『100万ドルの五稜星』見てきた
見てきた。とりあえず途中まで大きなネタバレなしで行こうと思う。
ただ、元から見に行くつもりの人は、まだ読まない方が良いぞ。
◆ ネタバレなし感想 ◆
結論から言うと楽しかった。
好みで言えば、個人的なトップ層を塗り替えるというほどではないが、珍しいキャラの絡みもあり、サプライズゲストもありで、色んな方面から楽しませてくれる映画だ。見てきて良かった。
今回の映画のジャンルは、『お宝争奪謎解きバトル』だろう。
コナン映画としては、整合性よりも外連味を優先した感じで、『紺青の拳』に近い楽しみ方をするタイプの話だと思う。話の導入もスピーディーだし、服部がいきなりアレをブチ破るシーンで、「あ、今回はこういう楽しみ方をする映画ね。OKOK」と早い段階でマインドセットさせてくれるのもいい。
謎解きの情報が多くて少し頭は混乱しがちだが、要所要所で挿入されるアクションは頭空っぽで楽しめるし、終始、「悪いやつはこいつ!」「目的はお宝の場所!」という話は一貫しているので、「今コナン達は何してんだっけ?」という気持ちになりづらいのが良かった。
序盤から服部の剣戟アクションが多くて、その点も満足度が高い。
中盤から物語のギアが上がって、情報がさらにあわただしくなった感はあるが、話がテンポ良くサクサク進むのでありがたかった。
ざっとした印象はそんな感じ。ここからはネタバレありで語っていく。
◆ネタバレあり感想 ◆
【総評】
見る前は「服部がメインでキッドの謎が解き明かされて沖田と紅葉まで出てくんの!? 話まとまんのか!?」と思っていたけど、なんとかまとまって良かったなという印象。
キッドとの対決姿勢を強くしないのは良かったと思う。なんだかんだ言って、キッドに「世紀末の魔術師」の頃のミステリアスな敵を求めるのはもう難しいと思うので、劇場版では対決はほどほどにして早めに協力関係になってくれた方が、話がゴチャゴチャしなくてありがたい。
謎解きが多くて、しかもその謎解きは犯人の動機などに関連づいたものではないので、かなり難解だった。
一方で、屏風に星稜刀の柄の模様が残ったのは、「あとでなんか使うんだろうな」とずっと思っていたので、そこもあんまり驚きがなかった。謎解きリテラシーの低さでちょっともったいない観方しちゃったなと思う。
話の中核に鈴木財閥が絡んでいないのは、違う切り口で良かったと思う。一方で、鈴木財閥が斧江財閥を接収する流れで、園子がいつも灰原がやってるような「椅子の人」になってるのが面白かった。
っていうか園子! まさか最新作で「鈴木財閥の令嬢」モードの園子をこんなに観られるとは思ってなかったよ! これは園子界隈に一石を投じますね。製作委員会に僕らのスパイでも紛れ込んでるのか?
園子、順調に鈴木財閥の後継者としての才能を発揮していってるというか、こう、社交界に詳しくなりすぎている。いいぞもっとやってくれ。
あと、さすがに今回の話では、阿笠博士と少年探偵団を持て余してるなと思った。気球で上から宝のありかを探す役割、変装したキッドにやらせても良かったんじゃ……と思ってしまう。
アクション面は多少のやり過ぎ感も含めて非常に満足。セスナの上で戦うんじゃない。
映画のオリジナルキャラは、全体的に良い味出していたと思う。終盤になって急にオッサン同士の巨大感情ががっつり出てきて驚いた。正直言って、嫌いではない。
【ゲスト】
沖田の扱いは、邪魔になるほど大きくもなく、かといって「出る価値ある?」と思うほど小さくもなく、結構理想的な塩梅だった。鬼丸連れてきた時は笑っちゃった。あそこはやりたい放題やってほしいシーンなので、よかったと思う。
まさかの登場をした鬼丸だが、そう言えば声はツダケンになってるんでしたね。沖田を叱りつけるシーンは、土方の声もツダケンだからのネタなのか、それとも土方の配役も含めて意図的なものなのかはわからんかった。鬼丸の祖先、土方だったりするのかな……。
青子もまさかの登場で驚いたな。快斗の番号を「ば快斗」で登録しているの好き。蘭やYAIBAのさやかに比べると子供っぽいんだよね青子。可愛くて良かった。
中森警部が撃たれるシーンの描写も含めて、「まじっく快斗1412」を先に見ていたの、なんだかんだ正解だったなと思った。快斗にとっては、単に「青子のお父さん」であるだけでなく、私生活でしっかり関わっている人なんだよね。
紅葉は、「このままずっと平次を追って空振りし続けんのかな。まぁそれでも良いかな」と思っていたのだが、本編に変な絡み方をしてきた。こっちの方が良かったと思うかどうかは人それぞれかなぁ。さすがに爆撃はやりすぎではないか。おもしろかったけど。
本人に自覚がないとはいえ結果的に服部の告白を邪魔することになったの、ちょっとこう、もやっとしちゃう。
【服部の告白】
aikoの「相思相愛」がかかるタイミングや、函館の夜景の美しさ、告白のセリフも含めて良かった。でもオチがな! いや、原作で告白してほしいという気持ちもあるけど、同じくらいガッカリもしたよ! 落としどころとして妥当なところだというのはわかるけど、ガッカリはしたよ!
服部の「函館の夜景はビッグベンより上か?」という質問、なんかこう、絶妙に器が小さくて好きですね。和葉に告白するのに新一に勝てるかどうか気にしてんじゃねぇよ! っていう……。おまえが和葉に告白できたらどこだろうが最高のシチュエーションだろうがよーえーっ!?
でもそう考えると、服部にはもういっそのこと、浪漫もへったくれもないような場所で和葉に想いを伝えてほしい。
蘭は友達の恋路のことになると、世話焼きばあさんみたいになるのが良いよね。今回は、終始一貫して蘭の行動原理がそれだったのも良かった。まぁ、ところどころ、ちょっと呑気すぎんかという場面もあったけども。
【福城聖】
こいつ、和葉に惚れる描写はいらなかったんじゃないかな……。てっきりクライマックスに上手く効いてくるもんだと思ってたんだけど、あんまりそういうことはなかった。
キャラとしては結構好きなのだが、絶妙に描写がちぐはぐな感じがする。「父から意思を受け継いで戦う」というキャラなのだから、今回の大オチも踏まえた上で、マッチアップ相手はキッドが相応しいと思うんだよね。
これは邪推オブ邪推なので話半分に聞いてほしいのだが、構想段階では「和葉に惚れる平次のマッチアップ相手」と、「父親の意思を継いで戦うキッドのマッチアップ相手」がいて、それが聖に統合されたんじゃないかと思った。
「母親が戦地で死んだ医者であり、それゆえに兵器の存在を憎んでいる」というのは、平次のマッチアップ相手の設定だったんじゃないかなぁ。聖の父・福城良衛が、妻のことには一切言及せず、斧江2代目との関係にだけ重い感情を吐いているのも、なんか歪な感じするし。
【気になった点】
話のテンポは良いのだが、キャラが必要なリアクションをできていない場面がちらほらあったりしたので、相当脚本を切り詰めたんだろうなぁという感じがする。
たとえば、お宝の場所が判明するシーン。函館山にはこの時点で和葉が向かっているはずだし、そのままではカタクラもそこへ向かうことになるのだが、その辺に関する言及が一切ない。さすがにもうちょっと焦らんか?
あと、カタクラが函館の各所に仕掛けた爆弾も放置されっぱなしだ。
「戦況を一変させる兵器」というのも、コナンの世界観的にあまりピンと来なかった。しかも戦時中だから80年前の兵器だ。超人血清とか、超人機とか、鉄人28号とか、強化外骨格零とか、そういうモンじゃないとお話にならない気がする。
まぁ、「兵器でもなんでもなく、暗号解読装置だった」というオチは好きだ。確かに、当時のことを考えれば、戦況を一変させ得るものではあるし、しかし今ならスマホひとつで事足りるという無常観も気に入っている。盗一が残した「寝た子を起こすな」というカードも、「お宝の正体は夢のままにしておこう」という意味だったのかな。
ざっと駆け足で感想を書き連ねてみた。あとから思い出したら、まだまだ追記するかもしれない。
なんのかんの言って個人的には良い映画でした。
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