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私が目の前を指さしながら「ゴームク?」と問うと、彼らは黙って頷いた【Gangotri→Bojbasa⇄Gaumukh】

2024/06/18(前編)

濃厚な1日だったので前後編に分けます。

午前7時、ガイドが私の宿泊しているゲストハウスにやって来た。
近くの食堂で一緒に朝食を取る。

ガンゴトリ(Gangotri)の朝は冷え込む。
インド人たちはセーターやダウンを着込んで防寒対策バッチリだが、実際のところはウインドブレーカーを上から羽織るくらいでちょうど良い。

今日はボジバサ(Bhojbasa)という場所まで歩いて行くのだが、このトレッキング路について軽く説明する。
ガンゴトリはその名前の通り、女神ガンガーを祀っている地で、ガンジス川の源流近くに位置する。
そのガンゴトリから距離にして20km、標高差にして700mほど登ったところに、ゴームク(Gaumukh)と呼ばれるガンガーの源流が存在する。
ガンゴトリとゴームクを日帰りで往復することは困難なので、途中でベースキャンプに宿泊しなくてはならない。
そのベースキャンプが、ボジバサというわけだ。

ガンゴトリ寺院の背後に伸びる山道を歩くこと30分。
国立公園の入口に到着する。
ここでパーミッションの確認と入園料の支払いを行う。
いよいよガンガーの源流に向けたトレッキングの始まりだ。

ところで、私がガイドとして雇った人物は、見た目が60〜70歳くらいのおじいさんだった。
ちょっと心配ではあったが、これがなかなかどうして健脚だった。
比較的歩くのが速い私でも、おいて行かれそうになるほど歩みが速い。

中央に見えるのがバギラティ山
チルバサの休憩所

出発からおよそ2時間半で、小さな休憩所があるチルバサ(Chirbasa)に到着。
チャイ休憩を挟む。

そこからさらに黙々と2時間歩いて、本日の目的地であるボジバサのベースキャンプに到着。
時刻は午後12時半。
ガンゴトリから5時間のトレッキングだった。

ボジバサ
今日の宿
ガンゴトリとゴームクの間で物資を運搬するポーター

昼ご飯を食べながら、ガイドにゴームクにはいつ行くのか尋ねると、明日だと言う。
時間はまだまだたっぷりあるので、ボジバサの周辺を探検することにする。

一旦ガンガーの近くまで行くと、幅の広い川を渡す小さな黄色いゴンドラが見えた。
岸を見やると、人が引っ張って動かしているようだ。
それをぼーっと眺めていると、ロープを引っ張っているサドゥーが私に何か叫んだ。
手伝ってくれと言っているのだろう。
2人でロープを掴んでいるが、なかなか大変そうだ。
私はすぐに彼らを手伝った。
どうやらこのゴンドラには滑車がないらしく、かなり重い。
3人がかりでようやく、黄色い箱をこちらまで引き寄せることができた。

ゴンドラに積まれた荷物を下ろすと、今までロープを手繰っていた2人のサドゥーが空のゴンドラに乗り込んだ。
そして、私にも乗れというようなジェスチャーをする。
私も箱に乗ることにして、ゆっくりと対岸まで出掛ける。

対岸でゴンドラから降りると、サドゥーが私に付いて来いと言う。
どうせ暇なので、彼らの後を追うことにした。
彼らがどこまで行くかは分からないが、遅くとも16時に折り返せば暗くなる前にテントに帰って来れるだろう。

しばらくサドゥーと一緒に歩いて気付いた。
私たちはガンガーの流れをさかのぼるようにして進んでいる。
ということは、ゴームクに向かっているのではないか。
私が目の前を指さしながら「ゴームク?」と問うと、彼らは黙って頷いた。

1時間ほど歩いただろうか。
広い河原のような場所に出た。
急に気温が下がったような気がする。
にわかに強い風が吹いて、細かい砂を巻き上げた。
風は冷たく、Tシャツだと明らかに寒い。
サドゥーの一人が、大きな鞄から毛布を取り出して体に巻きつけた。

広い河原をひたすら前進する。
もうすでに他のトレッキング客の姿はなく、周囲には3人しかいない。
荒廃した地球でなぜか生き残った3人が、ほかの生き残りを探してさまようといった、SF映画のような世界だ。
布をまとっただけのサドゥーの衣装が、一層その雰囲気を醸し出している。

後方からやって来たインド人の青年と合流して間もなくのことだった。
ガンガーの流れる音がますます激しさを増す中、サドゥーが「ゴームクだ」と言った。
体の向きを右に変え、少し進んだところに、それはあった。


後編に続く

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