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樹木の苦手なこと、枝編 その1

前回の記事では、
そろそろ樹木の苦手なことを羅列してみようと思ったら、
例によって、別の展開をしてしまいました…

なので、今日こそはそれを。

樹木医に依頼される仕事というのは、
実はいろいろな種類があります。

私が過去に関わって来た仕事で多かったのは、
不調になってしまった木の状態を確認して、
その原因をつきとめ、
元気になるよう手助けする、
というものです。

最近は、安全性に関する仕事が増えているので、
たまにこの種の仕事が入ると
とてもホッとします。

樹勢回復のための優れた工法が見つかっていて
それを超真剣にやってくれる職人さんの
心強い協力を得られているので、
わりと短時間に
木が元気を回復してくれて
木も関わった人も、みな笑顔。

私にとっては、理想的な仕事。

樹木に関わる仕事をするとき、
木だけを見ていては、
よい判断はできません。

だから、木を見るときは
必ず環境もセット。
今はその環境の中に、
人間も入れて考えています。

どんなによい木であっても、
現在の所有者が、
気持ちの上で持て余して
切ろうと決めたら、
明日はない、のが樹木の生涯だから。

そんなふうに、人間は
木の生存や健康を左右する、
大きな要因になっています。

そこに、生物学的な知識なども合わせて
木がどのように生きているのか、
どうしたいのか、というのを
模索してきました。

すると、木の苦手なこと、
というのは、想像がつくようになります。
不調になってしまった木を
たくさん見せてもらってきたから、
というのもあります。

樹木に、直接、
「この理解で、いいですか?」
と聞くことはできないので、
木の形と対話して
理解がずれていないか、確認します。

たぶん、それほど大きく
ずれてはいないはず、と思っています。

で、そろそろ、苦手なこと、です。

木は、実は、枝葉を切られることを
望んでいません。

ときどき、
「植えた木は、切らなくてはいけないんでしょう?」
とか、「お手入れされてなくて、ボサボサ」
という方がおられますが、
それは人間の立場からすると、なんですよね。

私などは、「ボサボサ」ということばを
聞くと、内心スイッチが入るので、
「ボサボサ上等!」と思ってしまいます。

人間の爪や髪と違って、
木の枝葉は、糖を生産するための工場だから、
こんもり、ふさふさしているのは、
健康で豊かな証(あかし)。

だから、生きた枝、
特に光合成の能力の高い枝は
一本も切らずにすませたい、
できることならば。

ですが、切ってはいけない、
とは言わないことにしています。

本当は、言いたいのだけど、
狭い現代の日本でそれを言っていると、
木と人は共存できなくなりますので。

よって、超妥協のたまもので、
支障となる枝は、
まだ細いうちに切らせてもらいましょう、
その位置で、毎年、切り戻しをしましょう。

その場所で許容できる大きさに、
木の形を早めにつくってしまいましょう、
そして、その大きさやかたちを維持する
手入れを続けましょう、
と近年は提案しています。

少しでも、木にとって負担が少ないように、
そして、切る側の人間にとっても、
負担の少ないように。

このテーマの落ち着くところを
人間の側から見ると。

木が、枝を切られることを
望んでいないことは
知っている。
でも、切らざるを得ない。

だから、木に少しでも負担の少ないよう
理にかなった方法で、切らせてもらう。


次に木の側から見てみると。

現実的には
生きた枝を切られることは
避けられるものなら、避けたい。

しかし、それを言っていては、
今の時代、人間とは共存できない。

よって、妥協のたまもので、
人間と共存の許される範囲で、
最小限の剪定を定期的に受けつつ、
できるだけ多くの光合成をしながら
すこやかに生きていく。

それが、今のところ、
比較的、恵まれた木の生き方、
と思います。

そうでもないケースも多く、
この場所で、この剪定は必要?
とか、
こういう形、枝葉の量にしてしまったら、
せっかく植えた木が台無しなのでは?

このようなあつかいをするなら、
なぜ、ここに木を植えた?
という形で暮らす木も目に入ります。

ご自分の身の回りを見てみて下さい。

木は、とっても正直な生きものです。

見る目が養われたら、
幸せに暮らせている木と
そうでない木の区別は、
一目瞭然と思います。

本来、人間よりはずっと長く生きる
可能性を持ち、
とてもすぐれたしくみをもつ
生きものが、
人間の事情や好みにより
みじめな姿で暮らしている景観…

人と木が、お互いに歩み寄れる
方法を具体的にみつけたい、
実現したい。

と、ここまで書いて、我に返ると…

ああ、苦手を羅列するはずが、
またこうなってしまいました(💧)

ですが、これはたぶん、
木と人が共存するうえで、
もっとも重要なテーマの1つ。

木が、「書いて」って言ったから、
こうなった、ということにして、
今日のところは、
ひとまず終えようと思います。

木へのますますの理解と共感?を、
どうぞ、よろしくお願いいたします。




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樹木も人も笑顔に、樹木医mimi  ( 三戸 久美子 )
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