「入り抜き」液晶タブレットとのシンクロ率を上げる
液晶タブレットを購入してそろそろ一ヵ月になる。
液晶タブレットを買った事を友人に話した。
その友人も絵を描く人である。しかし、彼は極貧の為、パソコンも持っていない。アナログだけで絵を描く人なのである。
彼の絵を描く道具は付けペンである。
最初はボールペンで描いていたようだが、私が自分の使わなくなった付けペンを一式贈与したのである。ついでにクロッキー帳もプレゼントした。
それから、彼は付けペンで絵を描く喜びを覚えたようで、どんどん描いた絵を人に披露するようになった。私も披露された一人だ。
彼は楽しんで描いているようで、めきめき上達している。
私の描いた絵も酷評するぐらい、自信も付いてきている。
酷評された時はとても悔しかった。描画歴(と言っていいのか分からないが)は私の方が格段、長いし、美術大学に入学する為の技術、漫画同人誌を作る為の技術がかつて自分には有ったと自負していたからだ。彼は特に描画歴は無いのに。
そんな彼に液晶タブレットの事を話すと、当然興味を持たれた。嫉妬もあったかもしれない。だから、こんな事を言われた。
「1年後、その液晶タブレットも僕の所に来たりして。笑」
私が付けペンを彼に贈与したように、液晶タブレットも彼に贈与する未来が有り得ると言われたのだ!これにはさすがに立腹した。液晶タブレットがいくらしたと思っているんだ。
付けペンでの描画を会得出来なかった私を彼はきっと嘲笑っているのだろう。だからそんな言葉を言えるのだろう。私が思い付きで液晶タブレットを買ったと思われてもいる。
彼は付けペンでイラストを描く際は下書きはしないらしい。鉛筆で下書きをすると、消しゴムを使う事に慣れてしまう。消しゴムは紙を傷める。紙を傷めるとペンの走りが悪くなる。ならば、付けペンで一発描きをした方が仕上がりが綺麗なのである。
彼はそういう技法を得意そうに言う。私は悔しいから思う。それを極めるのなら、クロッキーを死ぬほどしなければいけないだろう。ストロークの練習が必要だし、デッサンとかそういう世界を捨てなければいけない。そんな技法では漫画は描けない…。
でも極めたら、優れたイラストを描けるようになる技法だとも思う。
負け惜しみだから私はこういう意見を彼に全ては言わない…。
私は画塾時代、消しゴムで絵を描いていると言われた程、消しゴムを多用して絵を描いてしまう人である。ストロークも未熟だし、デッサンも未熟だ。時間をかける事でしか、勝負出来なかった。
そういう反省もそこそこにして、いざ、液晶タブレットと格闘して一ヵ月。今は「入り抜き」と言う設定を弄り始めた頃合いである。「入り抜き」とはペンの描き始め(入り)と描き終わり(抜き)の度合いを好みの度合いに調節する機能だ。クリップスタジオ内の機能である。
この機能は明らかに、デジタルをアナログに近づける機能である。液晶タブレットでの描画を進めている上で、線に不満が出てきたのだ。付けペン独特のタッチにそんなに固執していなかったが、上を目指す為には必要を感じた。
今は下書きやアタリを付ける所から全てデジタルでやっている。下書きに消しゴムをかけても紙が摩耗する心配は無い。それが、ただただ嬉しい。私が求めていたのはこれだ。
しかし確かに、私のように描いていては時間がかかってしまう。それは良いとは思えない。けれども納得の行く線を描くのに、今は時間の事を考えない。それよりも大事にしたい事がある。
私はまず、アマチュアの一流になりたい、と考えている。
おこがましい発言だが、これでもプロの世界を夢見ていた身である。現実を見据えて出した考えであり、モチベーションが下がらない為の策なのだ。
入り抜きを調節している自分は明らかに付けペンの美しさを求めている。アナログ作業に白旗を上げた自分だが、完全に白旗をあげきった訳ではない事を高らかに声をあげたい。液晶タブレットを完全に我が物にしたい。シンクロ率を100%にしたい。私は何も諦めてはいない。
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