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「ダンジョンズ&ドラゴンズ」感想/想像力の向こう側の世界

中高生の頃、TRPGのサークルに入っていたことがある。メンバーは似たような年頃の者から社会人までおり、休日に集まって公共の会議室を借りて遊んでいた。オンラインセッション全盛の今しか知らない人には想像できないかもしれないが、当時はTRPGを遊ぶためには各々日時を調整して実際に顔を合わせるしかなかったため、こういったサークルがあったのだ。
当時は大「グループSNE」時代。なかでも私が一番多く遊んだのは「ソード・ワールドRPG」だったと記憶している。(2.0へ改訂され今も遊ばれているとのことで息の長いゲームだと思う)
今回取り上げる「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の原作となっているゲームは残念ながら遊んだ経験が無いのだけれども、D&DといえばRPGの元祖とも称されるほどの名作だ。恥ずかしながらこの映画については事前に全くマークしていなかったのだが、私のTwitterタイムラインではこのゲームのファンだけでなく映画ファンまでもが揃って絶賛していたこともあって一気に興味を惹かれることとなった。

結果から言えば観に行って正解、それも大当たりだった。
吟遊詩人の口ずさむ歌、猥雑だけれど活気あふれる酒場、美しい麦畑といった、あの頃憧れ頭の中で想像したファンタジーの世界がスクリーンいっぱいに広がっていたことがとても嬉しかった。

登場人物はみな一癖あり決して善良とは言い切れない経歴を持っていたりもする。けれどもそんなところがRPGのキャラメイクを彷彿とさせる。たとえば悪人なら悪人なりに魅力的なキャラクターを演じることが可能なのがRPGという遊びだからだ。
この作品において、たとえば主人公のエドガンはもともと正義を執行する側の立場にあったけれども、妻の死をきっかけに一転、盗みを働き生計を立てるような吟遊詩人に身をやつすことになる。そもそもこの映画は彼が収監されている牢獄のシーンから始まるのだ。
しかし半ば盗賊のような彼に魅力がないのかといえばとんでもない。むしろそうならざるを得なかった事情だったり、酒場ではちゃんと会計して出る・むやみな殺生をしないといったふうにさりげなく描写される信条、そして一人娘に対する愛情といった要素でしっかり肉付けされた、とても人間らしいキャラクターだったと思う。彼の相棒であるホルガも同様に、外見通りにたくましく頼りになる姉御かと思えば、実は過去には切ない失恋を経験しいまだにそれを引きずっていたり、また単純な頭の良さとは違う生きるための賢さを兼ね備えていたりと様々な顔を持つ女性として描かれていた。
特にこの男女バディについてはエドガンの娘であるキーラを交えた三人の擬似家族のような関係が本当に良かった。ラストのエドガンの選択も、それまでの長い年月の間で培われてきた二人の信頼関係を思ってちょっと泣けてしまった。中年すぐ泣く……。
道中でスカウトした仲間であるサイモンとドリックも含め、彼らが紆余曲折を経て一つのパーティとしてことを成し遂げる様は見ていて本当に清々しい気持ちになった。やっぱり娯楽作品はこうでなくては!

ドリックといえば逃亡中のシーンで目まぐるしく姿を変える演出が素晴らしく、またドラゴン(あんなドラゴン見たことない!)や脳みそのクリーチャー、ここ・そこの杖を使ったワームホールのギミックなど、真正面からファンタジーという世界を料理しようという製作陣の気概をビンビンに感じられた。
あの頃の私たちが見たかったものを今の技術が実現してくれる。大変素晴らしく、心底嬉しいことだなあと思った。

もしもあの世界に私のキャラクターを住まわせるなら、どういう感じにしようか?

そうワクワクさせてくれるような、正真正銘の「RPG」を扱った作品だった。

ちなみにトレンド入りも果たしたセクシーパラディン、予習しないで行ったのに一発で「こ、こいつか!」と分かってしまったのが面白すぎた。確かにセクシーという形容はどこか上品な感じもあって、もはやそれ以外にないな……と思えてしまったのがすごかった。

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