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生活の中から健康を作る。生活の中の小さな選択に目を向けてみませんか。

生活の中にあるあらゆる小さな選択

日々の生活の中の、あらゆる事象すべてが、私たちの身体に影響を与えています。どんな肌着を身につけるか、どんな姿勢で座るか、何を食べ何を飲むか、昼間に太陽の光を浴びるか。睡眠時間、食事の時間、歩き方の癖、部屋の明るさ。当たり前ではありますが全てが私たちの身体に影響しています。一方でその一つ一つにどのくらい影響力があるかは目に見えず、また一日変わったとしてその変化を体感できるほどの影響力があるかと言ったら、ないものが多いとも思います。

私は、こうした一つ一つの選択をとても大切に思ってきました。もちろん私も社会の中の一員として外部からの影響を受けますし、欲求や怠惰は一人前にありますから、全てに意識が行き届かないことも、何かの折に習慣があっという間に崩れてしまうこともたくさん体感しています。決して、健康という面で理想の生活が送れているわけではありませんが、それでも生活の中の一つ一つを大切にしたいという気持ちはずっと胸にありました。

私は生活健康学という学問を専攻していました。進路に悩んでいた高校3年生の夏、もう13年も前のことですが、こうした生活の中の一つ一つの選択を科学する学問があると初めて知った時の興奮は、今でもよく覚えています。

自分として、生活の中の一つ一つを大切にしたいというのが最初ですが、私の周りの大切な人に、そして全ての人に、日々の生活の中の選択を大切にして欲しいという想いがあります。

私が生活健康学を学んでいた当時から、私にとってとても大切な人が精神疾患で苦しんでいました。彼女はいくつも病院に行き、カウンセリングを受け、何種類もの薬を飲み、宗教も心理学も、あらゆることを試しました。彼女の苦しみを救ってくれる何かとの出会いを私も切望していました。でも当時、その中に苦しみを救ってくれるものはありませんでした。
夜、彼女の苦しみを電話で聞きながら、電話を切ったら明日には彼女がこの世からいなくなっているんじゃないかという恐怖に駆られるほど、彼女は苦しんでいました。大切な人が苦しんでいて私も本当に辛かったけれど、一番苦しいのはもちろん本人で、健康な私には「わかるよ」ということさえもできず、本当に何もできませんでした。大切な人を前に私はただただ無力だと思いました。

あらゆることを試して、失望して、私が最後に望みを持っていたのが「生活」でした。精神疾患という特性上彼女の睡眠や生活リズムはとても乱れていたし、運動はできていなかったし、食事も特別意識したものではありませんでした。そうした生活の中の一つ一つの習慣の影響力を、私は信じていたので、これらが変わったら何か変わるんじゃないかと、ずっと思ってきました。

生活の中の何かを具体的に変える

「心の持ちよう」はあらゆることにおいて大切だと思います。尊敬できる人の心の持ちようを真似したいと思っていますし、心の持ちようを大切にしたいといつも思っています。

ただ、心が元気でないときに「心の持ちよう」を自分の意思で変えることがどれほど難しいか、私はずっとずっと見てきました。自分自身も、とても元気がないときに心の持ちようについてアドバイスをもらっても、なかなか受け入れなれなかった過去があります。そういった経験から、特に、心がとても疲弊してしまった人に対しては「心の持ちよう」を伝えるのとは別のアプローチで、その人を元気付けるアプローチが取りたいとずっと考えてきました。

だからこそ、料理教室を始めました。料理する、食べる、という生活の中の具体的な行動にアプローチできると思ったからです。料理や食べることでなくても構いません。身体を動かすことだったり、生活のリズムだったり、衣類や身の回りのものの選び方だったり、具体的な何かが変われば、きっと私たちは変わるはずです。
もちろん、生活習慣を変えることの難しさも重々承知しています。でもこれは元気のない人にはもちろん、健康な人にとても大切なことだと思っています。

生理学の言葉でホメオスタシスという言葉があります。
私たちの身体は生きている限り、体の中の環境:温度やpH、浸透圧を常に一定の範囲に保ち、必要な酸素や水、栄養が満たされるように取り込み、不要になった老廃物を速やかに排出しています。取り込まれた栄養から私たちの細胞は生まれ変わり続けています。私たちの体の中はこうした流れの中で、一定の状態を保っています。このように常に生まれ変わりながら(=動的)、生命維持のために身体のあらゆる機能が保たれる(=平衡)仕組みのことをホメオスタシスと言います。

あらゆる生理学の教科書の一番初めの章に登場する言葉です。
大学でこれを学んだとき、私は本当に感動しました。
私たちの身体の個々の細胞や器官は、互いに協調しながら、この動的な平衡状態を保っています。様々な情報をフィードバックする機能があり、一定の状態を外れるような異常が起きたらそれを感知して、元に戻そうとする機能が備わっています。つまり、身体は生きている限り、元気になる力を持っているのです。

どんなに元気をなくしても、身体が本体の機能を発揮できれば必ずまた元気になれるはず。生活の中の一つ一つの選択は、私たちの身体に小さくとも影響力を持っていますから、その一つ一つを自分のためを意識して選ぶことは私たちの身体を応援することに他なりません。私は、この自分の身体を応援するような選択がしたいと思います。
私自身もまだまだできていないことがたくさんあります。本当にとてもたくさんあります。でも意識できていなかったとしても、サボってしまったとしても、身体は絶えず生まれ変わり続けているということをいつも思い出し、いつでも新たな気持ちで選択を続けようと思います。

もし、元気が出ないときがあれば、一緒に生活の中に目を向けてみませんか。無数の小さな選択、どれか一つだけでいいから、自分のためを意識して選んでみませんか。きっと何か変わるはず。

もっと言うならば、戻るはずです。(みんなそれぞれもう本来が素晴らしいと思っているから、あえて戻ると言う言葉を使いたいと思います。)


先日、自分の活動について改めて考えさせられる出来事がありまして、初心に返って私の活動の根底にある想いを棚卸しし、考えたことを綴ってみました。
料理や食事の観点はもちろん、日常の中での身体の使い方や生活リズムの観点からの発信も何か少しずつできたらと考えています。

読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。
皆さまの元気をいつも願っておりますので、亀の歩みではありますが、頑張ろうと思います!

季と和