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春野 惠
2021年10月4日 23:24
われもまたオブジェのひとつかもしれぬ美術館のロビーの椅子にやまなみの裾をほのかに暮れ残す秋桜揺れてゆられてひとり奥院のもみじ織りなす色の彩(あや)きっとサヨナラできるとおもう死ぬほどに我れが欲しくば奪い去れますらおたちの三角四角お笑いのコンビのようにこれからを吹きゆく風の歌をうたおうこもごもの後に来るとう現身のたゆたうような眠りを愛す
2021年9月23日 23:05
美しい記憶を欲りていたりけり堆積岩の不思議な模様お隣の開け放したるドアごしに親子喧嘩が今日も聞こえ来茜さすベランダゆえに鳴きとおすつくつくぼうしの九月の焦りまたひとつ取り残されてまたひとつ打たれ強くなるのもいいか坂道を上り詰めた家もいいねほら借景になっている庭たおやかに棹をしならせリール巻くカラカラ君の逞しき腕風早の海また海も辛かろうわれとう港に流れ着かんか
2021年7月21日 22:55
未曽有の100年に一度の1000年に一度の前代未聞の類を見ない形容詞を施され前例のない災害が史上最高の規模で全世界的に起こっているかつてないはずのことが空前絶後といえるほどの未到の頻繁さで破天荒に起こっているそれは言い換えればもはや日常茶飯的な光景で歴代陳腐な出来事に今まさになりなんとしているまた超大型台風が接近してます今夜も連続30日の熱帯夜でしょう今
2021年4月27日 23:47
山茶花を一本手折らん繁りあう枝より青き空に手を入れゆるゆると壁這う蜘蛛の小さきは止まりてただに汚点となりぬ短夜の童子の時を悲しみて樹木は齢をふかめいるらん遥かなる記憶ゆすりて脳髄を突き抜けてゆく野風春風血を流さず河の流れに逆らわず生きるや我は人形となりて