姉の迎えの時間は9:15。 空港に行くまでには2時間かかるため、私は早起きをして、7時前に家を出た。 昨日寝たのは4時半頃だったけど、眠くはなく、道中は弟のこと、今後のことをぐるぐると考えていた。 涙が出そうになるのを何度も我慢した。 姉と合流すると、姉は私にスタバの飲み物を買って待っていてくれた。 新作らしい。 姉に、昨日まで母とどのように過ごしたのか、これまでの事を話した。 姉は、全然泣けないのだと話す。 弟が帰ってこないと聞いた時、弟かもしれない遺体が見つかった
気がついたら、朝だった。 いつ寝たのかも定かではない頭で、ボーッとしてカーテンから差し込んでくる光を見ていた。 母に声を掛け、"弟探し"を今日も始めた。 昨日のように付箋にメモを書いて家を出た。 『○○、おかえり。 ご飯はあるものを食べてね。 お母さんと、バイト先と⬜︎⬜︎大学に行ってくるよ。 バイトも学校もサボるんじゃないぞ〜』 悲しい気持ちを吹き飛ばすように、そう書いた。 まずは弟が働いていたバイト先に向かった。 弟はガソリンスタンドで働いていた。 引っ込み
この日、私のこれまでの日常が壊された。 私はその日も午後からの勤務だった。 昨晩は3時ごろに寝たにもかかわらず、朝の7時過ぎには目が覚めていた。 何をするでもなく、ただボーッと天井を見ていた。 10時30分ごろ母から、警察に捜索願いを出しに行ってくるとの連絡があった。 母が警察にいた時間はおそらく2時間ほど。 11時から13時頃まで話を聞かれていたようだった。 A町は、バイト先とは真逆の方向だった。 なんで?どうしてA町? A町は家を出て、すぐに反対方向へ行か
目が覚めてすぐに携帯を確認したが、母からは何の連絡もなかった。 弟が帰ってきたのか、母にLINEを送ると、まだ帰ってきていない、との事だった。 今日の午前中にバイト先に行って弟の出勤時間、退勤時間を聞きに行くそうだ。 私はその時、昨晩の不安を振り払うように弟が生きているという前提で話をしていた。 小心者の弟のために、お昼にひょっこり帰ってきたらバイト先に行きにくくなるかもしれない、と思い、母に「お昼まで待ってみたら?」なんていう呑気な提案をしていた。 20年、弟と生活
母から連絡が来たのは、月曜日の22時ごろ。 私はまだ仕事中だった。 仕事が終わらず残業をしており、早く帰りたいと思いながら、ふと携帯で時間を確認した時、母からLINEが来ている事に気がついた。 なんだか、胸騒ぎがして、仕事を抜けて、すぐに母に電話をかけた。 母によると、 朝、バイトに遅刻しそうになりながら出かけたっきり、日曜の夜になっても、月曜日になっても、弟が帰ってきていない事 月曜日もバイトがあったから、どこかに泊まったのかもしれない事 弟の携帯にも連絡
私が新社会人になって3ヶ月目。 私が順調に社会の闇を経験して死にたくなっている頃、 弟は、本当に死んでしまった。 その日、弟は、バイトに行くと出て行ったきり帰って来ず、3日間行方不明になったのち、崖の下で発見された。 20年という長くも短い人生に、幕を下ろした。 私と弟は2つ違いで、私を挟んで、さらに2つ違いの姉がいる。女2人、男1人の3人兄弟。 弟は、1番上の姉は『大きいねぇねぇ』、私のことは『小さいねぇねぇ』と呼ぶように親からしつけられていたが、次第に呼び方が