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【怒りの群れ】(77米) 裏切り・怒り・復讐

あらすじ


夏も終わりひっそりと静まったリゾート地のシール島で、ある日異変が起こる。
行楽客が置き去りにしたペットの犬たちが凶暴な野犬と化し、地元の住民たちを襲い始めたのだ。
次々と犠牲者が出る中、住民たちは島に永住するために移住してきた海洋学者のジェリーを中心に結束、野犬の群れと闘う。
「怒りの群れ」は、ロバート・クローズ監督による1977年のアメリカのホラー映画。捨てられた犬の群れがシール島で食べ物のために人間を殺すことで人間に反旗を翻すという話。

注)この作品は視聴困難な状況にある事に加え、考察したい事があるためネタバレいたします。

ストーリー

鬱蒼と茂った森の中にある小さな空き地で草を食む一頭の馬。
その馬は、得体の知れぬ存在に取り囲まれている事に気づき疾走する。
その馬を追う集団。 彼らは馬を取り囲み攻撃の態勢をとった。

この少年の家族も多分に漏れず犬を置き去りにする。

夏も終わり、ひっそりと静まったリゾート地のシール島。
一週間かけてボートで釣りに出かける行楽客たち。
さすがに飼い犬を連れて行くわけにいかず、その辺に放置する。
多くの家族連れが犬を施設から引き取り、夏だけ遊んで放置するのである。
置き去りにされた犬は、日が暮れる頃には 野犬の群れに合流していた。
リーダー格であるひと際大きな金毛の雑種犬が仲間として受け入れるようだ。

馬が…

ジェリーという海洋学者が永住するため 妻のミリーと2人の息子と一緒にシール島に引っ越してきた。
彼らもまた、ライリーという名前のジャーマンシェパードを連れてきた。
ライリーはウサギを追いかけて木々に入るが、野犬に襲われ怪我をしてしまう。
ジェリーはすぐに、マクミニミー老人の他、島の住民たちに野犬の危険性を通告し、とにかく見かけたら殺すよう伝えた。

ジャーマンシェパードのザ・ザと一緒に一人で小屋に住んでいるマクミニミー老人。

ある嵐の晩、老人の愛犬ザ・ザが異変を感じ、暴れだした。
ライフルで武装する老人。
一足先に、ザ・ザが前庭に飛び出したところ、突然現れた野犬どもに襲われた。老人は応戦し数頭を射殺したが、野犬どもは窓を破り侵入してきた。
マクミニミー老人とザ・ザは無残にも、生きたまま食い殺されてしまう。


翌朝、ジェリーの妻 ミリーは養鶏場の近くに潜んでいる野犬を見つけた。
犬は敵意露わに牙を剝き出し、彼女を襲ってきた。
ミリーは咄嗟に車中に避難し難を逃れたが、瞬く間に群れが車を取り囲み、侵入しようとする。
夫のジェリーが異変に気付き、ショットガンで一頭を撃ち殺し犬を追い払った。

彼はミリーを町に連れて行き、隣人のハーディマンにも警告した。
ハーディマンが他の島民に、一層凶暴化した犬について警告して回る間、ジェリーは息子たちを拾って家に連れ戻した。

そんな状況とはつゆ知らず、ジム・ドッジという中年男が息子のトミー、
料理人のロイス、妻のマージと一緒に島に引っ越してきた。
彼らが到着した翌日、ドッジはトミーに散歩に行くように促した。
森を探索中のトミーは近くで犬の群れが遠吠えしているのを聞き、走って逃げた。
彼は森の中を走り、切り立った崖の端に追い込まれてしまった。

獰猛な犬たちがジワリジワリと迫る中、事もあろうか 彼は崖から転落死してしまう。

一方、ジェリーとハーディマンは、ドッジに野犬がさらに獰猛化し島を歩き回っていることを忠告し、彼らを家に連れ戻した。

しかし、ジェリーがマクミニミーの小屋で、ザ・ザと射殺された犬の死体を発見。そして、既に引き裂かれ、むさぼり食われた老人の死体の残骸を見つけた。
ジェリーは群れの追っ手を回避しながら家に戻り、何が起こったのかを他の人々に話した。
息子のトミーがまだ戻ってこないことを心配し、憤慨したドッジは一刻も早く息子を見つけるように懇願する。

ジェリーはドッジとハーディマンを連れて廃墟となった納屋に向かい、逃げる犬を発見。

ライフルで武装したドッジは、ダルメシアンを撃ち殺す。
そして、納屋の隅に横たわっているロイスの死体を見つけたが、トミーの姿は何処にも無かった。
息子の死を悟ったドッジは、ジェリーのジープを盗んで犬を追いかけ、ジェリーとハーディマンはトラックで彼を追跡した。
ドッジは廃屋の近くで群れに遭遇するが、群れのリーダーに手を噛みちぎられ、反撃できなくなってしまった。
群れは彼を攻撃し、彼をズタズタに引き裂き、食べ始める。

ジェリーとハーディマンはすぐにドッジを見つけ、トラックで犬を追い払うが、
ドッジの容態は思いのほか重傷で、その翌日死亡した。
 
ジェリーは無線で沿岸警備隊に信号を送れなかったため、ミリー、ウォーカー、ハーディマンに群れに対して使える武器を探すように命じるが、彼らが見つけることができる武器はジェリーの
ショットガンと数個のカートリッジ、数本のスティック、傘、数本のナイフだけだった。
ジェリーと彼の家族、そしてわずかに残った住民たちは、既に群れに包囲されていることに気づいた。その日の午後、雑種と他の4匹の犬が家に攻撃を仕掛け、窓から侵入しようと試みる。
ジェリー、ミリー、息子たち、そしてハーディマンは彼らを食い止めるのに精一杯。
2匹が家の中に侵入するが、ジェリーはショットガンで応戦、
ウォーカーとジェリーの犬ライリーはドーベルマンを家から追い出した。
襲い来る犬の様相が凄まじく、籠城する様はゾンビ映画を見ているようだ。
残りの犬たちは窓を破るのに失敗した後、一端引き下がった。

その夜遅く、一行はドッジの遺体を波止場まで運び、ボートに乗せて海に押し出し葬った。
犬たちが戻ってくることを懸念し、彼らはすぐに家に戻り籠城した。

翌朝、ウォーカーは目を覚まし、ドックの近くでモーターボートの音を聞く。
彼はショットガンをつかみ、波止場に駆け下りると、数ヤード先の海上で
モーターボートに乗った小さな人々のグループを見つけた。
ウォーカーが振り返ると、群れが立ちはだかっている。
彼は空中で発砲し、波止場に着陸するように合図を送ろうとするが、
人々は彼がふざけていると思い笑って走り去った。
ウォーカーは銃で彼らを撃退するが、雑種と他の2匹の犬は
すぐに彼を圧倒し、ウォーカーを甲板から水辺に叩き落とす。

一方、ジェリーはショットガンの射撃音で、ウォーカーが波止場に向かったことに気づき、ジープで向かうが、気づくと群れに囲まれていた。
ジープで群れに突っ込み、数頭を轢き殺した。

犬たちが一旦、退却したのを見計らって、ジェリーはウォーカーを引き上げた。

助けを待つのに疲れたジェリーは、ミリーにマージ、ライリー、ウォーカー、そして彼らの息子たちを波止場に連れて行くように命じ、彼とハーディマンは群れを皆殺しにしようと画策。

ハーディマンがジェリーのジープで静かに待っている間、
ジェリーは雑種と残りの群れを家に誘い込む計画。
ここまで来たら、ネタバレします…
数日前に捨てられて群れに加わったのと同じ犬が、彼が縛られていたロープが
枝に引っかかって絡まっていたため、仲間と同じ運命とはならなかったらしい

監督 ロバート・クローズ(『燃えよドラゴン』『死亡遊戯』)

キャスト
ジェリー:ジョー・ドン・ベイカー
ミリー:ホープ・アレクサンダー=ウィリス
ハーディマン:リチャード・B・シャル
コッブ:R・G・アームストロング
ウォーカー:ネッド・ワーティマー
マージ:ビビ・ベッシュ
マクミニミー:デロス・V・スミス・Jr
ジム・ダッジ:リチャード・オブライエン
トミー・ダッジ:ポール・ウィルソン
ロイス:シェリー・マイルズ



犬が群れをつくり、その群れの絆を大切にする動物であることは知られていると思う。犬は愛情深く、家族や同種だけではなく、共に暮らしている人間に対しても愛情を注ぐようです。
忠犬ハチ公をはじめ、人間と犬との絆を証すエピソードは数多く、犬にとって愛情の大切さは、その食欲をも凌ぐことがあると言われているほど。
たとえ餓死しようとも、愛情を捨てることは考えられないほどとも言われる。命よりも大切な愛情なので、私たち人間と暮らす犬も、その本能から瞬時に私たちの愛情を読み取ってしまうとか‥
それも、単純に愛されているか、いないのかといった程度ではなく、どの程度愛されていてどの程度愛されていないのかをも判定してしまうほどと言うから驚く。人間同士でも、何となく感じるものがありますよね。
この映画では、そういった人間との係わりまでは描かれていないのだが、そこはロバート・クローズ監督 (燃えよドラゴン)なので・・

子宝に恵まれなかった夫婦の間では、自分たちの子供のように可愛がる人たちがいれば、きょうだいのように一緒に育った子供たちもいると思います。
重要なのは、この愛情の深まりを犬たちも感じ取っているということ。
本国、日本の動物の愛護管理法では、犬や猫の飼い主が、何らかの事情で飼育ができなくなり行政に持っていくと、行政はこれを引き取らなければならないとしています。

これは飼えなくなった飼い主が、動物を捨ててしまうことが多いということの対策として設けられた規定のようだが、特に犬については、捨てられてから行政が捕獲に乗り出すより、むしろ飼い主自ら保健所などに持ち込んでもらった方が労力の削減になるという考えもあったとか。
積極的な引き取りは、野犬化した犬の捕獲数を減少させるのに役立ってきたのかもしれないが、飼えなくなったら保健所に引き取ってもらえばいいといった安易な風潮をも作り出した。
ただし、保健所に引き渡してからの愛犬猫の運命は、新たな家庭へ引き取られ、そこで新たな信頼関係を築き、その生涯を全うするとは限らない。

そう願うことで、ご自身の罪悪感を紛らわせているに過ぎません。
(厳しいようですが、どうせ 後日触れますので)

近年、ペットショップやブリーダーなどの業者が、犬を行政に持ち込むケースが増えているとか。ペットブームの裏側で、ただ子犬を産ませるためだけに飼育し、産めなくなったら捨てるという金儲けが主目的の繁殖業者も少なくないと聞きます。
子犬猫はまだ一般譲渡の可能性が考えられるが、高齢、病気という場合には、ほとんどが殺処分されるでしょう。

飼主の病気や死去、老人ホームに入居した等様々な理由でペットとのお別れを余儀なくされる場合はやむを得ないとして、単に犬が高齢となったとか、多頭飼育、または暴れるからと言った理由で手放すのであれば、最初っから飼うべきではなかったと思うくらいの責任感を持って欲しいと思う。

これだけ愛情深い犬猫だから、信頼してた人に裏切られた時はひどく傷つき、トラウマになってしまうことだってあると思う。
新たな犬猫に対して大好きな飼い主さんの興味関心が奪われる事への恐怖や嫉妬、嫌悪感を剥き出しにすることもよく聞きます。ヌイグルミに対してさえ嫉妬することも。
あの人は味方だと思っていたのに、いざという時になって手のひらを返されたり、棄てられたという経験をすれば、犬猫も裏切られる恐怖や傷つく恐怖から敵意露わに牙を剝き出し、二度と人間に対して愛情を注ぐことは無いと思います。
それが怒りの群れとなって人間に復讐を誓ったのです。
信頼していた人たちに裏切られ飢え苦しみ、悲しみを抱えた犬たちが群れをつくり、その群れの絆を大切にする。

その絆とは、人間への復讐・・。

この映画からは、そういった犬から見た自分勝手な人間への復讐という観点を持ちづらく、野犬たちが、ホラー映画のモンスターのように描かれているのが残念ではある。

そこはロバート・クローズ監督 (燃えよドラゴン)なので・・


また後日、「裏切り・怒り・復讐」については考察してみたい。


そういえば、いつぞや並べた「恐怖」のオードブル引っ込めたまんまだったなぁ・・

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