見出し画像

クラバート 感想

※ネタバレでは無いけれど、ご注意
(私は知りたくなかった情報だったので…)


オトフリート・プロイスラー 作 中村浩三 訳

荒地の水車場の見習いになった少年クラバートは、親方から魔法を習うことになる。ドイツの一地方に伝わる伝説を描く壮大な物語。

あらすじ

読み終わったのは11月4日。ずっと感想書けてなかった。


新聞で紹介されてて、気になって、上下巻の分冊版を図書館で借りてきた。

上巻を読んだ感想は、古い本だから最初は難しいなと感じたけど、
(40年ほど前の翻訳作品なので、"角付け"や"博労"などあまり聞き慣れない用語がでてくる)
でも面白いな、やっぱり名作だもんな、くらい。

すごいわくわくするファンタジーというより、いつのまにか手にじっとり汗をかいているような面白さ。(これ新聞の紹介に書いてあったような、自分で思ったような…失念。)


下巻。
上巻を読んだ時は、「まあ面白いなぁー」くらいだったんだけれど、いつの間にか引き込まれていく。
…これは、一気読みせねば…

夕飯の時間だったんだけど、居ても立っても居られなくて、本を持って家を飛び出した。
静かな場所で完読したい。家業の作業場を借りて、読み終わるまで帰らない…。

感想は、無し。
読み終わった後、言葉が出なかった。なんとか感想を出そうとして、やっと出た陳腐なそれらを追い払って。
昔、1番大好きな本に出会った時も、言葉に出来なかったけれど、それとはまた違った感じ。
言葉はいらない。
この本を、経験したんだ。長い旅から、暗闇から抜けたんだ…。

なんかこれはもう家に帰れないなと思った。本を持ってしばらく放心。
外に出て、寒空の下、星を眺めた。

お腹空いた。あったかいお風呂も恋しい。でも帰らなかった。帰ったら本当に現実に戻ってしまう。
この言葉にならない感じを感想には出来ないから、ただもう何もしないをした。
この何もしない寒さが、(寒くてお腹すいて帰りたいのが我慢できるくらい自分にとって価値がある事だという)感想だと思ったから。


星を眺めながらぽつぽつと本について考えた。

(実は上巻を読んだ後、この本についてなんとなく検索してしまい、宮崎駿監督が影響を受けたのだと知った。『千と千尋の神隠し』に影響したらしい。
…私はそれを知りたくなかった。)

読み終わった後、その事についても考えた。

物凄く、物凄く当たり前の事だけど、
この本は有名な監督が推してるから面白いんじゃなくて、面白い本だから監督の心を動かしたんだ。それでいて、面白い作品の前にいたのは、有名監督じゃなくて、ただの少年。

おじいさんもおばあさんもこの本(そして他の名作作品を)子供の時読んで、同じ気持ちになって、令和を生きる私も、そして世界中の大人や子供が同じ経験をしてるんだ。

それって当たり前だけどなんて素晴らしくて素敵な事なんだろって震えた。名作の前ではみんな子供で、言葉が違くても、世代が違っても、同じ気持ちになれる。

そしてこの世には沢山の名作と呼ばれる児童文学がある!それを読む楽しみがある!
(読んだ作品全部が好みでは無いかもしれない。難しいかも。でも手に取ることが楽しみ。)

そう考えるとまた居ても立っても居られなくて、私は家に帰った。


実を言うと、本をどうして読むのか知りたくて本を読んでる節が私にはあった。

(自分と本についてnoteの下書きに書いたままほったらかしにしてる。小6の時は読書家だったけど、それ以降全然読めてなくて、最近また読むようにしてるって話。)

でも、分かってしまった。
こんなに面白い事って無いよね。

小6の時本好きだったけれど、正直名作児童文学はあんまり…だった。
(『不思議の国・鏡の国のアリス』『プー横丁にたった家』くらい。宮沢賢治は少し読んだかな…。
『トム・ソーヤーの冒険』『指輪物語』は途中で挫折した。)

(長く愛されてきたいわゆる"名作"って当たり前だけど完成度が高くて面白いんだなぁ。だから名作として継がれているのだけれど。)

この面白さを、ドラマや映画じゃなくて自分で味わえることはなんて幸福なんだろう!
(クラバート、ラジオドラマになってたけど聴いてない時期だった)
まだ児童文学の対象年齢(かな?)なうちに、この面白さに気付けて良かった。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集