久しぶりのたたりの木
身近に「たたりの木」と呼ばれる木がいる、
または過去にそのような木に
遭遇したことがある、という方は、
どれくらいおられるものでしょうか?
私は、それほど多くはありませんが、
過去に一度、そして最近も1本、
そのような木の診断を
依頼されたことがあります。
「たたりの木」の診断を頼まれるときは、
依頼者がちゃんと事前に教えてくれます。
「実はこの木は、こうこうこういう由来が
あって…」と。
今回、その話を聞いたときは、
「うわっ、久しぶりに来た!(怖いよう)」
と思いました。
聞いた瞬間は、やはり、どきどきします。
状態があまりに悪いときは、
「仕方ない、安全のために切りましょう」
と言わなければならないので。
ですが、今回の場合、聞くと、
ちょっと珍しいタイプのたたりかた。
切ると、伐採作業をした人でなく、
そのお家の方にけが人が出る、
というパターン。
言い伝えが残るくらいなので、
一度でなく、何度か続いたのでしょう。
で、車で現場に向かい、車が止まる前に、
ぱっとある木が目に入る。
「これですね」。
車内でぼーっとしていましたが、
なんだか存在感のある電波を
発していたので、
その木が、たたる木だ、と
ちゃんととわかりました。
そこからが、ちょっとおもしろい。
過去には、幹の上部を太いところで
切られていたりするので、
順風満帆に育った木とは、
形が異なります。
ですが、通行の妨げにならない部分では、
最低限の剪定しかしていないので、
小枝・中枝はきれいに伸びていて、
枝の細やかさは、きちんと保たれている。
まだ緑の大きな葉っぱが
たくさんついていて、
バイタリティは、とてもある。
幹の材は、過去のいろんなできごとの結果、
だいぶ腐っています。
が、稼ぎ頭の枝からは、
ちゃんとエネルギーをもらい
枝を支える材は、きちんと発達しています。
部分的には、もりもりっと
成長しているんですよね。
診断という目で見ると、
いろいろな問題を抱えてはいます。
ですが、とても生命力の強い木で、
「たたる」という言い伝えのおかげで、
わりと丁寧に扱われてきたので、
形も悪くない。
観察するうち、私はこの木の
ファンになりました。
たたりと言われる現象は、
生きたい、という一心から
来るものなのでしょう。
別に人間を怖がらせたり
危害を加えたいわけではない、
そんな気がしてきました。
で、思わず、仕事の依頼者に、
こう言ってしまいました。
「私は、この木は切りたくないです。
とっても美しくて、いい木だから」
とはいえ、診断を頼まれた身として、
現実的な話もしました。
ですが。これは人間とまったく同じだ
と思います。
生き物は、数値評価では、
決して測れない、表せない
魅力や生命力、存在感をもっています。
たたりの木のファンになったのは、
今回が初めてですが、
へこたれずに生きつづけようとする
この木のパワーは
コワイという気持ちを一瞬で
吹き飛ばしてくれました。
むしろ、魅力的。
お家の方に、けが人が出るのも困りますし、
できれば、この場でずっと長く
生き続けてほしいと願いますが、
どういう結論に至るのでしょうか。