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真夏の読み鉄①神戸〜松山|疲れたら、愛媛。

乗り鉄、撮り鉄、いろいろあれど
我が鉄道の旅は「読み鉄」なり。

読み鉄旅というのは、過去の記事にも書いたが、主に本を読むことを目的に電車に乗って旅をすることだ。(※個人的定義です)

今年もまた、本を携えて旅に出る。
今回は、私の定番読み鉄コースの四国旅。
お供の本は、ファン・ボルム著/牧野美加訳『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

読み鉄旅を企み始めた時に、宿を予約するより先に本屋へ行った。
特に目星を付けていたわけではないので、本屋に入って最初に見つけた1番分厚い小説を買おう!(ただし相性は検討)と見繕いに行ったところ、この本が平積みされていて手に取ったのだった。

小さな書店を開業したヨンジュと、その店に集う人々の生活、仕事、家族のあれこれ。
通底するテーマは『人生を休むこと、あるいは立ち止まること』というところ。
必死で走り続けた人生の隙間に、書店、そして本がある。

読み鉄旅にぴったりな、優しくて穏やかで、だけど核心をついたことばがたくさん詰まっている物語だ。
また別途、ゆっくり感想を書きたい。

読み鉄旅のすすめ

ここで少し、読み鉄旅の魅力について語りたい。

ページをめくり文字を追う行為を「本を読み進める」と言うが、その言葉通り、読書って進むことだと思う。
文字を見て、言葉を認識して、咀嚼して、思考する。
たった一文でも、読む前の自分と読んだ後の自分は違う場所にいる。

A地点からB地点へ。
読み鉄では思考的な移動と物理的な移動をセットで行うことで、身体感覚をともなう読書を楽しむことができる。自分は列車でじっと座っているだけだけど、景色は次々移りゆく。

ヒュナム洞書店にも、こんな一節があった。

本はなんというか、記憶に残るものではなくて、身体に残るものだとよく思うんです。あるいは、記憶を超えたところにある記憶に残るのかもしれません。

ようこそ、ヒュナム洞書店へ_p.55

今回の旅も、本の記憶が車窓の景色や車内の話し声、列車の心地よい揺れと、一緒に体内に残るような読み鉄旅になれば嬉しい。

8:00、神戸市内を出発

さて、いつものように青春18きっぷを握りしめ旅がスタート。
初日はかなりの長距離移動となるので、読書も進む進む。岡山駅に到着すると、おなじみの快速マリンライナーに乗り換え。

ホームで流れるJR四国の列車到着音「瀬戸の花嫁」を聞くと、ぐぐっと旅のギアが入る。

12:08、丸亀駅で途中下車

丸亀駅でお昼休憩。

魅惑の駅前食堂
地元の方で賑わう定食屋のメニューに何気なく肩を並べる冷たいうどん。されどここはうどんの本丸、香川・丸亀。
実家感溢れる器に載ってしれっと本気の手打ちうどんが出てくるのだ。

そして、ちょっと寄り道で、前回まさかの休館日で涙を飲んだ猪熊弦一郎現代美術館へ。

この入口に心をずっと掴まれている
キュビスムな猫たち。めちゃくちゃ良い

猪熊さんは、キュビスムやフォーヴィスムなど、同時代の様々な画風や技法を試し、新たな表現に挑んでいることが感じられた。

その多様さ多彩さは、ピカソやマティスに通じるなぁと思って後から調べてみたら、やはりマティスとも深い交流があったとのこと。
作者の対象や絵画そのものへの好奇心と愛情から発される素朴な光で心が次第に明るくなる、そんな素敵な美術館だった。

束の間のアートにほくほくしながら、電車旅は続く。

13:38、丸亀から予讃線に乗って

ここからはもう、ひたすら電車に乗り続けるだけである。
瀬戸内ブルーの大好きな予讃線をたっぷり味わうのだ!

しおりは18きっぷおなじみのアレ

読み鉄と言うものの、本ばかり読んでいるだけでなく、車窓からの風景ばかり見ていたり、Podcastを聞いていたり、うたた寝していたり、実際はいろんなことをしながら過ごしている。
時間通りに列車に乗りさえすれば、あとは何をやっても良い。

だって俺は!自由!自由!自由!
短いこの人生で!いちばん大事なもの!
脳内のRCサクセションも叫ぶってわけ。(急に)

観音寺での乗り換え待ち時間にコンビニのクリームどら焼きをおやつに買う。贅沢。

18:05、松山に到着

遅延もあり、なんやかんやで10時間でゴール。
夕暮れの松山、帰ってきたよ、哀愁交差点。

あんまり読んだら勿体無い!と、ちまちま味わいながら読書したつもりだったが、初日なのにうっかり半分近く読み進めてしまった。

数年前に和牛がキャンペーンしてたな。

その②につづく…

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