【三重伊勢の旅①】めはり寿司と伊勢うどん
弾丸一泊三重伊勢の旅〜という漢字だらけの旅に出た。旅を決めたのは出発の前日、目的は潔く伊勢神宮参拝と伊勢うどんを食べる事という極めてシンプルなものだ。いつも思いつきで突然旅に出るから、ロクな下調べもしてない。
伊勢までは愛媛からだと車で7時間程はかかる。家の用事などで出発が夜23時という、のっけから過酷な旅立ちだった。眠気でクラクラしながら大阪に辿り着き、SAで2時間仮眠。それでも朝9時には目的の伊勢に到着した。それにしても深夜でも沢山の車や人、開いているお店があるもんだ。普段アホ面して寝ている時も日本は動き続けているんだなと、妙に感心してしまった。
伊勢神宮の参拝は初めてだ。市内のお互いやや離れた場所に伊勢神宮の外宮と内宮がある。まず外宮に参拝してから内宮に行くのが正式なルートらしい。それではとまずは外宮に向かう。もう夏休みの観光シーズンでやや混み合っていたが、それでも朝の時間のためか駐車場にはすんなり入れた。
鳥居を一歩くぐると、参道は木々の木陰となり涼しい。俺は神社の木を見るのが好きだ。この広大な大地にズドンっとブッ刺したような巨大でまっすぐな木が、天高く伸びている。まるで「生きてるぞ!生きてるぞ!生命とは俺のことだ!」と身体中で表現している様だ。よくある生き方だのなんだの偉そうな本よりも、俺には説得力がある気がする。などと、やや文学的なことを考えてみようとするが、残念ながら俺の小さな脳みそではここまでが限界だ。それでも凄いエネルギーを貰っている“気”がする。
外宮を参拝し、次は内宮に向かった。駐車場はすでに満車の所もあった。外宮と違い駐車場から内宮までは離れていて、その間におはらい町とおかげ横丁という土産物屋やら食い物屋が軒を連ねる、石畳の通りがある。
目指すは内宮、いざ出陣!
誘惑してくる飲食店には脇目もふらず、キリッとした顔つきで威勢よく歩き出した。…が、すぐに勇ましい気持ちは消え、俺の目はヘナヘナウルウル目に変わった。「めはり寿司」と書かれた看板と、鮮やかな緑色の葉に包まれた丸い食い物に目が釘付けとなった。
躊躇なく店に入り、店のおばちゃんに声をかける。高菜の葉で包んだ握り飯とのこと。「目を見張るほど旨い」が由来らしい。何の捻りもなく、名前から俺の好みだ。後から調べたら、三重だけじゃなく和歌山や奈良でも食べられているそうだ。もともとは山仕事や農作業の弁当とのことだった。
プラのパックに入っていたのを、おばちゃんが食べ歩きできるようラップに包んでくれた。ありがたい。さっそく頬張る。手に持つと、その艶のあるピチピチな美しさに惚れ惚れする。そこらへんのアイドルじゃ敵わないよほんと。
一口かぶりつく。
おいおい。何でこんなに高菜がパリッとしてるんだ!パリッとしてるのに、しっとりしている。しっとりしているのに、パリッとしている。ようするに高菜がシャッキシャキなのだ。ご飯は酢飯じゃなく白米。そして握り飯の中心には本来は主役のおかかが、奥ゆかしくちょこんと座っている。あくまで主役は高菜さんなので、と言っているようだ。
しみじみ旨い。こいつを頬張り、茶でも飲み、山か河でも眺めてりゃ日本から犯罪なんて無くなるよほんとに。いつか “握り飯を頬張り日本から犯罪をなくす会” なんてのをやりたい。
めはり寿司を頬張り、ニタニタ顔で歩いていると、「今から開店します!」の声が。今度はなんだよ!見ちゃいかんと思いながら、チラ見。はい出ました、伊勢うどん。吸い込まれるように入店。伊勢神宮まで遠過ぎだろ!じゃなくて誘惑が多過ぎだろ!なかなか辿り着かない。
実は昔、伊勢ではないが、伊勢うどんを食べたことがある。そのとき、あー旨い!っと唸ったのを覚えている。
東京育ちの俺は腹ペコの成長期、通学に使っていた駅ホームの立ち食いそばと、駅前の富士そばをどれだけ食ったか分からない。今は色々な立ち食いの店があるが、俺が食べ盛りの頃の立ち食いそばといえば、“富士そば” だった。若い頃は蕎麦よりうどん派だったから、もっぱらコロッケうどんとかちくわ天うどんを食っていた。もちろんカレーや牛丼のセットでね。汁は黒っぽい醤油ベース。俺は今でも醤油ベースの汁が一番好きだ。
入店したら、メニューも見ずに伊勢うどんを注文。すぐに着丼した。これだよ、これこれ!太めの麺に真っ黒な醤油ベースの汁がかかっている。極めてシンプルな見た目の中に、俺には何の飾り付けもいらないぜっ! っという誇りを感じる。
よく混ぜて、ひと口目から多めにズズッと頬張る。
旨い。麺はもっちもちで、コシはないのに噛みごたえのある。そして、麺によく絡んだ汁の旨いこと。絶妙な塩加減と甘さ。めちゃくちゃ醤油のいい香りがする。幸せすぎる。2分で食い終わった(ホントだよ)。大盛りにすりゃよかった。全国、ご当地うどんは数多く存在するが、伊勢うどんは唯一無二だね。旨いうどんイコール “コシ” といった日本中に蔓延る思い込みに、真っ向から勝負を挑んでいる素晴らしいうどんなのだ。
もう一杯頼もうかと本気で迷いながら、よし今度こそ真っ直ぐに内宮を目指すぞ!と決意を新たに店を出た。
〜②につづく〜
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?