「あおぞら図書」
佼成図書館
今井里枝
立正佼成会附属佼成図書館は1953年(昭和28年)7月1日に「先師先哲の意思を図書に依って認識をせしめる無言の教化、学校に行かずとも勉強ができる施設」として開館しました。1967年(昭和42年)1月からは、事業方針が宗教書を重点とする宗教専門図書館となり、以来、宗教関係の書籍、遂次機関刊行物を収集保存し、その提供を行っています。現在、図書約19万冊、遂次刊行物約1800タイトルを所蔵しています。
令和5年7月1日、佼成図書館は開館70周年を迎えました。その日にさきだつ約半年前から「この周年を記念し、予算をかけず、宗教専門図書館としての佼成図書館の魅力を知ってもらい、利用していただける催しはできないだろうか」と思案に明け明け暮れていました。ある日、図書館長から関係人口の話や月刊誌『ソトコト』に記載されていた「川の図書館」のことを知らされたのです。
「川の図書館」は、中学生が中心になって家族で運営されています。多摩川の河川敷で日曜日ごとに私設図書館を開き、そこで自由に本のやり取りをすることで、地域の人の憩いの場、繋がる場になっているのです。私は「そうだ、本の自由なやり取りなら佼成図書館でもできるかもしれない。地域の人たちとの繋がりもできるかもしれない。やってみたい。やってみよう」という思いがわき起こってきました。そして「あおぞら図書」と命名しました。
『佼成図書館』は宗教専門図書館として宗教書関連の本を多く所蔵しています。そのなかには貴重な書籍もふくまれています。そのような理由から利用者の年齢も15歳以上とし、図書館に登録されている資料のみが閲覧でき、そのために利用者登録が必要という規定が設けられています。
「あおぞら図書」では、全年齢を対象とし、未登録の本も自由に利用でき、持ち帰って読むことも可能にしました。そのほか宗教書だけでなく小説、絵本、児童書、秘蔵本など幅広く提供するだけでなく、読み聞かせや折り紙遊び、手芸などを実施、Nゲージ(鉄道模型)の常設展示、季節ごとのイベントも実施することにしました。
第1回目の開催を令和5年5月27日と決め、2月から準備が始まりました。図書館設立以来初のイベントですので経験値がありません。実施場所を決めるにあたっては図書館の周囲2か所で定点観測を行い人通りの調査をし、その結果、図書館の西側にあるスペースと、図書館の中庭、視聴覚ホールで開催することにしました。案内の掲示や、のぼりの設置、毎月開催のチラシを作製し、近隣の各町会やお店にチラシ掲示を依頼して開催のPRに努めました。
そうして「あおぞら図書」が開催されました。「地域の方たちが来てくれるのかなぁ?」と、とても不安でしたが、5、6組の親子が来てくれ、読み聞かせに参加してくれたり、折り紙遊びをしてくれたりと、スタッフ側も楽しい時間を過ごすことができました。
第2回目から第4回目も5、6組の親子が来てくれました。子どもたちは未就学児から小学校低学年ぐらいの児童が多く、絵本やNゲージや折り紙などを楽しみに来てくれるようになりました。なかには毎回来てくれる親子や、通りすがりに入ってきてくれる人、チラシを見て来てくれるかたなど様々ですが、小さな子どもを連れた親子が、絵本を読んだり、読み聞かせを聞いたり、楽しく飛び回って遊んでくれていることを目の当たりにし、「図書館に親しんでもらえる」「本に親しんでもらえる」「この日に来れば、誰かがいていっしょに遊べる」「人と人とが繋がっていっている」ことを実感しました。
とはいえ「あおぞら図書」には、赤ちゃんから老年まで幅広く繋がり利用してもらいたいという夢があります。まだまだ生徒や学生や大人の方々までには浸透していないのが実際です。これから取り組むべき今後の課題と受け止めています。
第5回目は、あいにくの空模様でいつものスペースでは開催が難しいと判断し、スタッフで話し合って急きょ図書館正面玄関前で開催しました。階段の下に本を並べ、テーブルや椅子を置き、階段で腰を下ろせるように人工芝を用意しました。スタッフの発案で、自分のお薦めの本にチョットした感想を書いた栞を挟んでみました。いつもと開催場所が違うということで不安がありましたが、意外と本を手に取って読んでくれる人や「長年近所に住んでいるけど、こんなのは初めて」と、しばらく腰を下ろして会話を楽しんでくれる人、海外の方々も足を止めて下さり、思い思いの会話を通して様々な方たちとふれ合える時間が過ごせました。開催後には子どもたちが片づけを手伝ってくれたりして、チョットした手応えを覚えました。
最後に、「あおぞら図書」では「子どもたちに自然にふれてもらいたい」との思いから、ミニミニ菜園を行っています。「あおぞら図書」に来てくれたお子さんが、苦手だったピーマンを自分で採って食したところ、「ピーマンが食べられたよぉ!」と嬉しそうに話してくれました。こんなあたたかいふれ合いが続けられたらと願わずにはいられません。まだまだ現在進行形の「あおぞら図書」ですが、「だれでも自由に利用できる」「ここに来ればだれかがいる」「みんなが集まれる場所」をコンセプトに、さまざまなイベントを企画し実施していく予定です。
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