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あしかがフラワーパークで感じたこと、大事にしたい、相手への理解

先日、あしかがフラワーパークに、
「フジを咲かせるための技術研修」
に行かせてもらいました。

ものすごく充実した貴重な研修でした。

が、そのきっかけになったのは、
本当に、ちょっとしたことでした。

ある若手技術者の
「フジが咲かないんですよね、
あしかがフラワーパークに
フジを見に行ったら
すごくきれいに咲いていて、
感動しましたけど」
という、
ぼやきのような、つぶやきでした。

で、「剪定法に鍵があるはずだけど、
私だと理屈しかわからない。
具体的なやり方を聞いてみる」
ということで、
パーク勤務の仕事仲間に相談。

そのおかげで実現した
夢のような研修。

企画を始めたのは、夏ですが、
実施はだいぶ先の1月30日に。

なぜ、この時期に?ですよね。
外での研修には、とても寒い!
に決まっています。

が、この時期にするには、
理由があったのです。

結論だけ言うと、
フジをあのように、
この世のものとは
思えないほどきれいに、
しかも毎年咲かせるためには、
年に3回の剪定を行っています。

夏に2回、冬に1回。

それぞれの時期、
フジに相談しつつ、
フジから教えてもらったやり方で。

現地で担当者の説明を聞いて、
まず納得、感銘を受けたのは、
ここでした。

花を咲かせてもらうには、
人の言い分よりも先に
フジの事情、言い分を
まずよく聞くこと。
それを徹底してやられていることを
知れたからです。

そうして、長年、実に細やかに、
そこまで!!というレベルの
細やかな観察をして、
剪定の時期や切る位置、
残すツルの長さなどが決められ、
その時々に、必要に応じて
調節されているのでした。

しかも、品種ごとに、
性質がかなり違うそうなので、
その違いにも配慮して。

花を咲かせるための研修でしたが、
大藤の近くに立って
説明を聞き始めてまもなく、
心の中で思ったのは、こうです。

「これは、ふつうの場所では、
とうていムリ!!」
「ここまで、普通はできないもの!」
でした。
技術者としては情けないことですが、
早々に白旗があがってしまう…

ですが、フジの手入れを
担当する課長さんは
その道30年の大ベテランさん。

長年の真剣かつ細やかな観察と
慎重な試行錯誤の結果から、
ものすごく具体的な知恵を
豊富にもっておられます。

それらを惜しみなく
具体的に教えてもらっているうちに、
私たちにもやればできる?
マネしてみようかな?
と、だんだん思えるようになりました。

というのも、説明して下さるスタンスが
「人のマネできないことを
やっているオレたちって、
すごいでしょ?」でなく、
「他の場所だって、フジの性質からすると、
こうすれば、こうなるはずです」
「他の場所でも、
フジにきれいに咲いてもらいたい」
という願いから、一つ一つ、
とても丁寧に教えて下さるから。

まるで、フジの使いの
メッセンジャーのようです。

謙虚な姿勢の
その長年の日々の努力には
圧倒されてしまいました。

が、最近は気候変動が激しいので、
その対応にも、かなりの労力を
とられているようです。

きっと、台風や遅霜に
警戒の必要な時期には
寝ていられないほどの
心配をされているはずです。

もうじき咲かせるよ、
という時期の
ふっくらとふくらんだ
繊細な花芽は、
遅い時期に降りる霜が、大の苦手。

花芽が凍って死んでしまったら、
木自体は枯れなくても、
花は全く咲かない、
と言われていました。

寒さばかりでなく、
暑い時期は暑い時期で、
葉が高温で焼けてしまったり、
これまでにはなかった、
危険にさらされているようです。

それでも、人間というのは、
思ったことは、
遠慮なく口にしてしまいます。

藤の花を見て、今年の花はどう、
というような、
管理者にとっては
身の縮むような感想が
耳に入ることもあるようです。

そんな話を聞いているうちに、
この最近の厳しい気象条件で、
よそでは全く咲かないことも多いフジを
安定的に、毎年どっさり立派に咲かせて
しかも木を枯らさないで
維持しているだけでも
神業!と思ってしまいました。

人はそれを当たり前のように
思うかも知れません。
が、フジの事情と人の事情、
それぞれのバランスをとる難しさを
少しでも想像できれば、
神業としか思えません。

ちなみに、私は
人間のすることに、
「神」ということばを使うのは、
心理的にかなり抵抗があるタイプです。

でも。
ここでやられていることには、
間違いなく「神」とつくレベル
と感じました。
これ以外の言葉が思いつきません。

そういう圧倒的なレベルの努力を
続けておられることを知れたことが
技術的なこと以上に、
私には、よい学びとなりました。

ほしいのは、まず相手に対する理解。
何か判断する、実行するのは
その次の段階のお話、
と思うので。

人混みが苦手なので、
有名な花見の場所は
あえて避けてやってきました。

が、今年は、フジが咲いている1ヶ月の間、
できれば大藤が咲いている時期に
あしかがフラワーパークに
足を運ぼうと思っています。

担当者はもちろん、
パークの関係者や地元はたぶん、
花の状態を気にかけて
おられると思います。

ですが、一般の人は、
花穂の長さが今年は何㎝、
長かった頃は何㎝
なんて、
細かいことを言うのはもうやめて、
ただ、ひたすら無心に、
その場に身を置いて
その美しさに心奪われて楽しみたい
気がします。

自然界のいとなみには、
毎年変動があるのが
自然なことなので。

スケールメリットとか、
数値評価や何かとの比較を
あまりにも追いすぎた結果の
最近の地球環境問題です。

ご高齢の老大木に、
少しはムリを聞いてもらっても
決して、度の過ぎた
無理を強いないように。

人とフジの間に入り
双方の希望や事情を聞く。
それに折り合いをつけて
細心の注意を払い
できるだけのことをやりきってきた、
その結果の今年のフジの花。

ここの美しいフジのお花見も、
天からの贈り物、頂き物。
多い少ない、長い短い
なんてことを言わずに、
与えられたものを
ありがたく頂きたい気がしますよね。

それにしても、です。

どうしたいかの前に、
まず相手を理解することが
何よりも大切、という、
私の目指す方向性で
仕事を長年し、
結果も出し続けてこられた
藤チームのその努力には、
頭が下がるとしか言えません。

花は咲いていなくて、
今は葉すらなくて、
ツルだけの藤棚。

それでも、大いに心が
揺さぶられました。
ここにその感動を書きたいと思いつつ、
今朝まで、とても書けませんでした。

あまりの偉業について
自分が何か言うなんて、とても、
という気持ちは、今もあります。

ですが、自分たちにもできること、
やりたいことはあるので
やはり書かせてもらいたくなりました。

パークにフジの花を見に、
足を運ぶことが、
その担当者、フジの管理チームの
尽力を理解し、
応援することになると思います。

ぜひ、家族やお友達を
お誘い合わせのうえ、
あしかがフラワーパークに
フジを見に行きましょう!

そして、きれいなフジの花の陰で
大きなプレッシャーに
押しつぶされることなく、
今年も、もくもくと
作業を続けて下さった方たちの
日々の努力、尽力に、
心の中でたくさんお礼を言いたいですね。




で、今年も花を咲かせてもらうための、最後の剪定の時期がちょうど今、もっとも寒い時期ということだったのです。

冬季剪定を始める時期は、11月に入れば可能なのですが、その時期だと、まだ花芽のふくらみ方が少ないので、花芽と葉芽の区別がしにくい。
で、芽が十分にふくらんできて、来年花を咲かせてくれるね、という芽がわかりやすい後半を研修時期に選ばせてもらいました。

もともと、パーク内は風が強いらしいのですが、大藤が暮らしている場所は、なお風の強い場所。研修生はみな寒さに震えつつ、でも熱心に説明を聞き、質問もしていました。


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樹木も人も笑顔に、樹木医mimi  ( 三戸 久美子 )
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