朝のはなし
日を浴びたいと思った。
トリプトファンがセラトニンに、セラトニンがメラトニンに、などという理由もあるが、これはもっと単純な話だ。
私の家にはベランダがある。
2階の一番奥の部屋、東向き。
サンダルを出してベランダに出る。
薄水色の空に白い太陽が大きく、眩しくて直視できない。
雀が鳴き、雪は解け、土肌が見えている。
裏の家の庭に、焦げ茶色になった流木のような木が置かれている。
エナメルバッグを提げた中学生がふたり、何か話しながら走っていった。
空気が冷たいと美味しく感じるのはなぜだろう。
日を浴びると生きていると感じるのはなぜだろう。
草野心平は詩歌「ごびらっふの独白」で、みんな孤独だと言った。
るてえる びる もるとりり がいく。
10代の頃に繰り返した平仮名が、悩む私に寄り添った蛙語が、反射的に頭に浮かぶ。
いつか本当の孤独の意味を知ることがあるのかもしれないが、先案じばかりしていても仕方がない。
昨日買ってきた岩手産の牛乳がある。
おむすびを作ろう。
鮭と昆布を混ぜたやつだ。
太陽は白いまま、淀みなく光を放つ。
北緯41度、雪国の朝である。
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