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3.製茶業の事業承継について
さて、今回の3回にわたる話は、園主のこれまでの人生について、知ってもらう内容でした。
今日は、園主が北岡園を引き継ぐにあたって、いろいろ経験してきたということを書いていきたいと思います。
製茶の業界にも「青年部」というものがあり、そこで交流が産まれます。参加メンバーの多くは、園主と同じく『その会社に生まれ、いずれアトツギとして事業を承継する予定の』人が多く加盟しています。
そこでは、様々な悩みの相談もあるそうです。
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プレッシャー、家業を継ぐことへの葛藤(自分の夢などがある人もいるでしょう)、昔からいる従業員をどう一緒に働いてもらっていくか、、、
そもそも、お茶業界としては【抹茶ブームではあるが、肝心の「日本茶」を飲んでくれる人が年々減っている】という大きな課題があります
↓参照
消費されるのはペットボトルのお茶ばかり。
もちろんお茶の生産者からするとそれでも大きな売り上げにはなりますが、利益率は決して高くありません。そのため、三重県などでは茶農家を廃業する人も出てきています。お茶業界全体で取り組むべき課題ではありますが、製茶業の方も、消費の減少でかなり厳しい状況です。
抹茶は、多くはスイーツなど加工品向けに消費されます。
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各産地も力を入れて、新しい需要を獲得しようとしております。京都でも、碾茶工場が近年多く設立されています。
参照
しかし、この状況下において、スイーツなどに力を入れていくことが正しいのか?お茶を守り続けてきた歴史を知る人々だからこそ、その悩みは深いのです。
実は、京都でもとあるお店がスイーツに大きく力を注いだ結果、経営に失敗し廃業するという事案も発生しています。
一方で、和紅茶などの販売に乗り出して成功した会社もありますが、、、
古くからの業界なので、中小企業がとても多いです。大きな資本を持っている会社ばかりではありません。(そのため、買い付けの多いこの時期はキャッシュがどんどん出ていき、、、もし何か販売に大きな狂いが生じれば大変になります。新しい投資などをするようなこともなかなか難しいです。)
広報の中の人は、かつてお酒業界に深いかかわりがある会社にいたことがあります。
日本全国に酒蔵は1000以上ありますが、その多くは中小企業。そして、近年日本酒消費は減っており、担い手不足でもあります。地方では人を雇うのも一苦労。吟醸酒など、海外でも人気の出てきた商品を大量に作るにはそれ相応の設備投資(温度管理設備の導入、作業の機械化による効率化、保管の冷蔵庫の増強などなど、、)なども必要ですが、そこまでする体力もない(聞いた話では、事業承継したら借金が数億円あることが判明した会社も、、、)
日本全国どこでも事業承継では多くの課題があるのです。
製茶業の一つである弊社北岡園では、スイーツなどをほとんど扱っていません。少なくとも自社で抹茶が作れない(石臼などで粉にする工程ができない)ので、自社産の抹茶は扱いがありません。
一つには、やはりお茶は「淹れて飲んでほしい」という想いが大きいからです。産地ごと、農業者ごとのお茶の魅力を引き出し、お客様が楽しんでもらえるように、今まで培った感覚でブレンドして、最良の商品に仕立てていきたいと思っております。
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もう一つには、やはり、自社の歴史をしっかりとつなぐためには、今のスタイルを変えない方がいいという想いもあります。
青年団に園主が入ったとき、園主の父や叔父が今まで茶審査協議会で優秀な成績を残してきたこともあり、非常に期待されていたそうです。今から思えばそれもプレッシャーだったのでしょうが、そういう北岡園としての歴史をつなぎたいという想いが、このスタイルを護りたいという原動力だと思います。
とはいえこれから先の世の中が見通せない状況ではあります。変わるべきところと変わらないで行きたい部分の葛藤はこれからも続くと思います。