黄金のルーツは日本にあった!?金と愛の謎を追え!/「接吻」クリムト
こんばんは、如月伊澄です。
美術シリーズ、今回は「黄金」のお話です。
この絵はオーストラリアのウィーン「ベルヴェデーレ宮殿」で鑑賞できるそうです。こちらの宮殿の一部が「オーストラリアギャラリー」として使用されており、ほとんどがクリムト美術館のような様相を見せているそうです。
なんか以前もそんな美術館があったような・・・・・・?
そういえば、ムンクの叫びを取り上げたときは「ムンク」のお話をしていませんでした。ノルウェーには「MUNCH(ムンク)」と名付けられた、ムンクの作品を27,000点(!)も所蔵している美術館があるそうです。
ややこしいですね。
少し脱線してしまったついでに、オーストラリアと言えば触れておきたいお話が一つ。
【ハプスブルク家と黄色い宮殿】
ウィーンの街並みは「黄色い建物」が多いそうです。
黄色と言えば、黄色の絵の具を食べてしまうほど、黄色が好きなゴッホを思い出しますが、彼は関係ありません。
オーストラリアで黄色を愛したのは「ハプスブルク家の女帝マリア・テレシア」。彼女が愛した黄色は「マリア・テレジア・イエロー」と今でも呼ばれているそうです。
フェルメール・ブルーといい、自分の名前が色の名前につくのはすごいですね。
ハプスブルク家の夏の離宮「シェーンブルン宮殿」もこの「マリア・テレジア・イエロー」で塗られ、彼女の死語も「ハプスブルク家の建物はこの色で塗られる」と規定されたほど、ハプスブルク家を代表する色になったそうです。
ただこのお話には裏話があって、本当はイエローはイエローでも金で宮殿を塗りたかったのが実情だったそうで、お金がなくて泣く泣く諦めたのだとか。なんにせよ、金の輝きは誰しも魅了してしまうのですね。
このハプスブルク家は美術コレクションも収集しており、「美術史美術館」という場所に今でも所蔵されているそうですよ。
実は上野で展示会をやっていたんですよね、5年前に。
もっと早くこの本にであっていれば・・・・・・!
なんで美術鑑賞に全く興味がなかった頃のイスミさんが、そんな展示会をやっていたことを知っていたかと言うと、私の大好きなアーティストの「Aimerさん」がイメージソング「marie」を歌っていたので。
そのためだけに東京まで遠征しようとしましたが、美術に興味がなさ過ぎて、結局行かず仕舞い。今になって行っておけばよかったなぁ、と後悔。
「知らない」ということは「機会を逃す」と同意なのですよね、きっと。
【黄金のルーツは日本にあった?】
話を美術へ戻しましょう。
改めてグスタフ・クリムト「接吻」です。
綺麗な黄色と金色がまず目を惹く一枚ですが、なんとこの金色の部分すべて金箔でできています。背景も金が使われており、豪華絢爛な一枚です。
もちろんこの絵の素晴らしいところはそこだけではないのですが、美術の素人から見ると、それだけでもめちゃくちゃ価値のある絵だなぁ、ですよね。
彼がなぜ絵画に金を使おうと考えたのか、そのきっかけはいくつかの説が上げられており「お父さんが金銀細工師だったため、金が身近なものだったから」「イタリアに旅行した時見た、ビザンチン美術(威厳を重視した美術で金を多用した)の影響を受けたから」と言われています。
その中でも面白い説がもう一つあって、「日本の尾形光琳の”紅白梅図屏風」から影響を受けているのでは?」というもの。
https://www.moaart.or.jp/collections/053/
↑箱根のMOA美術館に所蔵されているそうで、美術館のHPに飛びます
とはいえ、この紅白梅図屏風がウィーンで公開されたのは、クリムトが11歳の頃。影響といっても「あの日の思い出」くらいなもので、要素の一つになったかな?程度のものだそうです。この記事タイトル詐欺では?
【その関係をなんと呼ぶ】
さて、ところでこの絵の男女のモデルは誰と誰なのでしょう?
これまで見てきた名画のように、自身を描いたものだったり、実在しない人物を描いたものなのでしょうか?
クリムトは「語るな、描け」の人間だったので、今でもこの絵のモデルはわかっていないそうですが、一番有名な説として男性がクリムト、そして女性がエミーリエではないか?と言われているそうです。
エミーリエはクリムトにとって「義理の妹の妹」ですが、彼女は生涯の伴侶としてクリムトを支えた女性。しかし、二人の間に婚姻関係はなく、性的な関係さえなかったそうです。
それでもクリムトは今際の際にこう言って、死を迎えます。
「エミーリエを呼んでくれ」
されど、二人の関係性の不安定さは「接吻」の絵にも表れています。
二人の足下には色とりどりの花畑、そしてよくみると女性側の足下は切り立った崖。一歩踏み込めば落ちてしまう、その場で留まれば美しい花畑の中、幸せな時を過ごすことができる。
一枚の絵を通して、後世の人々に彼ら二人だけの世界をいつまでも想像してもらえるというのは、きっと幸せなことなのでしょう。
価値観。
クリムトは「ファムファタル」という視点で、もう一つ書きたいことがあるのでまた触れるかもです。
おしまい。
参考文献 著 山上 やすお「死ぬまでに観に行きたい 世界の有名美術を1冊でめぐる旅」 2023 ダイヤモンド社