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さすがですね(ホメてない)/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(22.5.22-22.5.28)

2021年3月6日に亡くなったウィシュマ・サンダマリさんに言及すること計48回の当欄ですが、

在留資格のない外国人を収容する名古屋出入国在留管理局で6日、スリランカ人の女性(33)が死亡した。遺品となった手紙には「ほんとう に いま たべたい です」と書き残されていた。

2021/3/13朝日新聞

救済するのではなく、退去強制令を受けた者を厄介者扱いし、追い返す対象としか考えない、貴局の送還方針とその下での対応が死に至らしめたと言わざるを得ない

2021/3/12START

とニュースを紹介したのがその1回目で(2021/3/14)、今でも思い出せますが「入管がヒドいのは言を俟たないとはいえ」「アナーキストじゃないんだから彼らを“倒すべき敵”認定したってモノゴト良いほうには向かわない」って感想を持ったんです、私。
あれから60週間。

遺族は「入管が適切に対応していれば命は救えた」として、国におよそ1億5600万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていますが、原告側によりますと、国は全面的に争う姿勢であることが新たに分かりました

太字は引用者

当然想起したのは「カネ払うからおしまいね」事例で、え、もしかして、ですけど全面的にアナーキストが求められてるの?

■そんな話がひそかに進行しつつ、今週の法務大臣

【記者】
入管収容問題のケースの人権侵害事件においても、全てをこれから始まる裁判に丸投げするのではなく、独立した検証委員会を設置するよう国会に要請する対応も考えられると思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。
【大臣】(注:以下は引用者による抜粋)
入管収容に関する第三者機関が必要ではないかという御質問でしたが、現行法下でも、入国者収容所等視察委員会が存在しています。国とは一線を画した第三者機関であり、専門性・第三者性は十分に担保されているものと認識しています。そのため、これとは別に新たな機関を設ける必要性があるとは考えていません。

原文はここ

これ、前段にあるのは2020年10月、国連人権理事会・恣意的拘禁に関する作業部会というところから、日本の入管むちゃくちゃやがな。ってオコラレが発生して

当時の上川法務大臣答えていわく、そんなこたあねえよ(意訳)。

恣意的拘禁作業部会の意見は,我が国の出入国在留管理制度を正しく理解せず,明らかな事実誤認に基づくものであり,到底受け入れることができないことから,恣意的拘禁作業部会に対し,異議を申し立てたところでございます

読点は当時の公文書スタイル

当時も今も日本政府の見解は変わっていない、って意味なんですけど。
と考えればウィシュマさんの対応を誤ったと「国が」認める可能性は少ないでしょうし、譲って「名古屋入管の当時の対応が」不十分であったことを認める、が結末なのでは。

個人的にはこの件で政府がカタクナであればあるほど、その姿勢の非人道性が際立ち、え、いつから日本国民はそんな高潔になったんだ。って与党が驚くほどの反発を呼ぶと想像しているので、首を洗って待ってろ。ぐらいの感想ではあります。

■なお、法相の記者会見で話題になっていたもうひとつのトピック

クルド人を難民と認めたことは一度もありません、とは先週も紹介した通りなのですが

難民認定者数は、このようにして個別に判断された結果の積み重ねです。
なお、難民と認定できない場合であっても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可しており、トルコ国籍を有する難民認定申請者については、平成29年から令和3年までの5年間では、45人について、人道上の配慮が必要と認められるとして在留を許可しています。

「人道的配慮による在留特別許可」を出してるから難民認定してないことだけを取り上げてヤイヤイ言うな。って見解、トルコだったりアフガニスタンだったり軍事政権下のミャンマーだったり、国家vs国家の関係構築というロングスパンの対応と両立させる必要あるので、現実解ではあろうと思うものの、だったら

もっとテキパキやらない? ってなるんですけど。だって役所には結論を引き延ばすだけのインセンティブあるけど、難民申請者は「今」困窮しているわけで。

■みたいな文脈で下記の報道がなされると、つい「そうだよなあ」って反射しそうになりますわな。わかる。

ただこの件、

外務省公開情報を見てもピンと来なかったのでシンガポールの研究所の調査(回答数1,677)を見たらそっちでは「信頼できるmajor power」として本邦がUS、EUを上回る首位(中国にダブルスコア)で、つまり報道官の温度は正しいよね

ってコメントしたんですが、まず外務省がIpsos社に委託した調査

記事になっている質問の詳細はこれ。

令和3年度・海外における対日世論調査 (ASEAN)

この数値から中国のほうが日本より信頼されてる! って言うのはさすがにどうよ。と感じたのでシンガポールの研究所データを探したのね。

THE STATE OF SOUTHEAST ASIA 2022 SURVEY REPORT

つまり数字に一喜一憂するのではなく、真っ当にやっていけばいい。
ってそれ「小手先のSEOではなく人が求める情報を提供していくのがいちばん」ってウェブ界隈の常識と同じ話ですね。

■もちろん「真っ当にやっていく」ことってそんなに難しいのかしらん。って顔になるニュースは今週もたくさん

■私個人がちょっと考えさせられた記事がこちらです

先週の当欄で紹介した「元東京出入国在留管理局長・福山宏氏に聞く -入管行政の現場に関するインタビュー調査」にこんな一節があります。

一部の政治家が,物事の重要性を過小評価するための手段として使っていると感じることはあります。「不法残留」というれっきとした犯罪類型があり,退去強制事由にもなっているのに,『超過滞在』という言い替えをするわけです

これ、質問が「不法外国人(illegal migrant)」という語彙から、一回ネガティブなイメージを除いてirregular migration、undocumented immigrantなど「非正規滞在」ぐらいに言い換える動きがたとえばアメリカ合衆国では出ているが、日本ではどうですか。ぐらいなんですけど、もちろん入管の現場最前線はそんな概念のことに構っちゃいられねえ。って意外性ゼロ回答。

上毛新聞は何が言いたいんだ、と思ったんですよ。

れっきとした犯罪類型である「不法残留」という用語があるのだから、それで指して何の不都合があろうか。
って声があがるのは容易に想像できますが、そうやって、ただでさえアタリがキツくなる「対外国人感情」なんだから、「ヨーロッパの移民政策は失敗だった」ってシタリ顔で言うひとたちを現状以上に増やさないためには、メディアが使うフレーズも考えるべきでは、が私見。

欧州諸国では外国人問題や民族問題は親及び反のいずれの立場の人達からも
政治的な駆引きの道具として使われ,まともな議論も対応もなされていないように思われます。そうこうするうちに,世の中に不満を抱いた人達を甘言を弄して自らの陣営に取り込むことによって勢力を伸長させた排外主義的人気取り政党が社会の分断と政治の混乱を助長しています。それらの政党には排外主義以外何も無く,政権担当能力は皆無であると思われます。中身も現実味もない排外主義ですが,その主張が単純明快であるだけに,偶発的に支持を広げることがあり,それだけに危険な存在です。

元東京出入国在留管理局長・福山宏氏に聞く -入管行政の現場に関するインタビュー調査

■長くなったので最後は今週のその他ニュース、見出しだけでお別れ。また来週!

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