のらねこ日記 ㊵
お年寄り
ポン太さんは、18才になり父と同い年になりました。猫の18才は人の88才です。
ある日、ポン太さんの歩きが突然おかしくなりました。
左の前足がうまくつけず、足の甲でぐにゃっと着地しているのです。よく見ると後ろ足もよく動かせないようで、父は、慌てて獣医さんに連れていきました。
脳梗塞?による左半身麻痺ではないか、とのことで、確かに、よく見ると左の瞳の大きさが右と違って、明暗に反応しませんでした。
それから、父は毎日ポン太さんを獣医さんに連れていきました。
これまで父は、手提げタイプのキャリーケースを、荷物運び用のキャリーカートに、くくりつけて、猫さんたちを運んでいました。
くくりつけるのがいちいち大変そうなので、乳母車タイプのペットキャリーを買ってあげようとしましたが、お年寄りが押しているシルバーカートみたいだから嫌だと、父は頑なに拒んでいました。(すでに年寄りなのですが…)
でも、毎日は大変そうなので、リュックにもなるペットキャリーを買ってあげると、父も渋々使うようになりました。
通院のかいあって、ポン太さんは、まあまあ普通に歩けるまでに回復しましたが、2階に上がらなくなりました。
階段が昇れなくなったのでしょう。
たまに、父が抱っこして2階に連れていくと、ベランダから裏のお宅の駐車場を眺めていました。かっての自分の領地とか思って眺めていたのかもしれません。
このまま、どんどん衰えていくのかな、と思いきや…
ある日、父はうっかりして、ポン太さんの尻尾をおもいっきり踏んでしまいました。驚いたポン太さんは、物凄い勢いで尻尾を引き抜いて逃げました。
その勢いに足元をすくわれる形となった父は、バランスを崩し前のめりに転倒してしまったのです!
しかし若い頃、柔道黒帯だった父は、とっさに受け身をとることができ、大事には至りませんでした。
でも、こんなことでひっくり返ってしまった自分が情けなかったのか、
「ポン太に投げられた!猫に一本とられた!」と嘆いていました。