見出し画像

僕が一番推しているバンド、ヤング・アンド・フレッシュを紹介します(あるいは日活青春もの礼賛)


熱い!! (『二人の銀座』より)

はじめに(日活青春ものに辿り着いてしまった)

2023年春、花見もせず旅行もせず、一番いい季節のなか、何をしていたかというと、映画を観ていた。スーパーマリオでもコナンでもなく、昭和の日本映画である。
辿り着いたのはラピュタ阿佐ヶ谷でやっていた、音楽映画特集。日曜と水曜にプログラムが変わる。よって週2〜3ペースで阿佐ヶ谷通いをした。川島雄三特集からずっとこの調子だったので会員カードのスタンプも貯まる一方だ。マジでどうかしてる状態。しかしやめられない。ほとんど通勤じゃねえか、と自嘲しながら新宿で中央線を待つ。
この、今年から始まった名画座通いのおかげで、鬱々とした日々をやりすごすことができたような気がしてならない。90分ほど、令和の時代ではなかなか見かけることのできないキャラクターや物語に浸ることで、いま現在の気分をリセットしてきた。とかく現代は生きづらい。映画の中じゃこでもタバコぷかぷかふかしているし、時代遅れ(当たり前だ)の価値観をふるっているが、それもまた、いまの生きづらさを和らげてくれた(昔がいい、というわけでは決してないです)。
さて、映画音楽、つまり歌ったり踊ったり、ミュージカル風だったりミュージシャンが主人公だったり、はたまた歌から立ち上がった物語だったりといろいろあるわけですが、ここでは日活の「バンドやろうぜ」もの(と勝手に呼んでいる)、ヤングアンドフレッシュのバンド映画をご紹介したい。だいたいアマプラにあるので、すぐに観ることができる。その青春明朗篇に、ずいぶん気持ちを和ませていただいた。きっとこれを観たら元気になる人もいるんじゃないか、ということで。

ヤング・アンド・フレッシュってなんだ?

ヤングアンドフレッシュと言うのは日活の若手俳優で組んだバンドである。メンバーはエレキ(杉山元、山内賢、杉山俊夫)、ドラム(和田浩治)、ベース(木下雅弘)の五人。映画に出てくるのは杉山俊夫さんを抜かした四人である。和田浩治さんは「日活ダイヤモンドライン」として石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎と並んで主役を張っていたスター、山内賢さんも青春もののスターさんである(「あばれはっちゃく」の先生でも有名)。杉山さん、木下さんは端役ながらいい味だしていて、映画を観ているとちょいちょい登場してくる。発見するとちょっと嬉しい。

以下作品紹介など。すべてアマプラで観ることできます!

「青春ア・ゴーゴー」

さて、この一連の作品の中心となるのが、バンド「ヤング・アンド・フレッシュ」である。さすがにこのバンド名、今の時代じゃなかなかお目にかからない。ダサかっこいいでは済まされないだろう。時代を感じさせられるな。日活の若手俳優たち山内賢、和田浩治らによって結成されたこのバンド、ついには映画になっちゃった、というわけだ。この作品では、吉永小百合さんとのペアで青春映画に出ていた浜田光夫も含め5名がわちゃわちゃとやっている。
小学校からずっと一緒の仲良し予備校生二人(浜田、山内)が、偶然すぎるくらいに偶然に知り合ったメンバーとバンドを組むことに。練習場所を転々としているうち、女の子(ジュディ・オング)と知り合い、彼女と共にテレビの勝ち抜き戦に参加、優勝を目指す、というのが筋。
とにかく全員気がいい連中で、お坊ちゃんである(書店取次に努めて夜学に通っている二人もいるけど、ワルなとこはまったくない)。そんなに優しすぎて大丈夫か、と心配になるほどだ。全作を通して彼らが問題にしているのは「自分達はプロになれるか」である。好きだからこそ仕事にしたいと思うのは当たり前だが、なかなか道は厳しい。

「涙くんさよなら」

ヤングアンドフレッシュは出てくるが、だからといって同じ人物というわけではない。全部シチュエーションは違う。まあ、彼らが「ボンクラ大学生」であることはおんなじ。
こちらはアメリカで父を失った少女(『青春』でも登場したジュディ・オング)が、日本にいるらしい母を探しに日本にやってくる。そして京都に向かってロードムービーとなる。父を失ったことで声を失ってしまった、という触れこみで募金を集め日本へやってきたジュディだが、じつはそれは費用を手に入れるための嘘。というわけで追われる身になっていく。最後、少々甘酸っぱいながら、せつないエンディング。そう、このシリーズでは、「プロになりたい(何者かになりたい)若者」の物語であり、「恋した女性とのさよなら」の物語なのだ。

「二人の銀座」

歌もヒットした(といっても僕生まれてないのでアレなんですが)こちら、どうもプロになるにはまだまだなバンドマン山内が電話ボックスに置き忘れられた楽譜を演奏してみたらヒットしてしまった! しかも自分で作曲したと嘘までついてしまった! 怒ってやってきた和泉雅子から話を聞いてみると、この曲はお姉さんの彼氏が作ったもの。しかし彼氏は業界を干されいまは行方不明だという。僕たちが演奏していればきっと見つかる、なんていって「お姉さんの彼氏」探しをするメンバーたちだが……。ラスト、和泉雅子さんと二人での『二人の銀座』の歌唱が素晴らしい。豊かな未来を期待させる。

「夕陽が泣いている」

 自分の能力を試すため、だめ〜なバンドのマネージャーとなりヒットさせてやる! と和泉雅子が奮闘。もちろんそのアマチュアバンドはヤングアンドフレッシュである。売れたい、プロになりたい、スパイダースが羨ましい! うまくいくかも、というところで事件発生。後半は自分探し的ロードムービーになり、メンバーたちが和泉雅子をどれだけ大事な人なのか騒ぐところは涙でそうになる。留学のため去っていく和泉。まだまだデビューは難しいメンバーたち。でも未来は明るい、まじで若さって可能性の化け物だな。そんな気持ちにさせてくれる一本。

「ザ・スパイダースのゴーゴー向こう見ず作戦」

ザ・スパイダースの初主演であり、ヤングアンドフレッシュがからんでくる内容。
海外から帰ってきたものの、全くモテないスパイダースの面々。そんな時テレビで松原智恵子が「まっすぐにきてくれる人が好き」と言っているのを聞いたものだから、横浜から東京までますぐ向かっていくことに。器物破損しながら進む一同。浮気現場も葬式も刑務所も、あらゆる場所をしっちゃかめっちゃかにしながらの大行進。
それと並行して、ヤングアンドフレッシュの山内は臆病で「まっすぐに」一軒先の松原の家まで向かうことができないで悶々としていた。
スパイダースの珍道中の合間合間で「好きな子に向かうことができない」山内を励ますメンバーたち。
おそるべきシュールな一本、というかアイドルバカ映画(とりあえずアイドルがいろんな姿・いつもの姿を見たい、という欲望のために作られた)。結果は? そして去っていくスパーダース。アイドル映画としても最高にいかれててよき。

「東京ナイト」

このシリーズは全体的にシンプルなお話で、最後に歌を歌っておしまい、というオチなんだが、この作品が、一番シンプルなものになっている。そして、筆者が思うに、一番中毒性が高い。
和泉雅子扮する京都の舞妓さんが、東京行きのトラックに乗って東京まで家出! ちょうど山内の家の運送屋のトラックだったことから、ヤングアンドフレッシュと出会う。ちょうど来週はテレビの勝ち抜き戦の決勝なのだが、ボーカルの女の子が事故に遭ってしまったところ。かわいくて歌もいけてる和泉にテレビに出ないかと誘うのだが、テレビに出てしまったら身元がバレてしまう。和泉が東京に来た理由に、恋愛をして駆け落ちをした姉に会う、ということがあった。姉が家業をつかなかったから、自分はしたくもない舞妓にさせられてしまったという。なんとか姉の居場所を突き止めたがー!
ほとんど構図は「ローマの休日」。つまり、和泉は京都に戻ることに。せっかく東京に来たのに、というバンドメンバーたち。しかし、最高の東京の一週間を胸に、新たな気持ちで京都へ向かう和泉と、忘れられない思い出ができてしまった山内それぞれの顔が、男と女の向き合い方を表現している。ある意味で、「叶わなかった恋」を描いたせつない青春映画である。

そんなわけでとにかく観てください!

こんなふうに珍しく長々と書いてしまったのですが、くさくさしているのなら、あなたがもしアマプラに入っているのなら、ぜひ観てほしい。 きっと出口が見つかるはず。昭和名画沼かもしれないけど。僕はCDも買ってしまいました。ヤンフレのグルーピーになり、人生楽しいです!


いいなと思ったら応援しよう!

キタハラ
もしよろしければ!

この記事が参加している募集