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デザイン会社のマネージャーが目指す理想の評価制度とは?

この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2018の22日目の記事です。

みなさんの会社では、いわゆる年次評価というものを実施していますでしょうか?年度や半期単位で目標を定め、評価の際に目標の達成度合いによってスコアがつけられ、人事評価に反映されるというものです。

今回はデザイン会社において、年次評価ではなくリアルタイムにフィードバックしながら評価することが強く求めれれているというテーマで話したいと思います。

従来の年次評価とは?

そもそも年次評価とは、年度や半期単位で目標を定め、その期間が終了した時にメンバーとマネージャーで振り返りを行いスコアをつけます。その結果、人事評価が決まり、給与に反映されます。
普段目標についてメンバーとマネージャーが触れることはあまりなく、途中で修正する機会はほぼありません。また、目標はトップダウンで落ちてくることが多く、個人起点で目標を立てるというよりは、外発的な動機から目標を立てることが多くなります。近年このような年次評価が企業にフィットしなくなってきています。

年次評価がフィットしない理由

現代のビジネススピードに合わない
ビジネススピードが早くなったため、1年後や半年後の目標設定では時間軸が長すぎます。半年後や1年後にどういう状況になっているか、何が起こっているかわからない不透明な時代において、目標は立てづらくなっています。特に我々がいるようなベンチャー業界では、数週間単位で目標を設定することが求められる場合もあります。また、目標の優先度は常に変化しているため、一度立てた目標を変えないというのは無理があります。
Goodpatchの事情を言いますと、私がいる事業部はクライアントワークをやっているため、半年後にどんな案件にアサインされているかわからないので、目標をたてづらいという事情があったりします。

個人のモチベーションが重要な時代において、モチベーションを下げる要因になっている
現代において、個人のモチベーションを高め、企業と社員間のエンゲージメントを意識する必要があることは言うまでもないですが、年次評価のための目標設定がモチベーションを下げる要因になっています。
個人のモチベーションを考えると、目標は内発的な動機からくるものを設定した方が高くなります。自分から自発的にやりたいと感じたものなので、当然モチベーションは高くなります。
しかし、従来の年次評価における目標はトップダウンで落ちてくることが多く、すでに決まっている具体的な目標を実行させられるといった、外発的な動機から目標を立てることが多くなります。これではなかなか個人のモチベーションを高めることが難しくなります。

デザイン会社で特にフィットしない理由

上記のような理由からいわゆる年次評価を廃止している企業が増えてきています。世の中の流れ的には当然かと思うのですが、デザイン会社は特にフィットしていないと私は感じています。理由はデザイン思考というキーワードが強く影響しています。

デザイン思考とは、デザイナー的な思考と捉えることができ、例えば以下のような思考や行動を指しています。(具体的なデザイン手法も含めてデザイン思考と言う場合もありますが、個人的にデザイン思考はデザイナーのスタンスやマインドを指していると理解しています。)

・ユーザー視点で考える
・問題の本質を探る
・自由な発想からスタートする
・一つの問題に対して複数の解決方法を考える
・素早く視覚化する
・シンプルにする
・プロセス(観察、アイデア創出、プロトタイプ、検証)を反復する
・チーム間のコミュニケーションを重視する

この中で「プロセスを反復する」と「チーム間のコミュニケーションを重視する」の2点に注目したいと思います。

プロセスが反復するということは、プロセスがウォーターフォールではなく、アジャイル化することになります。そうしないと顧客のニーズについていけない訳ですが、仕事のプロセスがアジャイルになっている以上、評価のプロセスもアジャイルにしないと整合性が取れなくなります。年次評価はウォーターフォールのプロセスを採用していた時代にはフィットしていましたが、アジャイルな動きが要求される業界にはフィットしなくなったと言えます。

デザイン思考においては、「チーム間のコミュニケーションを重視する」ことが強く求められます。「共創」というキーワードで表現されることがありますが、さまざまな視点を持ったメンバーで「共創」することでイノベーションのタネが生まれ、また、さまざまな人を巻き込むことで、会社間や部署間の連携などがうまくいき、実現性が高まります。そのために心理的安全性を高める必要がある、という話はよく聞くことではあります。
つまり、お互いがやることをサポートできる環境や心理的状況を用意しておく必要があります。そのためには、お互い何をしたいか・目標としているかをメンバー間でオープンにし、チームメンバーでサポートし合うことを評価するような仕組みが必要になります。
従来の年次評価では、目標をオープンにすることはなく、また他人の目標をサポートすることが自身の評価に繋がることもあまりないため、「共創」が生まれにくい、もしくは阻害する要因になっていると言えます。

上記のような理由から、デザイナーを抱えるデザイン会社こそ従来の年次評価はフィットしていないと感じています。

では、どうすれば良いのか?

さきほど述べたような課題を解決するにはどうすれば良いのでしょうか?取り組むべき解決案を3点あげたいと思います。

リアルタイムで目標の設定と実施と振り返り・フィードバックを行うこと

半年単位や年次での振り返りでは当然遅いため、リアルタイムでかつ短い期間でのコミュニケーションが必要になります。
Goodpatchでは、1on1を実施しています。週次や隔週で時間をとり、様々なテーマで対話をしているのですが、その中で目標の設定や実施・振り返りを行っています。マネージャーはメンバーのキャリア開発を支援するのが役割だと考えています。

目標の設定は内発的な動機を重視して立てること

内発的な動機からくる目標はモチベーションを維持しやすいというのは先ほど述べましたが、マネージャーはメンバーとの対話を通じて目標設定の支援をする必要があります。
Goodpatchでは、OKRに基づいた目標設定をしています。OKRが何かというのはここでは割愛しますが、個人目標の達成にフォーカスするように設定しています。個人起点で目標を定め、マネージャーは会社の目標とうまく紐づけるのが役割だと考えています。

共創を意識・評価できるような仕組みを用意すること

デザイン会社では特に「共創」は意識すべきだと考えていますが、それを普段から意識できるような環境作りは重要だと考えています。
Goodpatchでは、OKRで目標設定していると述べましたが、目標はメンバー間で共有されています。お互いに目標を理解しているからこそ、他社貢献による「共創」が生まれやすいと考えています。
また、Goodpatchには5つのValueがあります。その中でも、「最高のチームのつくり手になる」「領域を超えよう」の2つは「共創」を意識できる良い指針になっています。

ただし、これらの解決案を実行していく上で注意すべき点があります。

マネージャーのピープルマネジメント力がより求められるようになる
これらの解決案を実行するためには、マネージャーがメンバー1人1人のことを深く理解していることが前提になります。1on1などを通じて、普段からの質の高いコミュニケーションを行っている必要があります。
評価の際には、どういう点を評価しているのか、もしくは評価していないのかということを、マネージャーが主体性(自分の言葉)で説明し、それに対してメンバーが納得していることが重要です。
ただ、マネージャーの力量に依存するだけでは限界があるので、マネージャーのを支える人事制度の仕組みを人事部門が整えていく必要もあるかと思います。

メンバーの主体性がより求められるようになる
メンバーの内発的な動機を重視するということは、メンバー自身がそもそも自分の価値観や何に対してモチベーションが上がるかということを理解していなければならなくなります。自分のWillが何であるか明文化し常にアップデートしていく姿勢が求められます。

まとめ

今後は年次評価ではなく、リアルタイムにフィードバックしながら評価する企業が増えてくるでしょう。ただ、制度や仕組みを取り入れること自体は簡単にできますが、運用して改善していくことは難易度が高く、私もその壁にぶつかっています。
どんな時も大切なのは、メンバーに真摯に向き合うことだと思います。メンバーに関心を持ち、質問を投げかけ、傾聴することでメンバーの価値観や内的な動機を推測し、その価値観に合う目標やミッションを一緒に考えていくことだと思います。
マネージャーとしてメンバーに向き合っていると、UXデザイナーの能力が磨かれている感覚になる時があります。UXデザインで言うところの、ユーザー理解のフェーズと同じことをしているということにある時気づきました。1回2回のユーザーインタビューではなく、何年も同じユーザー(メンバー)にインタビュー(1on1)を行い価値観を理解することの奥深さを感じ、UXデザイナーとしても成長できていることを嬉しく思います。
マネージャーは大変な役割ではありますが、メンバーの成長を喜びに感じることができ、かつ自身の人間としての成長にも喜びを感じることができる素敵な役割だなと思います。
最後に私がマネージャーの使命として考えているミッション・ステートメントをご紹介して2018年を締めくくりたいと思います。

メンバーの「人間としての成長」に責任を持つこと

そのためにはまずは自分が成長すること、成長し続けること、成長したいと思い続けること。その後姿を見てもらうことで、メンバーが成長したいと思うきっかけをつくること。メンバーが自発的に成長したいと思ってくれれば、後はその成長を最大限支えること。
そうやって、メンバーの「人間としての成長」に責任を持つことが私のミッションステートメントです。

みなさま良いお年をお迎えください!

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