持続可能な社会とリーダーシップ
先日、女子大生に「どうして、持続可能な社会をつくることを目的に、人材育成をされているんですか?」と聞かれました。
すっかり市民権を得た「持続可能性」という言葉。
私は大学1年生の頃に読んだ論文で、初めてこの言葉を知りました。英文を読み、英語でプレゼンすることを課せられた授業に奮闘した、2003年の冬。単位をもらった後にも"sustainability" "sustainable development" という言葉が忘れられず、しばらくそれらが持つ重みを感じていました。
「持続可能な社会をつくるには?」という問いに対する、いまの私の解のひとつは「一人ひとりが、自分が使命感を持てることに挑戦している状態をつくること」です。
未来をつくる教育
そう思う背景には、卒論執筆の体験があります。選んだテーマは、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)。瞬時に捉えづらいですが、私は「『持続可能性』の視点を持ったチェンジメーカーの育成」と意訳しています。
持続可能な社会をつくるために、一人ひとりが未来への想像力を働かせ、できることを実行し、協働するリーダーシップを育む教育。
私が執筆を始めた2006年は、DESD(持続可能な開発のための教育の10年)が始まったばかり。ご専門の先生も学内におらず、書籍や論文も少なくて、その多くは環境教育の文脈でした。私は、より多くの人を巻き込む必要があると考え、「企業活動を主軸とした市民主体のESD」について書きました。できあがったのは、未来に対する「提案書」。論文の出来には1ミリも自信を持てないけど、おかげで港屋があります。
ESDを知れば知るほど「複雑に絡み合う社会問題を解決するには?」「持続可能な社会をつくるには?」という問いに、現実的な答えをくれるものだと思いました。今も活動の中心にESDの概念を据えています。
ちなみにもし関心があったら、イベントはいろいろあります。
▼ESDユースコンファレンス
こちらは私が参加した第4回レポート。すてきな仲間と出会えます。
私はここで、優秀すぎるインターン生をゲットしました。
▼ユネスコスクール全国大会/ESD研究大会
締切が11/15までだけど、12/8に開催されます。
「リーダーシップ発揮の方向性」をどう絞り込むのか
ESDやSDGs、よりよい社会をつくることから議論を出発すれば、すべての人が主体的に社会問題に取り組んでくれたら「助かり」ます。
でも個人の人生やキャリアはそう単純にいかなくて、「自分が意味を感じられること」である必要があり、仕事にするならそのための能力も求められます。また自分の時間を捧げる過程で、定期的に「栄養」を得られないと、人は継続的に取り組むことができません。それは「前進感」であり、「よき仲間」であり、取り組みへの「感謝」であり。
いま個人の生き方や働き方が見直される中で、多くの大人や学生たちの「他者の役に立ち、自分が意味を感じられることをしたいけど、何をしたらいいかわからない」という声が、私にもよく届きます。「自分なりの意味」は、考えても出てこないし、ある日突然ひらめくものでもありません。
この「なにかやってみたい」と「何をしたいかわからない」「どうやるのかわからない」をつなぐものは、「体験」です。
まず「これかな?」と思えるものを設定して、試してみる。外部に発信し、得られた手応えと違和感を味わって、軌道修正をかける。他者のリアクションから自分を知る。その先に「気づけばできている道」があります。
これはお膳立てされた場では感じづらく、「現実」を扱うことに意味があります。失敗可能性とは成長可能性のことなので、それが担保される環境で「試行」を重ねることをおすすめします(ケガはいいと思いますが、致命傷には気をつけた方がいいです)。他者評価のプレッシャーではなく、現実に取り組むプレッシャーが必要なのです。
そんな体験を、学校で実現するためにスタートしたのが、「スカラシップヤード」です。最近は大人からもやってみたいという声がちらほら。
「いま」を積み重ねる
「誰かのために、何かのために」と「自分が意味を感じられること」の間で発揮するのが、リーダーシップです。
そのために、無理に「何者かになる」必要はなく、いくつか試す過程で「私はこれがいいな」と思えるやり方やあり方に「気づけば」いいのです。
未来に向かう教育や行動の変化を望むと、ビジョンに目が向きますが、肝要なことは「いま」にあります。いま選択するもの、いま起こす行動が変われば、起こる事象が変わるからです。その体験で得た感情や感覚が、時を経て意味を持ち、「あれが原体験だった」と思う「過去」になります。
おすすめなのは、緻密なプランよりも「Driving Question」を持つこと。
走りながらその時々の最適解を探究して歩む、この問いをつくるワークショップは毎回満員御礼です。不確実さを生きる過渡期の現在に、手法に捉われずに進むスタンスを手に入れることができます。
The future depends on what we do in the present.
未来は、いま私たちが何をするかにかかっている(ガンジー)
この言葉がガンジーから発されて、少なくとも70年以上が経ちました。
あなたは、当時よりも世界の状況が良くなっていると思うでしょうか。
社会だけでなく、自分の未来だって、いまの自分の積み重ねでしかないのは確かなことです。この言葉が放つメッセージは、いまを生きる私たちに対して、未だ効力を持っています。私も、がんばります。