事はなるようにしかならない、という諦念を感じさせる映画だった。


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上記の2作とも、テーマ的にはなかなかシリアスな映画だ。

どちらも淡々と場面が進行していて、笑いや涙をむりやり誘うような大袈裟な演出はない。
日常のちょっとしたシーンがひたすら映し出されるだけだが(『ロープ』は非日常的だけど)、それだけに深く考えさせられたり、胸に迫ってきたりするものがある。

両作品ともに大きく盛り上がる場面はないが、独特のユーモアが散りばめられていて、思わず見入ってしまう映画だった。

2021年11月現在、Amazonプライムで無料公開されているので、ぜひ見てみてください。

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