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映画 名作・ヒューマンドラマ など

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映画 名作・ヒューマンドラマなど、一般的に言われている作品とは ひと味違う隠れた名作、埋もれそうな映画が多め。 洋画の未円盤化の作品率が高めです。 主に私が視聴したことのある作品…
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#映画感想文

疾走するエモーション -サミュエル・フラーの映画の魅力

    【木曜日は映画の日】     映画は物語を語る中で、ある一つの場面を視覚的に、効果的に示すことができます。   映画監督のサミュエル・フラーは、抜群に「面白い物語」を創ることができると同時に、鮮やかに多くの人に印象を与え、考えさせる場面を創ることができる監督です。 サミュエル・フラーは1912年マサチューセッツ州生まれ。幼い頃から新聞記者に憧れ、12歳の時にニューヨークの新聞社でボーイとして働き、偉大な編集者アーサー・ブリズベーンとも面識を得ています。やがて17歳で

【プロビデンス】 1977年 フランス      アラン・レネ監督作品

1977年製作/フランス 78歳の誕生日の前夜、奥深くで病魔に苦しむひとりの老作家が死の強迫観念に襲われながら、最後の力をふりしぼって構築する物語と現実を、重層的に交錯させて描く。 78歳の誕生日を迎える著名な作家クライヴは、「プロビデンス」という名の宏壮な館にその病身を横たえながら、恐らく最後となるであろう作品を思い描いていた。 「プロビデンス」とはアラン・レネ監督が本作につけた題名であるようだが、摂理というカルヴァンの予定説に基づいた意味合いもあるのであろうか。 そ

【ゲルニカへの道】GUERNICA   (1982 ハンガリー映画)

(82ハンガリー) GUERNICA 「原子爆弾は横浜、京都、広島、長崎、小倉と予定地は沢山あった。人口が密集していないと威力の実験にならないからだ。 何故、広島だったか。当日の朝、晴れていたからだ。」 広大な荒地に彫刻を作り続ける男マルトン・バルガーは言う。 彼のインタビューに魅かれたマルギットはバルガーを訪れる。 メディアを通して軍拡競争や民衆を扇動する軍事活動が繰り返される現在自分に何ができるのだろうか。 バルガーは答える「自分もある時期、同じような事を考えていたが

【愚か者の日】(81年西独)正常と異常との境界を鬼才が狂気で描いた過激な問題作(最終修正版←今んとこ)

(81年西独) 監督 ヴェルナー・シュレーター 主演 キャロル・ブーケ  女性だけの精神病院を舞台に、裕福な家庭に生まれ不自由なく生活しながら、心は深い闇に閉ざされている一人の女性を通して、人間の狂気の奥に潜むものを描きだした衝撃的な作品。  主演は「007/ユア・アイズ・オンリー」のボンドガールの他、「美しすぎて」のキャロル・ブーケ。 まさに一糸纏わぬ姿で狂気ともとれる体当たりの演技で熱演。 それまでにない言わば汚れ役でありながら、一層輝きを増した美貌に、ただただ圧

【ポケットの愛】メガネっ子がミムジー・ファーマーに入れあげた

メガネっ子少年ジュリアンが15才も年上の女性エレナに入れあげた。エレナも最初は遊びのつもりだったが、徐々に心が動いてしまう。 しかし、二人が真剣になるにつれ、周囲の状況は厳しくなっていく。頑張れば、きっと何とかなるなんて、そんな訳があるわけもなく・・・。 何でも努力すれば切り抜けられるってほど、世の中が甘くないっていうことは、親や周囲の大人が一番わかってる。大人の女性であるエレナも当然わかっていた。 どんなに頑張っても乗り越えれない壁があって、それが当たり前にある事だという

【テルレスの青春】ヴィスコンティも映画化を画策した、ニュー・ジャーマン・シネマの先駆的作品

「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフ監督の長編デビュー作でありニュー・ジャーマン・シネマの先駆的と言われる作品。 ヴィスコンティ監督も映画化を計画していたと言われる。 主演の少年は鋼のような硬質の魅力を持ち合わせるマチュー・カリエール。ビョルン・アンドレセン「ベニスに死す」の持つ甘い美貌とは対照的ながらも、思春期の揺れ動く感受性を演じ抜いた。 社会における性と、思春期の持つサディスティックな欲望と暴力の支配によるメカニズムを日常の細部にわたり容赦なく叩き込んでくる

【人でなしの女】(1923仏)cf『巨人と玩具』人間群像劇

世界的名声を得ていた前衛的歌姫クレール。彼女は名士たちを思いのままに隷属させようとする。 ある夜、ノールセンという若者が招かれるが、徹底的に冷たくあしらわれた彼は自殺を図ってしまった・・ それでも舞台に立ったクレールは血も涙もない人でなしの女だと 世間から非難されることに。 ところが・・・ 観たのは86年のモノクロ着色サイレント(ピアノBGM有) 公開当時その前衛的な映像のため、公開時のパリの映画館では観客が騒ぎ批評も二つに分裂、世界中の人々を驚嘆させながら公開中止の憂き

【ペテルブルグ幻想】ネフスキー大通り熱にうなされた若者たちのワンナイトファンタジー

ベルリンの街にひとりの少年が降り立った。 ロシア文学を熱狂的に信奉する彼は、年寄りと見れば「罪と罰」の金貸し老婆と思い込み棍棒で殴り殺し、翁は判事と思いこむ始末。 その夜 彼は、エレナとヨハンナという二人の美しい女性と出合い 彼はエレナに「罪と罰」のソーニャのイメージを重ねあわせはじめた・・。 ペテルブルグ ネフスキー大通りとは、 ロシア文学を信奉する者にとっての聖地ともいえる刺激的な場所。 そんなペテルブルグ熱にうなされた少年と満たされぬ何かを抱えた二人の女性たちが

【南東からきた男】入院患者32人。気づくと33人目の患者がいた。

(86 アルゼンチン) ブエノスアイレスの片田舎にある精神病院にて、入院患者32人を担当するデニス医師。気づくと33人目の患者がいた。 彼は病院内にある教会のオルガンをひいていた。 単なる振動の流れに人は感動する。その魔力は楽器にあるのか? 演奏者にあるのか‥曲自体にあるのか? 或いは聴くもの側の彼らの中にあるのか‥。 彼らが感動している事を理解できても、私は感じる事ができない 誰も知らぬ 演奏者は自らランテースと名のった。 別の世界から来たという。彼は宇宙人なのか  この3

【南東からきた男】全部で32人のはず。33人目の患者は何者だ?

先ほど、この作品について触れたが、こういった玉蟲作品はしばらく病めて退屈しない。お薬飲むか・・。 ガープの世界や、ブリキの太鼓みたく病み付きって感じもないのだが・・。 ドコをどう切り取るかによっても様々な顔を見せるタマムシ色をした作品のレビューは本当に難しい。 あえてソコの雰囲気でも出せればと、毎度ながらに着地点もなしに言葉をボークで投げまくってみる。 でも大丈夫。 言葉のキャッチャーが強引にストライクに見せてくれる・・。 そもそもボークは反則なのだが、言わなきゃ

『マイセン幻影』すべてのコレクター必見 映画感想

92英・伊・独 監督 ジョルジュ・シュルイツァー(「ザ・バニシング -消失-」「失踪」) 主演 アーミン・ミューラー=スタール  92年ベルリン映画祭主演男優賞 純白の地肌に官能的な色彩を持つマイセンに心奪われた男の物語。 マイセンや陶器、美術品などの事は何も知りませんが、あらゆるジャンル、全ての収集家・愛好家必見!の作品が埋もれてますぞ マイセン磁器に限らず、何かにハマってしまい収集したくなるのは誰にでもあることだと思う。 殊にこの男爵に於いては1930年代以降のチ

【牝牛と兵隊】(60・仏)牛の散歩を偽り脱走だ #映画感想文

La Vache et le Prisonnier (1960 フランス) 第二次大戦中、ドイツ軍の捕虜となったフランス兵士シャルル・バイイの白昼堂々とした脱走秘話にもとづいた文字通りの傑作コメディ。 フランス陸軍歩兵シャルル・バイイは補虜としてドイツにつれてこられ、ある農家で働いて4年になる。 1943年の春、彼は白昼堂々と捕虜服を着たまま農家の飼牛マルグリットをつれて脱出した。 牛を散歩させているふりをし、故国に逃げ帰ろうというのである。 まんまとドイツ将校に成り