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『一文物語集』をプレゼントしたい
何冊あってもいいな、人にあげられるし。そんな本がある。あまり本屋では見かけない。でも、「そういうもの」を求めている人の元に、いつのまにあらわれるような、あるいは磁石みたいに、引き寄せられてしまう本。
↑現在品切れらしく高値がついてしまっている!
140文字どころではない。たった一文で、宇宙みたいな広がり、深さがある。研ぎ澄まされた言葉たちが並んでいる。
帯にも「可笑しく、哀しく、怖くて、不思議な、わずか1文の小宇宙」とある。おかしさ、かなしさ、こわさ、ふしぎがごちゃまぜになったものが世界であるならば、世界そのものを一文で表しているとも言える。
この本は、友人から勧められた。それからときどき、まるで本のページを開いて、そこにあるメッセージを受け取る占いみたいに、使っている。
使っている、というのではないな、楽しんでいる。
たとえばいま開いたら、
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ひとりでとぼとぼ歩いていると、いついのまにか体が分身を始めて、道いっぱいの大群衆になってしまった。
とあった。こんな感じで333文収録されている。
こんな文、どこかの海外作家がよく書いているような気がする。ナンセンスとか不条理とかってかたにはめられて紹介されたりして。日本にもいるな。幻想文学とかってくくられて。
でもやはり、独特で、世界に対して違和感を感じている人、慣れることができない人に、慰め以上のものを与えてくれるのだと思う。
復刊か増刷、してくれないかな。何冊か買って、こういうスタイルや世界が好きな、こういうものを求めている人に、プレゼントしたい。
著者は演出家、ダンサーとして国際的に活躍されているアーティストの飯田茂実さん。この本は、25歳のときの作品。
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墓石が空を飛んでいる。
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